ウード・琵琶・リュート・ギター・うた
月の沙漠コンサートシリーズにリュート奏者として出演させていただいています。各楽器の日本を代表する方と一緒の舞台に立てることは光栄でもあります。個性的なメンバーでとても刺激になります。楽器は、右からウード・琵琶・リュート・ギターです。ギター以外は聴く機会の少ない珍しい楽器かもしれません。初めて聴きますという方もコンサートではたくさんいらっしゃいます。
共通点は、はじいて音を出す楽器ということです。「撥弦楽器」と言います。中東のウードが起源です。そのウードが西に渡り、リュート、ギターに。シルクロードを通って、中国でピーパ、日本で琵琶になったと言われています。奈良の正倉院にも螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしだんごげんびわ)がありますね。
「なぜ、ネックの先がまがってるの?」
リュートを弾いているとよく質問されることがあります。
「弦を巻いて止めるところが、ペグと言って細い木の穴に棒を差し込んで止めてあるだけなのです。ほら、こうして曲がっている方が安定しやすいでしょ。」
とそれらしいことを言ったりしていますが、実際はその曲がっているところ逆に弦がひっかかり調弦をするのが、やりにくかったりします。私のリュートの師匠は
「どうです。肩にこうして書けると運ぶのが楽でしょ。」
などと説明して笑いをとったりしています。
「リュートの起源は『ウード』というアラブの楽器です。そのウードがまがっていました。どうやら宗教的な意味があったようです。」
これは多くの方が納得してくださいます。
先日、ウード奏者の常味さんにお聞きする機会がありました。
「いやー、僕もよくわかんない、だよねェ。この方が調弦しやすいからとか適当に答えているのだけど。どうなのかな?」
振り出しに戻ってしまいました。
どこにもない音
『はなのうた』
田原順子 作曲
Moonlight caravan
月の沙漠メンバー
うた:みほ
ウード:常常味裕司
琵琶:田原順子
ギター:柴田杏里
リュート:櫻田亨
さて、月の沙漠メンバーでCDもリリースしています。ウードはアラブの音楽、リュートはヨーロッパの音楽、古楽というジャンル、ギターはクラシック、琵琶は平家物語の語りとこの1枚でいろいろ体験できます。
リリースにあたり、ちょっと戸惑ったことがひとつ。
「このCDはどのジャンルに入れればよいの?」
クラシック? 邦楽? 民族音楽?
答えは「ワールドミュージック」
「どこにもない音」 これがこのCDのキャッチフレーズです。世界的に見ても1枚でこれだけのジャンルが聴けるCDはないそうです。
私はこのCDでリュートソロ イタリアーナ&シチリアーナ サリーガーデンなど|おやすみリュート|で紹介した曲が収録されています。
「ペルシャから東西へ ~ シルクロードを行く弦の旅」
これが月の沙漠コンサートのコンセプト。
CD「月の沙漠」好評発売中!配信販売も。
ここからはちょっとマニアな話になります。
興味にある方だけどうぞ。マニア度を★の数で表しています。
リュートマニア ★☆☆
「リュートってどんな意味、語源は?」
実は呼び方は色々あります。
リュート(lute)は英語読みですね。日本はこれを採用。
ドイツではラウテ(Laute)シューベルトの歌曲にも出てきます。
フランスはリュト(Luth)とおしゃれで短くなります。
イタリアではなぜか様々あります。ラウト(lauto)リウト(liuto)レウト(leuto)
リュートの起源は諸説あり、メソポタミアにリュートに似た形の撥弦楽器が既にあったと言われています。紀元前2300年頃の話です。4000年以上の歴史がある、人類には欠かせない楽器だったとも言えるのでは!!
今は・・・珍しい楽器ですが。
私が弾いているヨーロッパのリュートは紀元8世紀頃に回教徒のムーア人によってスペインに持ち込ました。スペインではラウード(Laud)と呼ばれます。ムーア人の楽器はアラビア語でウード(ud)と呼ばれていました。「木」という意味です。持ちこまれた時にスペイン語の冠詞が付き、「ラウード」となりました。
ラウード~ラウト~ラウテ~リュト~リュートという感じでしょうか。
つまり、リュートとは
「木で作られた楽器」
と言うことになります。楽器が木で作られているという、ごく当たり前な答えとなりました。
櫻田亨 リュートのCD