見出し画像

ずっと夜が続けばいいのに。
夜は僕に優しかった。何もしなくていい。誰にも会わなくていい。毛布に包まって、僕は泣いた。夜は優しいけど、哀くなる。考えなくてもいいことを考えてしまう夜は、時々殴るように僕に襲いかかる。

傷つきやすい僕は、気付けば人に不用意に近づかなくなっていた。きっと、人より少し感受性が豊かなだけだ。そう思いたい。もう学校に行かなくなって2ヶ月も経つんだっけ?めくり忘れたカレンダーが嫌な思い出を蘇らせる。

僕はベッドから降りゆっくりと家を出た。哀しくなったら海を見に行く。ひとりで。真夜中に雑木林が並ぶ静かな夜の道を歩く。此処には何もない。あるのはコンビニと自販機ぐらいだ。この退屈な夏、友達のいない僕は予定もなければ行く当てもない。

雑木林を抜けると海が見える。昼間の光がキラキラ反射する眩しすぎる海とは違う、月が波に浮かぶおだやかな海。ゆらゆらと揺れる海の彼方には何が広がっているのだろう。この僕の心の闇ごと包み込んでくれそうな優しい、夜の海。

#オリジナル小説 #小説 #短編小説 #コラム #ポエム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?