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きっかけ

「メンタル強いね」

不妊治療の結果が陰性続きだったころ、友達親子と遊んでいる私をみて同じく不妊に悩んでいた別の友達が、私にかけた言葉。

確かにそうだった。
もちろん、治療がうまくいっていないときは気分が沈んでしまうし、お腹が大きくなった妊婦さんやこどもを連れて歩いている人とすれ違うと羨ましく思うこともあった。
人によっては子持ちの友達に会うことすら、辛いと思うこともあるだろう。
この友達との話題がこどものことだけではなかったから、という理由もあったのかもしれないけれど、それでも心が折れにくい……と自分でも思うことはあった。

不妊治療を記録したブログはネットで検索すればいろいろと出てきて、治療に悩むとときどき読んでいた。
陰性と言われるたびにひどく落ち込んでしまうのは、誰でも同じ。
次こそは……と気持ちを奮い立たせながらも、判定日は毎回思わず泣いてしまう方も多いようだった。

悪い結果が続くと、私も泣き出したい気持ちになった。
しかし、診察室で医師から「残念ながら今回も……」と言われ続けても、なぜかいつも冷静に受け止めていた。
(本当は冷静なふりをしていただけかもしれないが、そんなふりをすることができたのも、心にすこし余裕があったからなのだろう。)

私が心に余裕を持っていられた理由は、ただひとつ。
どんな話でも聞いてくれる、不妊治療の先輩でもある友達がいたことだ。

早くから不妊治療に取り組んでいた彼女は、私がまだ未婚だったころから不妊治療のことを話してくれた。
そして壮絶な妊娠生活とお産を乗り越え、出産は奇跡の連続であることも教えてくれた。

私が不妊治療を始めると何でも親身になって考えてくれて、先輩としてアドバイスをくれることもあれば、ただ話を聞いてくれることもあった。
夫は不妊治療に協力的で頼りになることもあったけど、同じ様な経験をした女性でなければわからない気持ちは、なかなか理解してもらえない。
彼女がいなかったら、私の心はあっという間にボロボロになっていただろう。

彼女という味方がいた私は、とても幸運だったのだ。
不妊治療はデリケートな話題でもあり人によっては否定的な意見を持っていたりすることから、なかなかオープンにすることができず一人で抱えて苦しんでしまう人も多いと思う。
どんな悩みでも言えることだけど、話を聞いて共感してくれる人がいることだけでも心が救われる。

不妊治療のことをオープンに伝えてしまおうと思ったきっかけは、私に彼女がいたように、私が伝えることで誰かの心が少しでも楽になったら……と思ったから。
友達との会話で直接伝えたりSNSで話題にしたりしていたら、やはり相談をされることは増えた。
けれど、こどもは諦めるという形で不妊治療を卒業しました、と公にしたら、今度は、妊娠の報告をされにくくなってしまった。
(それどころか、不妊治療現在進行中の方からも相談されにくくなってしまった気がする)

誰かの喜びを、一緒に喜べる自分でいたい。
それは、治療していた頃も、今も、変わらず思っていること。

自分の身がおかれている現実にもやもやすることはあったとしても、それとこれとは話が別。
いつかは終わりがくる人生の中でふてくされている時間は極力減らしたいし、自分が体験できないことを体験した誰かから聞くことは、疑似体験をさせてもらっているようで想像力を豊かにする。
そんな気持ちで自分とは違う環境にいる友達とも、何でも話すようにしている。

でも、もし、今の私が伝えられることが誰かの役に立つのだとすると、それは、不妊治療のやめどきを考えている誰かや、同じ様に未産のまま不妊治療をやめた誰かなのかもしれない。

ただ、不妊治療とは縁がなく2児の母になった友人がかけてくれた言葉も、ずっと心に残っていて。

ーーーデリケートなことだけどこんな風に発信してくれると、私自身、子どもを持つ親として自分の振る舞いを省みれるというか……うまく言えないけど……そういうことの積み重ねで社会も変わってくれることを期待します。

生き方は、人の数だけ「その人の生き方」があって、私は「(母にはなれなかったけど、それも含めて)私らしい生き方」で、これからの人生を歩んでいけると思っている。
社会を変えられるほどの大きな発信ではないけれど、不妊治療を経験した人もそうでない人にも「そんなことがあった人が、こんな風に考えて、こういう生活をしているのね」と、一例として受けとってもらえたら、嬉しい。

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最初の写真は、毎年6月に実家から届く梅。
庭の梅の木がたくさんの実を付けてくれるので、母から大量に送られてきます。
今年は梅酒と梅シロップ、梅酢にしました。
梅酢と梅シロップは飲みごろになったので、夏バテ予防にいただいています。

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