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あんこうを捌いて食べて来た話

数年前、SNSで出会ったお料理教室の先生を畏れながら勝手に師匠と仰ぎ、慕っているのですが、久しぶりに予約が取れたので参加して来ました。
調べてみたら、最後に参加したのは有賀薫さんとヒラメの5枚おろしの会に参加した2年前でした。実に2年ぶり!!

「予約が取れない人気教室」とか書いてしまうとなんだか陳腐な印象を持たれそうですが、ガチ硬派な教室で、実際かなりの激戦でして。キャッキャウフフな雰囲気はゼロです。男性の参加者も多く、ピリピリした緊張感すらあります。ちなみにトップ画像のあんこうは裏返っています。

あんこうと言えば、吊るし切りを思い浮かべる方も多いと思いますが、吊るして捌くことの方が少ないそうです。確かに、そんなにどこでも吊るせる設備があるとは限りませんよね。吊るすのは皮をむく時だけで、ほとんど吊るしたまま捌かないそうです。
昔から「映え」的な要素は広がりやすかったわけですね。迫力ありますもんね、吊るし切り。私も山岡さんが吊るしていたのでそう思っていました。

あんこうはぬめりが多く、一度触るとベタベタで途中写真を撮っている余裕が全くありませんでしたので、ご想像にお任せします。

まずはあんこうの特徴として、

・捨てるところがない(少ない)
・ぬめりが多い
・歯が鋭いので注意
・小骨がなく全身軟骨なので骨が柔らかい
・寄生虫がたくさん付いている

と言った説明から。鮭と同様、ほとんどのワタも皮も美味しく食べられるので、捨てるところがほとんど無い魚だそうです。皮はコラーゲンの塊ですし!確かに見た目からしてなんだかぬめりそうだし、言われてみればあの体でくねくね泳ぐから骨は柔らかそうです。
海外でも食べられている地域(肝は捨てるそう、もったいない…)があるし、クセが無いのでビジネスクラスの魚料理にも結構使われているんだそうです。知らなかった!

今回は北海道余市産をご用意下さったのですが、ワタを出していないものだったので、お腹を開いてワタを取り出すところからスタートしました。(鮮度を保つためにワタを出しておく事が多いそうです)
先生が一尾デモンストレーションし、参加者が交代で手分けしてもう一尾を捌きました。

私はこのような性格なので、お腹を開いて肝を取り出す1番良いところをやらせてもらいました!ラッキー!
でも包丁を深く入れ過ぎて肝をうっすら切ってしまいめっちゃ叱られました…
本当にすみませんでした、反省しています。

肝の次は腸、胃、卵巣、血合(腎臓)、心臓、と、どんどんワタを取り出して、水分が多いのでお腹をキレイに拭きあげます。腸と胃は、変色があるものは臭いので捨てて、変色がなくキレイなら食べます。

あんこうは餌の魚を丸のみにしているので、胃の中に色々入っていると開けてみると面白いです。臭いですが。
入ってない場合はひっくり返して残った内容物を除去し、良く洗います。腸も同様に切り開いて内容物を掃除して、キレイに洗います。
腸が食べられる魚は意外と多くないので割と貴重です。鮭も腸は捨てていました。

魚が大きいと、ワタもそれなりの大きさなので、手術感半端ないです。

ワタの処理が終わったら、アゴを外します。
あんこうの特徴でもある大きな口の口角の辺りから歯茎?のきわ辺りに包丁を入れて鋭い歯の生えたアゴ周りを切り外します。書くと簡単そうですが、軟骨と軟骨の隙間に上手く刃を入れないとなかなか切れないし、割と苦戦しました。

アゴを外した後は表面のぬめりを洗います。洗っても全部は取れないし、死んでいてもぬめり成分を分泌し続けるのですが、白っぽくまとわりついている部分は丁寧に洗い流します。
ここでも適当なことを言って叱られました…
本当に申し訳ないです、反省しています…
(私が食を仕事にしている事をご存知なのでこうして叱って下さいます。多分、愛です。一般の方はこんなに叱られません。多分。)

ぬめりをしっかり洗い流したら、皮をむきます。
目のある表側を上にして置き、アゴを外した口元からきっかけを作り、押さえては引っ張り、押さえては引っ張りしながらむいていき、肛門辺りまで来たら裏返して同様にむき、最後は表側と裏側の皮を一緒に持って一気にむきます。
ココがまたベローっと皮がむけて楽しいポイントです。

皮をむいたら、頭と胴体を切り離します。胴体部分がいわゆるフィレというか、正身で、鍋とか唐揚げにする部分ですね。頭や皮など他は全部アラの扱いです。どこをどう食べても美味しいですが。

胴体は胸びれを外し、腹腔を覆っていた薄肉?を外した後は三枚おろしにして、後はひたすら各部位を全員で手分けして食べやすい大きさに切り刻みます。

「腸、半分やりますか?どうぞ」「卵巣やりますね」「胃はどうしたらいいですか?」「肝、刻んでおきますね」と言った会話が飛び交います。完全にオペです。

ここまでで、あんこうの処理が終わり、いよいよ調理です。もう全員お腹ペコペコです。

一尾分のあん肝は、先生がビストロさん(オーブンレンジ)にお願いして蒸焼きに。刻んだもう一尾分の肝は、鍋で焼きつけて脂が出た所で、丁寧に炒めて火の通りにくい野菜と切り分けた皮やワタを入れて火を通していきます。すると、あんこうと野菜からどんどん水分が出て汁っぽくなって来ます。どぶ汁と言う漁師飯です。
こんなに水分が出るんだ!と驚きますよ。

仕上げに火の通りやすい野菜と、あんこうの正身を入れて火が通ったら出来上がり。
そのタイミングであん肝も出来て試食のお時間です。

見た目はネーミング通りですが、これが想像を絶する美味しさ!
コラーゲンたっぷりの皮のぷりぷり感と身もぷりっとほろっと柔らかく極上の味!

あん肝は、冷める時に固まると教えて頂いた通り、火が通っても温かいと柔らかくて美味しかったです。先生曰く「思ったより脂が乗ってなくて塩が強く効いてしまった」との事でしたが、然程でもなく美味しい食べられました。

あんこうがとても美味しかったのと、お造りにしない(寄生虫が多いため。産地ではお造りで食べることもあるそうです。)ので、割と雑に捌いても全然問題ないのと、ほぼ解体すれば良いだけ、と聞いて俄然勇気が湧いて来ました。

先生が生まれて初めて捌いた魚があんこうだったと伺って驚きましたが、確かにあんこうは魚を扱う時に必要な包丁使いを覚えるには良いかもしれないな、とは思いました。
(正直、お値段的にその勇気はありませんが)

近いうち、復習したいと思います!

試作のための食材費や、子供達が使いやすい調理器具の購入に使わせて頂きます!