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しばはし参考人:一般社団法人りむすび代表・しばはし聡子 第213回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和6年4月3日

006 しばはし聡子

○しばはし参考人

 皆様、おはようございます。一般社団法人りむすび代表のしばはし聡子と申します。

 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私からは、共同養育の支援者の立場として、離婚で悩む父母そして子供と関わる中で見えている景色を踏まえた上で見解を述べさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、私がなぜこの共同養育支援というものを行っているかといいますと、実は私自身が離婚経験者で、共同養育に非常に後ろ向きな母親でした。当時、夫と関わりたくないという思いがありました。調停で非常にもめました。ですので、夫と関わりたくないから、息子と父親を会わせることに後ろ向きでおりました。その関係で、息子が非常に気持ちが不安定になってしまった。その後悔をきっかけに、私のような、子供を量産させてはいけない、そんな思いで、離婚した後も親子関係、そして親同士の関係も続いていくんだということを世の中に広めたい、そんな思いがありまして、この団体を立ち上げて活動しております。

 子供が望むのは、何よりも親同士が争わないことです。そのために、私どもは、争うよりも歩み寄りをということをモットーに、もちろん離婚しないにこしたことはありませんが、争わない離婚、そして争わない共同養育に向けて、別居前から離婚後、そして再婚後までの親御さんに向けたサポートを行っております。

 今回、共同親権導入に向けた議論がされている中で、まず大前提として、子供にとって父母であることは離婚しても変わらない、そして親子関係は続くという観点から、共同親権というものを導入することで、世の中、離婚すると一人親だと思われがちなんですが、まずは、離婚しても二人が父母なのだ、二人親なのだということが、固定観念として変わっていく。そのことも踏まえて、共同親権というものの導入をされることは私は賛成をしております。そして、共同養育が円滑に、スムーズに実践されるきっかけにもなるというふうに考えております。

 とはいえ、離婚するほどの夫婦です。共同親権で共同に権利を行使することなんてとても難しいとおっしゃられる方がいらっしゃるのも当然だと思います。

 今からちょっと三ケースほど、我々のところに来られるケースを御紹介いたします。

 まず一点目、いわゆる高葛藤ケースというものです。主に奥様が夫からの精神的DVと言われるもので非常に高圧的な思いをされてしまって、子供を連れて出ざるを得ないという状況まで追い込まれてしまって、夫と関わりたくない、関わることが困難だということで、子供を会わせることも非常に怖いというふうに思われている、主に同居親の女性ですね。

 その一方で、ある日突然、妻子が家からいなくなり、子供はどうなってしまったんだろうと非常に不安な思いをし、子供に会わせてほしいと主に調停や裁判などで訴える、そのような方々は別居親さんなんですが、連れ去りという用語を使われて、連れ去りは誘拐だなんというようなことを発信されたりしています。当然、このケースですと、同居親の方は絶対に単独親権、そして、別居親の方は共同親権を導入してほしい、まず、ここは一番の対立構造があるケースです。

 そして、二点目なんですけれども、共同親権で共同養育をして離婚をしたいというような御夫婦も最近は増えています。夫婦は破綻しているんですが、親子関係は継続したいですし、父母として育児分担を行っていきたいというようなケースです。

 しかしながら、話合いがうまくできない、そして、一つ司法の場に乗ってしまうと争いになりかねないというような方々も多くお見えになられています。このような方は、共同親権になるまで離婚を棚上げされるか、又は、単独親権の中離婚をされて、共同親権が導入されたら親権者変更を行うというような合意書を交わしていらっしゃるような御夫婦もいらっしゃいます。

 そして、三点目ですね。共同親権を持って、相手にきちんと親の自覚を持ってもらいたいというようなケースです。主に女性の同居親の方が、相手にきちんと子供と関わってもらいたい、そして、養育費も支払ってもらいたいという思いがおありです。

 一方で、無関心層といいますか、お子さんのことは関わりたいと思いつつも、妻から解放されたいなんという思いから子育てを放棄しよう、無関心な方というのも一定数いらっしゃいます。

 これらの方々は、共同親権というのを非常に求めていらっしゃるというケースになります。

 そんな中、今回の議論の焦点というのは、共同親権、単独親権、父母で意見が分かれたときにどのように判断をしていくのかというところになるかと思うんですが、法案を拝読しますと、裁判所での裁量になってくると。そこで私たちも非常に関心があるのは、精神的DVというところをどのような評価基準で見極めていくのかというところですね。

 法案を拝見しますと、父母はお互いに人格を尊重し協力する必要がある、そして、親子関係のみならず、父母の関係その他のこと一切の事情を考慮して判断していくという中で、この見極めというのをどのように行っていくかというところなんですが、我々、高葛藤な同居親、別居親の数々の支援を通している中で、このような方ですと共同親権ないしは共同監護が可能、いや、このような方はなかなか難しいんじゃないかということを、あくまで現場レベルではありますけれども、是非共有させてください。

