【ウモ星人からの書簡】 D57-2 T1B-7/12 最初の地球探索旅行
D57-2
T1B - 7/12
手紙のタイトル: 最初の地球探索旅行
日付:1967年1月30日
受信者:ビジャグラサ氏
原語:スペイン語
備考: 全三十枚のうち、二枚目。
地球周辺への初めての到着
1949年1月7日、二機のOAUOLEA UEUA OEMM(宇宙船)に乗る兄弟たちは海王星と火星を探査した後、それより遥かに大気濃度の高いOOYAGAAの近くに到着しました。最初の探査は、近地点が地表から337km、遠地点が398kmの楕円帯上の螺旋軌道で行われました。
海王星の探査中、すでに地球からの非常に広範囲な電波を受信していたため、兄弟たちはこの惑星を特定することができたのです。そこから、この星に高等生物が存在することが明らかになりました。他の発信源は確認されなかったので、OOYIA(図D57-4e、太陽)と重力的に繋がってている残りのOYAA(寒冷星)には知的な生物形態がないか、少なくとも発達した技術を持つ存在はいないと合理的に推論しました。そして、探検家たちは、OOYAA(図D57-4f、火星)に行くことになりました。
(290KOAEE<1KOAE=約8.7km>の距離で行われたこの最初の火星探査では、複雑な多細胞生物を発生させる密度の濃い大気は存在しないことが判りました)。遠隔探査装置で確認された複数の隕石衝突の痕跡と土壌の結晶構造から、少なくとも探査した狭い範囲内には土壌を分解する活発なバクテリアがいないことがわかりました。 その後、このOYAAにはタンパク質やアミノ酸だけでなく、単細胞や多細胞の単純な植物が発見されています (もう少しすれば、あなたもそれを確認なさるでしょう。)
人が居住するOYAAには厳格な探索プログラムが実施されます。まず、攻撃された場合に回避しやすいように非常に速い並進速度を維持する必要がありますが、そのために観測の精度が低くなりました。私たちUMMOが記録したOOYAGA(正方形惑星)こそ、私たちが分析している星であることは明らかでした(私自身はまだUMMOにいましたので、探索隊の兄弟を指して複数形で表現しています)。
もしあなた方がある程度の文明に達していれば、即座に私たちを察知するだろうと考えていました。察知されなかった場合は、私たちの存在を表に出さないという基準が課されました。これには明白な理由があります。もし、ある文明を純粋に研究するときに、私たちの存在を表に出せば、社会を混乱させ、防衛・探知・傍受は非常事態の行動を取り、情報ネットワークのコミュニケーションの深刻な妨害となるでしょう。このように異質な存在によって変化し、混乱した社会ネットワークを純粋に分析、研究することはできません。例えば、細菌学の専門家が新種のスピロヘータを研究しようとするなら、同じことが言えます。彼は培養液に新しい細菌を混ぜて、従来の細菌の生物学プロセスを変えようとは考えません。もし、そんなことをすれば、顕微鏡で見た微生物の基本的な行動形態がおかしくなってしまうからです。
(観察)
このような理由から、私たちは皆さんの前に存在を公にしないのです。私たちが連絡を取り合っている人々、特にアメリカやオーストラリア国籍の人たちからは、なぜ私たちの存在を公式に知らせないのかという素朴なご質問を何度もいただきます。
その中には、博学な科学教育を受け、私たちが自制しなければならない本当の原因を、ご自身で推論できるはずの地球人がいるのは不思議なことです。こんな矛盾したことは思いもよりませんでした。知的能力にあまり恵まれていない地球の大衆が、私たちや他の銀河系からの訪問者が、ニューヨークの大きな広場の真ん中で、SF小説のように銀色のジャンプスーツを着て、手には破壊光線銃を持ち、UEUA OEMMM(あなたたちは空飛ぶ円盤と呼んでいます)から降りてきて、目の前に現れるべきだというくだらないイメージを抱いていると説明しました。つまり、私たちがくだらない人気取りをすると判断しているのです。彼らの初歩的で原始的な考えはこうです。「もしこれらの存在が別の天体から来たのなら、なぜ彼らは出てきてそれを証明しないのだろう?」
