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米株式市場の調整相場入りの可能性と資金フローの変化(ゴールドマン・サックスの分析)
1. 概要
米株式市場は2月24日から調整相場に入る可能性があるとゴールドマン・サックスが警告している。これまでS&P500種株価指数は最高値を更新し、リテール投資家や機関投資家の買いが相場を支えてきたが、今後はその流れが変わり、市場の売り圧力が強まる可能性がある。特に、3月の納税シーズンを前にした資金流出、トレンド追随型ファンド(CTA)の売り、オプション市場の影響によるボラティリティの上昇が懸念されている。
2. 資金フローの変化とその影響
ゴールドマン・サックスの分析によると、2月24日から市場の資金フローの力学が変化し、これまでの買いが失速するとされる。その主な要因は以下の通り。
(1) リテール投資家の買い減速
2024年はリテール投資家の資金流入が記録的なペースで続いていたが、3月の納税シーズンを前に現金化の動きが加速する可能性が指摘されている。
これにより、これまでの強気相場を支えてきたリテールマネーの流入が鈍化し、買い圧力が弱まると予想される。
(2) 年金基金の季節的な影響
年金基金の資産配分の動向による影響も大きい。
1月・2月は年金基金による資産配分の影響で株式市場に資金流入が多いが、3月以降は流入が減少する傾向がある。
そのため、3月以降の市場では「燃料切れ」が起こる可能性が高まる。
3. トレンド追随型ファンド(CTA)の売り圧力
CTA(商品投資顧問業者)などのシステマティックファンドの動向も、今後の相場に大きな影響を与えるとされる。
ゴールドマン・サックスの試算によれば、相場が下落した場合、CTAは今後1カ月で約610億ドル(約9.1兆円)相当の米株を売る可能性がある。
逆に、市場が上昇した場合にCTAが買い戻す金額は、約100億ドル(約1.5兆円)程度と推計されており、売り圧力の方が圧倒的に大きい。
つまり、CTAが相場の下落を加速させるリスクが高まっている。
4. オプション市場の影響
オプション市場のポジショニングも、今後の市場のボラティリティ上昇を示唆している。
(1) ロングガンマの減少
S&P500のオプション市場では、98億ドル相当のロングガンマが構築されている。
ロングガンマとは、市場が下落した際に買い支えとなるバッファーの役割を果たすものだが、この**50%が2月21日にロールオフ(満期を迎え)**する。
これにより、2月24日週以降は市場がより自由に動くようになり、ボラティリティが高まる可能性がある。
5. 今後の市場見通し
短期的に米株式市場は調整相場入りするリスクが高まっている。
2月24日から資金フローの力学が変化し、売り圧力が強まる可能性。
3月の納税シーズンに向けてリテール投資家の買いが減少し、市場の下支えが弱くなる。
CTAの売り圧力が強く、買い戻し余地が小さいため、相場の下落を加速させる可能性がある。
オプション市場のロングガンマが2月21日に半減することで、ボラティリティが上昇しやすくなる。
このような状況を踏まえ、投資家は短期的な市場の変動に注意を払い、リスク管理を意識した投資戦略を取ることが求められる。