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第二章 医者に殺される

財政難で検診が変わる

近藤 それにしても健診・検診は病人を作りだす、実にすぐれたシステムですよ。
がん検診には意味がない、というデータが山ほどあるのに有効だと言い張ってがん検診を推進している。

医者の数はどんどん増えるけど、医療を必要とする患者さんの数は、そう増えない。
だから、元気で、ごはんもうまいと思っている健康な人から病気を見つけだそうとするんです。
「ちゃんとがん対策をやっているように見せたい」という行政の思惑もあって。

中村 行政がからんでいるから、事業所へはやかましく言いますよね。
検診を受ける従業員のパーセンテージが低かったら、老人への拠出金が増えるとかあるから。
まあ、抗がん剤で治るがんもないわけですから、早すぎる死を防がなきゃいけない繁殖期の人間はしょうがないでしょうけど。

近藤 しかし医学的には、働き盛りの人も健診を受けない方が長生きするんですよ。
一例を挙げると、フィンランドで境遇の似た中年男性を最初の5年間、600人は健診を受けさせて、体重、血圧、血糖値、コレステロールなどぜんぶ理想の数値になるよう管理して、別の600人は自由にさせた。
すると15年後、健診組の方が病死、事故死、自殺とも多かったというデータがあります。
原因は管理のストレスや、薬害ではないかと言われています。

中村 がん検診の風向きも、変わってきている部分もありますね。

近藤 行政の検診に対する考え方はここにきて若干、変化してきています。
がん検診で寿命は延びないということを認識したみたいです。
だけど、ここで「がん検診には意味があにことがわかった」と認めたら、官僚の先輩たちが間違ってたことになるでしょう。

だから、ここはぼくの推測だけど「健康増進法」というのを作って、がん検診を地方自治体の責任でやらせるようにして、自分たちは逃げちゃった。
官僚って実にズル賢い人たちですね。

どうせ死ぬなら「がん」がいい
中村仁一 近藤誠 宝島新書
115頁~117頁から抜粋・引用 紹介

近藤誠先生は、官僚の本質をよく見抜いておられると感心しました(笑)。


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クラちゃん
嬉しい限りです。今後ともよろしくお願いします。