地球哲学の専門家であれば、このような詭弁を「論点先取の虚偽」と言うでしょう。
間違いなく、私たち(と、あなたの星にいるかもしれない他の天体からの訪問者たち)は、地球の社会ネットワークに私たちの存在を知られたいとは一切考えていないのです。
これから申し上げる通り、兄弟たちは当初からまったく気づかれないように予防線を張っていました。あなた方の文化に深く入り込み、地球社会心理学の法則を学ぶにつれ、私たちの存在を少数の人々に慎重に明かしても、地球社会の他の人々は全く信じないので、危険ではないことに気づきました。 もしそうでなければ、私たちはあなた方に連絡するリスクを冒すとお考えになるでしょうか?私たちと会話した三人のジャーナリストが(ポーランド、スペイン、カナダの三つの新聞や雑誌)に記事を掲載しました。その中には私たちの予想通りに懐疑的な口調で論理的に書かれたものもありました。
もちろん、地球の報道機関や政府や国際的な技術機関の前で、自分の素性を証明して堂々と発表すれば、そのような態度は改められるでしょう。しかし現時点では、そのようなことをするつもりはありません。
そうして、私たちは二つの目的を達成することができました。地球人のグループと直接接触し、お互いの文明に関する情報を交換すること、そして証拠が不充分で、ファンタジーにしか見えない状況を傍観している他の地球人社会に迷惑をかけないようにすることです。
残念ながら、もう一つの目的は達成できていません。それは国家技術機関に気づかれないようにすることです。アメリカ、フランス、イギリス、ソ連、そしてイタリア、ドイツ、アルゼンチン共和国は、私たちの存在を知っており、私たちは内密に心配する必要はないことをお伝えしたのですが、彼らは密かに懸念していると思われます。この状況を知った市民が不安に感じたりパニック反応を起こしはしないかということについて、少なくともUMMOの兄弟姉妹に関する限り、これらの政府の外務省は安心して良いのです。私たちは当分の間、自分たちのことを公表しません。 私たちが接触している数少ない科学者や作家についてのリスクは、その親族や友人の非常に批判的で観察力のある一部の人々を除けば皆無です。
それ以外の人たちは、先入観と偏見で飽和しており、その多くが私たちの開示が詐欺だというリスクを認識しているので、強硬な姿勢を崩さないでしょう。
ですから、私たちの存在について、あなたの周囲の方々に過度に漏らさないようにお願いいたします。その様なことをなされば、妄想癖や精神障害と判断されるだけでなく、自分自身の職業的な安定性も損なわれる可能性があります。事前に事実を分析することなく、懐疑的な態度をとり、自分は非常に「知的」だと思い込んでいる人たちに対しては、そのまま同意しておけば良いのです。
兄弟による最初の地殻の目視調査
その日、アメリカ大陸と南アジア大陸には多くの積乱雲がありましたが、密集した通信網(以前は配水管だと思われていましたが、後に滑走路や鉄道だと判明)の観察の邪魔にはなりませんでした。これにより、私たちはあなたの技術文明の程度を初めて測定することができたのです(私たちの星には長い間、道路網がありませんでした)。最初の航空機は、後にバハマ諸島と判明する群島付近で検出されました。その画像を船内の実験室で拡大して、その形態の特徴を分析しました。これが、私たちが手に入れた技術水準を示す最初の目安となりました。86UIWの解析期間中(後にヘルヴェティア共和国<スイス>南西部の上空0.62KOAEまで降下)、都市や工業地帯、鉄道の分岐点、森林や農園の植物群、大西洋上の浮遊構造物や河川の流れの一部などを撮影し、異なる高度や緯度の複数の大気ガスサンプルを収集しました。モントルー(スイス)の街角で撮影された画像では、初めて人間の姿を見ることができ、歴史的遺物として今も大切に保存されています。鮮明な画像ではありませんでしたが、基本的な生理学的特徴や衣服の形態を分析することはできました。
