タイタニックを観た
(作品のネタバレが含まれていますのでご注意ください)
初めてタイタニックを観た。
映画館で観た。
いつ通っても閑散としていて、休日の前夜にちょこちょこ人がいるな〜と思っていた近所の映画館に長蛇の列が出来ていて驚いた。
劇場に入るとほぼ満席。タイタニックみんな観たいんだなぁと人ごとみたいに思いながら席に座った。
映画が始まり、語りから時代が巻き戻ると、1910年代の景色、服装に目を奪われる。
港にタイムスリップしたかのような気持ちでタイタニック号の出航を見送った。
正直、タイタニックといえばあの有名なポーズのこと、実際に発生した事故を元に作られたことくらいしか知らず、ラブロマンス要素の強い作品なんだとばかり思っていた。でもそれだけではない。ひとつのジャンルで括れるような話ではなかった。
生まれた環境の常識の範囲から抜け出す術がなく、抑制されながら、家のためにと好きでもない人と結婚する。
ローズの失望や苦しみが分かるような気がした。
私は上流階級の生まれでもなければ、21世紀を生きていて、交通手段も発達しているし情報だって手元のスマホからいくらでも手に入る。
行こうと思えばどこにだって行けるけど、変わり映えのない毎日が繰り返されると、なんのために生きているのか分からなくなる。
どこにも行けなくて、自分が見ている世界だけがこの世の全てみたいな錯覚に陥る。
別にそんなことはないんだけど。どんどん心が塞がって、水を吸った服を着ているみたいに重くなっていく。
境遇は違うけれど、同じ苦しみだと思った。
ジャックに出会えたローズが羨ましい。
ぴったり気が合って、自分がしたことのない経験をたくさんしている人。
命を捨てようとしていたところを引き留めて、一緒に海に飛び込むとまで言ってくれた人。
惹かれるに決まっている、こんなの好きになる。
いいなぁ、と純粋に思った。
今いる世界から引っ張り出して、未来への希望を抱かせてくれる人に出逢えたらどんなに幸せか。
ローズに完全に感情移入していたから、最後のシーンは涙が止まらないくらいつらかった。
夢の中でのシーン。
綺麗な船内を抜けてドアを開けると、乗客も船員も、みんな晴れやかな笑顔でローズを見つめている。
階段の上には、初めて時計台の前で待ち合わせた時と同じポーズでジャックが待っていて、ローズに気づくと笑顔で手を差し伸べる。
祝福の拍手が2人を温かく包んでいく。
ローズは80年以上、この夢を何度も見てきたのか。彼女が望んだものが全部ある夢。
不自然なほどに完璧な夢の中で幸せを噛み締めていたら、弾けるように目が覚めて、ジャックはいないことを思い出して、願っても叶わないんだと現実に引き戻されたりしたんだろうか。
そんなことをぐるぐる考えて苦しくなった。
今もまだ思い出しては苦しくなるので文字で吐き出している。
それでも100歳を越すまで生き抜いたのは、ジャックとの出会いや事故の経験があったからなんだろう。
繋ぎ止められた命を全うしようと、辛くても生きること諦めなかったのかな。
全部私の憶測だ。
映画ではローズが事故後のことに触れたのは事実を語る時だけで、その時の気持ちは話していなかったはずだ。
ネックレスを誰にも渡さずに海に捨ててしまうのも、勝気なローズらしくて好きなシーンだった。
あの船に乗っていた全ての乗客にこれまでの人生のドラマがあり、続いていくはずだったと思うとやりきれない思いになる。
私は無力なので祈ることしか出来ないけれど、どうか安らかに、輪廻転生があるのならば次の人生は幸せを感じる瞬間が前世よりもっと多くありますように。
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