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2、お局さんの交代

この会社はパワハラが横行しやすい組織だな、と思う印象的な出来事がありました。
観察していただけなので抽象的で、曖昧でわかりにくいかもしれませんが、頑張って書きます。

私が就職した会社には、お局さんがいました。
ここでは、佐藤さんとしておきます。佐藤さんは40代ぐらいの女性でした。
私とは他部署なので、佐藤さんがどんな仕事をしているのか全くわかりませんでした。
だけれども、同じオフィスにいるだけで分かることもあります。
毎日のように後輩や同僚を怒鳴っていること、女子トイレで20分以上誰かの文句を言っていること、取引業者の中で外見の良い1人の男性だけを特別扱いしていること、他の社員が対応した電話を佐藤さんに引き次ぐときに何故か小競り合いが起きなかなか電話を受けないということ、などなど。

半年ほどすると、だんだん、佐藤さんの仕事内容も分かってきました。
それは、いわゆる雑用係です。電話番、文房具の注文、郵便局へのお使い、棚の整理、掃除場所の指示、いただいたお中元やお歳暮をスタッフに配る、などなどです。
佐藤さんはその仕事を、正社員としてフルタイムでしていたのです。しかしながら、そんなにスタッフが多い事務所ではありませんので、時間は埋まりません。
それに、他のスタッフだって、電話対応するし、経費で文房具を購入するし、配送会社の手配もできます。

そうすると、佐藤さんは、教育や指導という名目で、積極的に周りのスタッフに関わろうとしてきます。しかし彼女に教育する能力も権限もないので、ただのハラスメントです。
同僚たちの些細なミスを執拗に責めたり、虐めたり、悪意のある噂を広めて、対処しなければいけない問題を作り出します。

具体的ないじめは、まず、半年から1年ごとに、ターゲットを1人決める所から始まります。その対象は、若くて在職期間の短い人や、育休から復帰した人などです。
その1人の人に対して、挨拶を返さなかったり、業務で必要なので話しかけても無視したり、取引先からいただいたお菓子を配らなかったり、郵便物を誤配したりします。そして、その人が書いた引き継ぎの書類の不備があったり、少し複雑な事情が書いてあると、事務所で衆人環視の中、怒鳴ります。むしろ、人が見ている場所でなじることを好んでいるようでした。長いときは、1時間ちかく怒っています。
ただ、社長や佐藤さんの上司がいる時には、決して怒鳴ったりしません。

じゃあ、佐藤さんに関わらなければ良いと思うのですが、あまりにも事務所内の多くのことを佐藤さんの判断で決めて、教えてくれないのです。
佐藤さんは、自分は雑用係ではない、とよく怒っていました。しかしながら実情は雑用係です。なぜかというと、彼女の知識や能力が足りないので、専門的な知識や経験が必要な他の仕事を任せられないのです。他のスタッフの仕事を少し手伝うようお願いしようとすると、忙しい、自分は高卒だからわからない、と拒否します。
そんな中で、どんどん、自分がいないと他のスタッフの仕事がしにくいという状況を作りあげていきます。

そして、ターゲットではない人(時)には、不気味なほど優しく、媚を含んだ様子で寄り添います。
ベテランの社員たちはそれが分かっているので、佐藤さんのいじめを解決しようとはしません。佐藤さんが他の誰かをいじめている間は、自分は安全だからです。

ですが、コロナ禍で一変しました。
全社員が在宅勤務になり、事務所の存在価値はかなり縮小しました。佐藤さんに聞かないとわからない、というようなことが無くなりました。
効率を良くするために、優秀なスタッフは積極的に、雑務も自分でするようになります。社員が出社するのは、出社しないとできない用事のあるときだけで、用事が終わると在宅勤務に戻ります。誰も業務で佐藤さんに関わらなくなったし、愚痴を聞いてあげる人もいません。

1年ほどで、佐藤さんは体調を崩します。
体が痛い、眩暈がするなどで長く通院をされていましたが、休職の末、回復の兆しなしということで退職しました。
不気味なほど静かな引退でした。誰も悲しんだり、佐藤さんの体調を案じたりしませんでした。

間もなくして、次のお局さんが生まれます。仮に鈴木さんとします。
お局さん候補は他にもいたのですが、鈴木さんは業務上、他の候補者よりも多くのスタッフと関わっていたのです。そして、鈴木さんと佐藤さんの状況は、非常に似ています。

もともとアルバイトとして雑用をしていましたが、長く勤めているという理由だけで社員登用されました。
確かに、接客やメール対応などは、若い人たちよりもスムーズにできます。しかし、業務に必要な法律や行政文書を読んで理解することはできません。自然と、仕事内容は窓口業務が多くなります。
別の仕事を頼むと、問い合わせメールの対応で1日潰れるので無理だ、と嘆きますが、鈴木さんもそれを望んでいるようにも見えます。
しばらくすると、昨日の案件は終わったのか、今日の問い合わせはXXさんに任せたいなど、本来の鈴木さんの仕事では無いことに口を出してきます。そして、ターゲットを1人決めて、ひどい誹謗中傷を言い始めたのです。

ターゲットは、ぼんやりとした壮年の男性職員です。仕事の効率悪いのですが、いつも機嫌良く、無害な人です。
最初は男性の仕事のやり方が雑だと、鈴木さんが周りに愚痴っていた程度でした。
しかしながら、その男性職員がコロナに罹ってしばらく休み、復帰してきたとき、鈴木さんが「うちの会社にコロナ持ち込んだでしょ」と本人に向かって言い放ったのです。オフィス内で、取引先の人も出入りするような場所でした。多くの職員が聞いていましたが、全く問題になりませんでした。

もともと佐藤さんにも、鈴木さんにもお局さんの素質はあったと思います。
噂話が好きで、他の職員の服装や持ち物にチクリと嫌なコメントをしたり、風邪で休んでいる人がいると「私も休みたいのに」と愚痴を言ったり、他の人の仕事のやり方に文句を言ったり、などなど。
しかし、それが事務所の中で起きるのは、佐藤さんや鈴木さんの問題ではなく、組織の問題だと思います。組織が、佐藤さんや鈴木さんの業務遂行能力を正しく評価できず、業務指示に反映できていないのです。過大評価も過小評価も、彼女たちのコンプレックスを刺激します。会社が、不満の種を作り、その不満を他の職員へのいじめで発散しているのを、許容しているのです。
そして社員全体が、それをなだめて無視するという形で対応しています。

おわり。

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て
楽しくない話ばかりで恐縮ですが、誰かの何かに役に立つような記事になるように頑張ります。