宇宙空間での等力学条件が悪くなる前にUMMOに戻るためには探査期間の延長はできませんでした。私たちのUEUA(船)が地殻に直接着陸することは一度もありませんでした。
(最後のレポートで、私たちの二回目の旅と兄弟の最初の降下に関する歴史的なレポートを始める予定です。)
地球で採取したサンプルを「UMMO」で分析する。
OYAAGAA文明(あなたの惑星)が発見されたというニュースは、私たちの社会に大きな衝撃を与えました。
早速、技術者たちは、客観的なデータ(空気サンプル、光学的な画像、電波による音声)と、この最初の探索に参加したメンバーの主観を慎重に検討することにしました。
この豊富な、しかし間違いなく不充分なデータを使って、歪曲されているとはいえ、社会構造と文明の程度についての最初のイメージを作り上げる必要があったのです。
私たちが作り上げた初期の概念は、現在の私たちのものとはかけ離れています。けれども私は単に興味深いお話として、その時に私たちが考えた地球文明のイメージをお伝えしたいと思います。いろいろと間違いはありましたが、それでも私たちが思い描いたイメージは、現実と一致する点がたくさんありました。
まず、人間の映像が三つありました。最初の、最も完全な画像は、二つの建造物の間を歩く異なる性別の人々です。注意深い分析により、顔の特徴は判別できないものの、幾人かの人物の胸の位置が女性であることから、疑問を挟むことなく性別を特定することができました。けれども、衣装の細かい部分までは識別できませんでした。また、YIE(私たちの言語で女性)は、カツラの可能性もありますが、頭髪が豊かだという特徴があることもわかりました。残念なことに一部のYIE(女性)の画像(胸の形状で男性とは明確に区別されました)では、男性と同じように両脚を覆っていたため、男女の服装の識別について論争が起こりました。
この分析は非常に重要で、地球への旅に選ばれた兄弟たちは、地球人に気づかれないように同じようなEEUE(衣服)を着なければなりません。残念ながら、その組成(私たちは到着するまで、それが繊維組織であることを知りませんでした)や、その準備のための最も重要な詳細を明らかにすることはできませんでした。
もうひとつは、兄弟を降下させるのに、どの地域が最も適しているかということです。もちろん、遠征隊が住民と接触することの無い、砂漠以外の無人地帯が適切でしょう。
地形のUULAYA(撮影した画像)を調べて、半野生の地理環境を選べばいいわけですから、皆さんには、とても簡単に見えるでしょう。しかし、地球人が地下の「コロニー」に住んでいるかどうかはわかりませんでした。私たちの場合、人口や建造物を屋外に集中させるのは、産業プラントだけなのです。残りは地下に引き込めるXAABI(新興住宅)に分散して暮らしています。また、他の有人惑星では、人口は地下の大規模なコロニーに集中しています。Ayaggaa(地球)もそうなのでしょうか。 最初は工場だと思った建造物は今日、家であることが分かっていますが、私たちが非常に興味をそそられたのは、これらの建造物にある長い垂直の管や、カメラで撮影できた乗り物にあるノズルの画像で、これらはすべて暗い色の蒸気やエアロゾル(煙)を吐き出していました。
ある人間が口に咥えた小さな円筒というあなたにとっては身近なものに、私たちがどれほど驚いたか、想像もつかないでしょう。排出されたガスを分光分析したところ、酸化炭素、タール、炭化水素が多く含まれていることがわかりました。そこで、地球の生物は、こういったガスの無い酸素や窒素だけの大気では生きられないので、循環する空気にガスを加えて呼吸しやすくする必要があると考えたのです。そのため、このような人工的な気候が私たちにどう影響するのか不安になりました。
(後述するように、私たちが地球に到着した後、当初は呼吸用ガス発生器と解釈していたタバコをあなた方が持っているのを見て、この仮説はさらに裏付けられましたが、子供や他の人がタバコを持っていないことにはさらに驚きました。)