 まずもって、平易な言葉ですが、協力的か協力的ではないかというところに分類されると思います。もう少し分解してお話ししますと、まず協力的な同居親がどのような方かと申しますと、夫とは関わりたくない、離婚するほど嫌いな相手でも、夫婦の感情と親子関係を切り分けることができる方、そして、感情としては嫌かもしれないんですけれども、きちんと相手との親子交流というものを自主的に行おうとされている方、そして、相手と関わることが難しいのであれば、上手に支援なども活用を試みようとされているような方ですね。

 一方で、では、協力的な別居親はどのような方かと申しますと、主に高葛藤ケースですと、ある日突然妻子がいなくなるというようなケースが多いわけなんですが、相手が出ていったときに、なぜ出ていったと相手を責めるのではなく、自分が何が至らなかったかと自責の念、自分にちゃんと向き合って、そして相手に謝罪をしたり、改善をされるような方も一定数いらっしゃるんです。そのような方は、例えば、相手がどうしても離婚したいというのであれば、子供と会えることはもちろん条件になるかと思うんですが、相手の意向を受け入れる、そして、係争を長期化させないというような方もいらっしゃいます。そして、相手の意向を尊重していく。必要に応じて、相手が支援を使いたいという場合には支援団体を利用するということも受け入れるというような方が協力的な別居親というふうに我々は感じております。

 一方で、非協力的な方、非協力的な同居親がどのような方かと申しますと、父母の感情面の関係と親子関係をなかなかやはり切り離すことが難しい。そして、つい子供に悪口を言ってしまったり、できるだけ自分自身が関わりたくないから子供も関わりたくないのだということで、子供を比較的、ちょっと所有物化といいますか、そのような観点になってしまっているような方もいらっしゃいます。

 一方で、非協力的な別居親ですね。これは、例えば妻子が家を出てしまったときに、相手が悪い、自分は何も悪いことをしていないという他責の念、相手が悪い、相手の代理人が悪い、社会が悪い、法律が悪い、そしてひいては自分の代理人が悪いと他責の念にとらわれ、誰かを攻撃、支配しようとする。そして、自分の思いどおりにならないことによって係争を長期化させてしまって、ともすれば、支援を拒絶するなんということもございます。そのような方々は非協力的なタイプの方なのではないかな、そうしますと、なかなか共同親権というのは難しいのかなと思います。

 ただ、一つ言いたいのが、離婚するほどなので、最初は非協力的な思いがあっても致し方ないと思うんですね。ただ、別居、離婚を通して、お子さんのことを考えたり、相手の立場を尊重するような気持ちに変容していく方も一定数いらっしゃるということはお知りおきいただければいいなというふうに感じるところです。

 では、共同親権を導入するに当たって課題もあると感じております。司法の改革と支援の強化になります。

 では、まず一点目、司法ですね。

 ここはちょっと三点申し上げたいんですけれども、御相談者の中にも、司法のレールに乗って、本当は謝りたかっただけなのに、なぜか争いになってしまう、そのような方が多くいらっしゃったりもしています。是非、悪化させない、争わせない離婚協議ができるような司法改革をしていただきたいなと思っております。

 構造上の問題なのかもしれませんが、いきなり条件を決める、そこによって葛藤はより上がっていきます。ではなく、例えばカウンセリング前置主義を取るですとか、調停の一回目はわだかまりを解消することに特化するですとか、そのことによって、例えば、悪かった、至らなかったことを謝るですとか、何かそのような機会が一つあるだけでも条件を決めやすくなると思います。

 そして、何より争わせない協議をできるように司法関係者が導いていただけるようなお立場になっていただきたい、司法関係者、弁護士も含めてですね。子供がいる限りは、父母であって、関係が続いていきます。であれば、司法の場で争わせて、離婚した後にいきなり円滑な共同養育をせよ、それは無理な話なんです。ですので、話合いの時点でいかに争わせないかということが非常に肝になっていきます。

 そして、協議の方法の選択肢ですね。当事者同士で協議ができない場合に、弁護士をつけてすぐに裁判所なのかというと、その間、当事者以上裁判所未満といいますか、ADRという方法がございます。皆さん御存じかと思います。我々も行っておりますが、カウンセリングを重視した後に条件を決めていくと、非常に有意義な話合いが行われて、父母の関係性を構築しやすくなっております。

 そして、最後、どうしてもやはり葛藤が上がるのが、長期による親子の引き離しなのではないかなというふうに見ています。どうしても、調停ですと、お金のことですとか条件を決めることを先に話し合って、その間に子供に会えない側の別居親というのはどんどん葛藤が上がって、条件ものまなくなっていく。同居親側は何で私の条件をのんでくれないのと、お互い、どちらが悪いということではなく、話合いの進め方によって葛藤が上がってしまっているんです。

 お子さんに身体的な暴力があったりするときにはもちろん更生が必要になります。ではない場合、夫婦の問題で長期化してしまっているのであれば、いち早くまずは交流をする、その後にいろいろ条件を決めていくという順番でお話合いをされた方が建設的なのではないでしょうかと思う次第です。

 そして、次は支援の強化ですね。これは、夫婦から父母になっていく関係性を構築していくための支援を強化していただきたい。

 まず、別居中は、弁護士がいたり、裁判所で調停委員がお話をしてくれるので、何とか自分の意見を書面で通すことができますが、離婚した後にいきなり当事者同士でお話合いをすることが非常に困難になっていきます。

