下の子の特権
母は絶賛「下の子かわいくてたまらん症候群」。何をしても、どんな顔でもかわいくてたまらん。頭のてっぺんからつま先まで、かわいくてたまらん。どうしようもなくかわいい。もちろん、上の子もかわいい。これは大前提のお話。世の中の二人以上の子持ちのお母さんって、だいたい末っ子がかわいくてたまらん!と言ってる気がする。子持ちになる前は、こんな気持ちは想像もつかなかった。
私が思うに、一人目の初めての育児中、毎日毎秒かわいくてたまらなかった。かわいいかわいい、と我が子を愛でながら、気付くと数年経ってしまっていた。2歳手前ぐらいから、「かわいい」に「大きくなったなぁ」という感慨深さがプラスされてくる。子どもにも、この頃から自分でできることが少しずつ現れてきて、毎日毎秒「大きくなったなぁ」としみじみしてしまうのだ。そしてふと、ただただかわいかった時期がもう随分と遠くに去って行ってしまった様に感じられて、寂しさがひょこっと顔を出してくるのだ。意味もなく床や布団の上をころころ転がっていた可笑しな様子や、さっきまで機嫌よく食べてたのに急にギャン泣きし出す理不尽さや、君にしか見えない誰かがいる様にじーっとどこかを見ている奇妙な空気が、気が付いたら目の前から消えてしまっているその現実が、寂しくてたまらなくなってしまうのだ。
そんな折に産まれてくる下の子は、ただただかわいかったあの時期を、もう一度経験させてくれるのだから、母としては願ったり叶ったり、嬉しくてたまらない。そう、かわいくてたまらんのだ!プラス、上の子とは癖や性格も違うから、この子特有のかわいさも相まって、もーかわいくてたまらん!となるんである。でも母は知っている。もう後少ししたら、「大きくなったなぁ」がやってくることを。そして、それがやってくると同時に寂しさもやってくるということを。だから母は、毎日毎秒目一杯愛でている。上の子だって、どんどんできる事が増えてきて、どんどん新しい言葉で話して、「大きくなったなぁ」は継続中。今この瞬間の出来事を、寂しさと共に思い出す日が来ることを、母は覚悟している。だから、今この瞬間瞬間、私は二人を愛おしいぞぉーっと心で呟きながら、一緒に笑ったり叱ったりしながら過ごしてる。そんな今日の日も、いつか寂しさと共に思い出す、と覚悟しながら。
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