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櫻井翔さんのラップは絶対に「お前」って言わないからすきだ

わたしはもともと、ヒップホップとかラップの類が苦手だ。
ひとつの音楽ジャンルとして確立されているし、わたしと相性が良くないだけで「かっこいいもの」「イケてるもの」であることは重々承知している。
わたしが小〜中学生だった2000年代の初頭は、今よりヒップホップの色が濃いというか、ラップの多い音楽が流行していた。歌詞のなかの「俺」と「お前」が主人公の曲。「おいしいパスタ作ったお前、家庭的な女がタイプの俺」…クラスで一番目立っていた子たちが休み時間に流していた。
わたしはその輪には入れない側だったので、今でもそういった音楽には一歩引いてしまう。

おなじ頃、嵐に出会った。
一目で恋に落ちた当時の櫻井翔さんは、襟足を長く伸ばしておへそにピアスを開けていて、今より数段チャラかった。もうなぜすきになったのか覚えていないし、言葉では説明できない。だけど、当時小学生だったわたしは、わたしなりになにか惹かれるものがあって、嵐を、櫻井翔さんを応援することになったのだ。

今更説明するまでもないが、櫻井翔さんはラップを担当していて『言葉より大切なもの』あたりから自分で詞も書いている。
ラップが苦手だったわたしが櫻井翔さんのラップを受け入れられた理由、それはもちろんすきなアイドルだから、という前提はあるけれど、歌詞のなかで絶対に相手を「お前」と呼ばないことが大きいとおもう。

「またね」って 言葉を残して別れていっても
確かな  この夏だけは君と共に         

『言葉より大切なもの』(2003)

君は君 夢 でっかく描いて
僕はここから成功を願ってる

『Still...』(2007)

あなたの分の想いも抱いて
階段のぼるよう 上向かって
辛くて 苦しくたって 耐えて
歓声浴びる姿描いて…

『風の向こうへ』(2008)

あなたのないこの部屋が
いまさら悔やんだとこでまた
その手また その目また
すり抜けこぼれる 求めたら   

『Tell me why』(2014)

薄闇でわずかに動いてる あなたの黒い瞳
闇の中で光り動いてる あなたの強い瞳

『抱擁』(2017)

また夜が襲う  貴女の香り指に残る
無邪気な顔でまた汚す

『T.A.B.O.O』(2010)  ※ソロ曲

レストランに行ってまた
映画館に行ってまた
ドライブに行ってまた貴女を知っていく

『sugar and salut』(2013) ※ソロ曲

窓枠に伸びる影から裸の彼方
時を刻む月灯りと数多の朝が
未だにまだまとわりつく貴方の最中(さなか)
露わな儚き頭と身体の狭間

『P・A・R・A・D・O・X』(2013)

横になろうよ 今日はもう 外がもう...
なんて言い出せず
言葉で伝えりゃ意味が出るの
貴方求め live in the moment

『いつか秒針のあう頃』(2020)


おわかりいただけるだろうか。
「君」「あなた」「貴女」「貴方」
と曲の雰囲気や歌詞の世界観にあわせて呼び方を変えている。
ざっと見てみると「君」「あなた」が基本形で、2008年以降(20代後半〜)のソロ曲やセクシーな楽曲、甘めな楽曲では「貴女」「貴方」が使われることも増えている。発音としては "あなた"が最も多いということになる。

チャラく軽く見えかねないイメージのラップを、ヒップホップでは一般的な「お前」ではなく、おなじ目線で「あなた」と呼びかけ歌うことでとても紳士的で丁寧なものになっている。ヒップホップではなく「アイドルのラップ」になっている。決してわたしたちを置き去りにしない。
外見はチャラかったけれど中身は生真面目で誠実な、わたしが恋に落ちた当時の櫻井翔さんそのものみたいだ。

ラップだけじゃなく、客席を煽るときだって
"Put your hands up!"   "Everybody screeeeem!!"
などとヒップホップの決まり文句的なものももちろんあるが、彼の代名詞
「日本全国、ご唱和ください!」
「東京ドームにお集まりのみなさん、お手を拝借!」
こんな丁重な煽りで客席を沸かすことができるのは櫻井翔さんだけだとおもう。

「櫻井翔さんらしさ」はリリックにも現れている。語りだすとキリがないのだけれど、最新のアルバム"This is 嵐"から『Do you...?』のラップをちょっと聴いてほしい。

party people in this place to be
此処に現るはこの“夢の布陣”
yeah One for the you guys, two for the show
切実にいつもメルシーXD

この"One for the you guys, two for the show"はもともと
"One for the money Two for the show"
で「第一に金、第二にSHOW」というちょっと悪ぶったヒップホップの慣用句的なものらしいのだけれど、その「金」の部分を「あなたたち」と置き換えている櫻井翔さんの言葉遊びに、品の良さとセンスを感じる。
ラグビーW杯のテーマソング『BRAVE』のラップでラグビーの用語である" one for all, all for one"を" one for all and all for you "とアレンジしていたのもそうだ。


そして、歌番組やライブのときにアドリブで詞を変更して歌うのも、櫻井翔さんの粋なところだとおもう。

動き続けた長針と短針は
振り返ってみると いやに短期間
「You are my soul」歌った頃から現在
俺ら若過ぎた ただ若過ぎた

『PIKA★★NCHI DOUBLE』(2004)  のラップ詞。
"「あかさたな」習った頃から現在" の部分を変えて歌った、2020年の国立競技場でのコンサート。言わずと知れたデビュー曲のサビ部分。21年間の歴史が走馬灯のように蘇り、グッときてしまったのはわたしだけじゃないはずだ。

どこで見たのかもう忘れてしまったが(わりと最近のテレビ誌だとおもう)、「嵐の楽曲は作曲家の方にお願いして書いていただいているものだから、俺らの直の言葉を曲に載せられるのは翔くんのラップだけ」というような意味のことを松本潤さんが話していた。
櫻井翔さんのラップのなかでの言葉選びはいつも愛に溢れていて、丁寧で、上品で、かつユーモアがあって、ときどきちょっとワルくて、妖艶だったりもする。彼の紡ぐ言葉がだいすきで、たまらなく愛おしい。

わたしが櫻井翔さんをすきな理由は、タイプだとか疑似恋愛的なものではなく、たぶん「憧れ」がいちばん大きい。
キラキラと輝いていて、強くて、努力家で、賢くて、品が良くて、ちょっと不器用なところも含めて最高に素敵だ。こんな人になりたい。来世はジャニーズJr.になって、櫻井翔さんの舎弟になりたい(上田くんたちの気持ちがよくわかる…)。ここまで思わせてくれるアイドルに出会えたこと、感謝したい。


櫻井翔さん。他に選択肢はいくつもあったはずなのに、そのなかからアイドルを選んでくれてありがとう。嵐になってくれてありがとう。ずっとずっとだいすきです。どうか今日も、何の心配もなくぐっすり眠れていますように。

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