 我々は、離婚後も父母のお話合いの仲介の支援などを行っております。もちろん非弁はできませんので、交渉はできないんですが、伝え方を少し柔らかくするなどをして相手に伝える、そのような相互のことを行っていることで、比較的わだかまりが解消し、ひいては支援を卒業することなどもできます。

 離婚後にちょっとした変更を行いたい、例えば面会交流を、二回を三回に変えるだとか、そのようなことを私たちはできないんですよね。かといって、また弁護士をつけて裁判所に戻る、また葛藤が上がってしまう。であれば、全国で、ADRのようなお話合いの場。もしかしたら、ADRを使わなくても、お互いで、第三者が入ればお話合いができるような夫婦だっていらっしゃると思います。

 ですので、我々も行っておりますが、ペアカウンセリング。ないしは、お話合いがスムーズに進まなければ、弁護士を介したADRなどもあるんだよということを国を挙げて普及をしていく必要があると思います。

 そして、二つ目、共同養育。

 この言葉というのは、共同という言葉で非常に懸念される方が多いと思います、仲よくやらなきゃいけないのと。そんなことはなくて、高葛藤で没交渉の方々も支援などを使うことによって共同養育というのはできるんです。子供にとって大事なのは、相手の悪口を言わずに自由に会える環境を整えること。であれば、親同士が仲悪くても、やり取りしなくても、共同養育というのはできるわけなんですね。

 ただ、なかなか、共同養育は大事です、子供のためにやりましょうというような知識だけ植え付けられたとしても、うちは違うからできないというふうに他人事になってしまいがち。ではなく、いろいろなフェーズの共同養育という形があるんだよという実践的なものを学ぶ場、我々は提供しておりますが、幾つもいろいろな形がある多様化なんだよということを離婚前、ないしはできれば別居前ですね、に知っていただくような機会をつくられてはいかがでしょうか。

 そして、我々は行っているんですが、共同養育を行うのに大事なのは、相手側を知ることなんです。世の中には、同じ立場の人で集まる別居親団体、同居親団体、たくさんあります。もちろん、自助作用としては大事なんですけれども、ともすれば、相手が悪い、自分たちはかわいそうねと被害者意識になりがち、これでは共同養育というのはできないんですね。

 相手の側の立場を知ること、これは何が大事かといいますと、かといって、自分の配偶者に直接お話を聞くことはできない。であれば、自分の配偶者と同じ立場の他者と交流するわけです。我々は、同居親と別居親を集めたコミュニティーを運営しております。中には、非常に妻に対して怒り、そして夫に対して嫌悪感を持たれているような方々もいらっしゃいますが、相手側の立場を知ることで、いや、もう少し子供を会わせてみようかなですとか、余り妻を責めるのはやめようですとか、そのような作用が行われるということで、このような支援というのも必要になってくるのではないかと思います。

 そして、最後、行政ですね。

 一人親支援、非常に特化されてされている。これは非常に大事だと思います。被害者支援そして経済的支援、就労支援、もちろん大事です。ただ、共同養育をしたいと思われている方でしたり、共同養育をできるんじゃないかなというような方が御相談に来られたときも、一人で育てるためのことだけのアドバイスだけではなく、もう少し引き出しを持って、この方々には二人親支援を、どのように二人親で育てていくかをアドバイスできるような、そのような引き出しを持つための知見を行政の方も、支援員でしたり職員でしたり相談員ですかね、が知っていただくような機会ですね、研修制度などを用いられるのがよろしいのかなと思います。

 最後になりますが、もう一度申し上げますと、子供が望んでいることは、両親が争わないことなんです。共同親権導入の旗を掲げることによって、もしかしたら、当事者は協力し合わないといけないというような意識改革が進むかもしれません。そして、司法も、争わせてはいけない、争わないような話合いをしなくてはいけないということでスキームが確立するかもしれません。そして、何より社会が、離婚した後も一人ではなく二人なんだ、親は二人なんだということは浸透するでしょう。これって、子供が望む、親が争わない社会を実現できることになると思われないでしょうか。私はそう思います。

 もちろん、非協力的な、攻撃的な方も一定数いらっしゃいます。変わらない方もいらっしゃいます。そのような方々は単独で、一択でいいですし、監護者になれなくても致し方ないと思いますが、グレーゾーンというか、争うつもりはないけれども、いつの間にか争ってしまったという方を引き上げるような支援強化、司法改革を是非していただくことが必要かと。

 今、この法改正という潮目に私も僭越ながら立たせていただいておりますが、離婚は争いだというこのあしき文化をここにいる私たちのこの世代で変えることによって、次世代が、結婚というのはいいものだな、子供を産むのもいいことだな、万が一離婚になっても、このような形もあるんだなということを是非引き継いでいきたいという思いを私は強く抱いております。それは、子供にとって一番の、子の福祉に資することなのではないかなと思う次第です。

 御清聴いただきましてありがとうございます。私からは以上となります。(拍手)


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