探検隊が降下する地点を選ぶとき、技術者の間で大きく意見が分かれました。一見して最も人口の少ない場所を選び、地下の人口集中地帯に着陸してしまい、あなた方に発見され壊滅するかもしれないリスクがあったのです。
様々な航空機の画像を詳細に研究することで、あなた方の技術レベルを知ることができました。まだプロペラで空力牽引しているものもありました。また、金属板(この時点ではアルミニウム合金だとは知りませんでした)の溶接や、いくつかの補助機構の構造も注意深く観察しました。
地球の社会ネットワークについて、心底奇妙に思えることがありました。この惑星のさまざまな地点から、広い周波数帯の電波を数百種類、記録していました。そこから、私たちは膨大な言語の多様性を観察して驚きました。音響技術の専門家が、音素の同質性を調べたところ、場合によっては、二つか三つの音素を誤って一つに統合して識別してしまうケースもありました。また、メートル波長に対応する通信の大部分が、最初に捕捉されたものと同じ二進法言語文字(短パルスと長パルス)だったことにも、強い衝撃を受けました。
しかし、同じ基準で翻訳しようとすると、間違いに気づきました。あなたが使っている本当のコードはどれなのでしょう?そしてある結論に達しました。OYAAGA(地球)の住民は、色々な言語を使っており、様々なコミュニティの間で通信するために、まだ私たちが解読できていない長短の信号に基づいた国際的でユニークな言語を論理的に使用しているのではないかと(後に、モールス信号は多くの言語の伝達手段なので、この仮説は非常に単純だったことが分かりました)。更にテレビ放送を受信したことが事態を複雑化しました。私たちは、その周波数が画像を伝達するものとは思いもよりませんでした。音響的に解釈して、録音されたものはすべて、発信源が北米と判明したものであることから、その地域の三つの言語が話されていたと考えられました。そのうちの最後の一つ(ビデオ信号)は、他の言語とは似ても似つかないものでした。
このような(誤った解釈によって更に複雑化した)膨大な言語の無秩序さと、地球のさまざまな地域の色々な機器や構造に見られる技術レベルの大きな差が相まって、私たちは本当に困惑するばかりでした。
地球文明とは何なのか、首尾一貫した全体像を把握するのは不可能でした。
一方、OYAAのいくつかの地点と異なる高度で採取された大気組成からは、補助呼吸装置をせずに降下できることがわかりました。
あとは、タンパク質分子の光学異性体が右旋性なのか、左旋性なのか、という重要な問題を解決するだけでした。もし、地球の生物・食品の生体分子が私たちと逆ならば、私たちの消化器官では吸収できないので、自分の食料を運び込まなければ飢える運命となります。また、万一、水に有毒な塩類があり、地球人には吸収できても、私たちには吸収できないという場合に備えて、水を浄化するための補助装置も必要でした。
あなた方との接触方針については、慎重に練り上げられました。攻撃された場合の武力的な防衛。平和的に検知され、誘導されることを前提に、公式な接触を開始すること。完全な抑制を行い、気づかれないようにあらゆる技術を駆使してごみ処理をすること。もちろん、地球人に気づかれないことはほぼ不可能だと考えていました。そして、最も理想的なのどかな場所に地下観測所を設置し、最も実現可能な観測方法と技術で現地を研究します。
この点でも私たちは間違っていました。後述するように、私たちは怪しまれることなくあなた方の中に紛れ込むことが充分に可能なことを知って驚愕しました。
早速、準備に取りかかり、第一次隊のメンバーを厳選しました。
六人の中の、二人はYIEE(女性のことをこう言います)でした。彼らは皆、地球の音声言語の音韻構造にEESEE OA(潜在意識)を慣れさせるために、収集した様々な言語の長い断片を(その意味を全く知らずに)学習しました。撮影した資料をすべて確認し、鮮明な画像がある数種類の地球の植物の形態を詳しく知りました。けれどもこれから未知の世界に向かうOEMIIにとっては、あまりにも少ないデータでした。