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tadashikoizumi
『ベロニカは死ぬことにした』の真意①
きみは人と違うのに、同じようになりたいんだ。それはわたしから見れば、とても深刻な病気だけどね。
死を意識したことがりますか?最初に言います。この本は「生きる」ことに疲れている人にこそ読んで欲しいです。僕自身も胸に手を当てて冒頭の質問を自分にしてみました。そして、なぜ「ベロニカは死ぬことにした」んだろうと考えました。ベロニカは特にいじめられていたわけでも、お金に困っていたわけでも、精神病でもなんでもなかったからです。今回は前編で本書について紹介。後編で本書を引用し考察を交えながら解説してゆきたいと思います。お好きなところからお読みください。
**目次
1、前編(あらすじ)※自分で読みたい方はとばしてください。
①ベロニカの自殺未遂
②精神病院ヴィレットでの患者たちとの出会い。
③自身の狂気との遭遇
④ベロニカに引き寄せられた狂人たち
⑤折からの解放
⑥結末※ネタバレ注意
2、後編**
1、前編
①ベロニカの自殺未遂
24歳のベロニカは容姿端麗で、図書館で働き、親切な友人・素敵なボーイフレンド・愛情溢れる家族、すべてを手にしていた。
でも彼女が満たされることはなかった。何もかもを手にしながら、どれ一つとして満足していなかった。ある日彼女は睡眠薬で自殺することにする。
この退屈で変わりばえのしない人生に飽き飽きしていたからだ。この先どうなるかも彼女には分かっていた。
睡眠薬を大量に飲んだベロニカが次に起きたのは、スロベニア国内でも有名な精神病院、ヴィレットに収容されていた。
自殺は失敗。さらに、大量に飲んだ薬の影響で余命は1週間だと告げられる。
②精神病院ヴィレットでの患者たちとの出会い。
ベロニカは死ぬことが出来なかった。それどころか、余命までできてしまった。「自分で死をコントロールする」
のと「余命を待つ」のとでは話が違う。何とかして自殺する手段を見つけたいベロニカだったが、少しでも勝手な行
動を取ろうとすると、鎮静剤を打たれてしまう。
助けを求めようと患者に接触を図るベロニカは数人の患者たちと深くかかわってゆく。
③自身の狂気との遭遇
ヴィレットは、精神を病んだ人の集う場所だった。しかし、実際には、入退院は自由い出来る。自分がおかしいのではと進んで入院する人。また、特に病気と言えるような箇所がなくても、出ていこうとしない人が大半を占めていた。
ベロニカは余命1週間で、周りの患者たちは彼女を憐れむように遠ざけていた。彼女は、「余命」が分かってから、はじめて自分が本当にしたかったこと、「夢」を思い出した。観客がいて、その前でピアノを弾くこと。彼女は、どうして早く気付かなかったのだろうと後悔するがもう遅い。
残された時間、病院の広間にあるピアノをずっち狂ったように弾いていた。やがて彼女の狂気が他の患者たちへと伝染してゆく。
④ベロニカに引き寄せられた狂人たち
ベロニカのピアノにはいつの間にか観客がついていた。多重人格の少年「エドアード」だ。他にも過去の不倫に苦しみ、妄想がヒステリーへと変わり入院した「ゼドカ」、弁護士としてのキャリアを進んでいたが、やりたくない仕事を永遠と行っていたために、錯乱状態に陥り夫と離婚することになった「マリー」、大使館の息子なのに絵描きになろうとして家族に抑えつけられ、人格崩壊してしまった「エドアード」たちとの接触によって、彼らに「生きたい」という気持ちを再燃させた。それは「自分の生きたいように生きる」というものだった。
⑤折からの解放
ベロニカに心臓発作が襲ってくる。最後の時が近づいているようだった。
彼女のピアノは多重人格で「人格」を失っていた、「エドアード」を現実の世界に呼び戻すことに成功する。
彼もまた「絵描きになる」という夢を思い出していた。そして、ふたりは病院を脱走する。最後の時をお互いの夢を語ることにした二人。ベロニカはエドアードに夢を取り戻させることが自分の生きてきた意味だったのだと確信する。やがて、二人は眠りに落ちていく。
⑥結末※ネタバレ注意
次の日の朝、病院から4人の患者たちが消えるていることが分かった。
ベロニカと彼女に深く関わった4人だった。彼らは自分の意志を取り戻したのだった。そとの世界で、今度は自分が生きたいように生きてゆく。
例え、「狂人」と呼ばれようと。彼らは自分が他人と違うことを深く自覚したのだった。
ベロニカは生きていた、1週間の余命は嘘だったのだ。「死を意識させることで生を取り戻す」という院長イゴール博士の目論見は成功したわけだ。 もう彼らはここへは帰ってくることはないだろう。「生」を見つけたから。
※後編まで一記事い納めると分量が多いため、前編と分けて投稿します。
執筆者 taiti (#twrite)
「言葉が人を癒す」書籍紹介を中心に活動しています。
小説家を目指しています。エッセイも読んでいただければ幸いです。
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