就活では変化の激しい時代を生き抜く力を示して欲しい
第二章:変化の激しい時代を生き抜く
第二章-1:VUCA時代とは
VUCA時代という概念は、アメリカの軍事戦略家であるアラン・ブルームが1997年に提唱した。VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取ったもので、物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な状態を指す造語である。
VUCAはもともとアメリカで軍事用語として使用されており、国家間の戦略がより複雑化している状況を表す言葉だった。しかし2016年のダボス会議で当時のオバマ大統領が言及したことで、世界的に話題となった。
VUCA時代の就職活動
VUCA時代において、就職活動は単なる職探しではなく、自己成長と未来のキャリアを築くための重要なプロセスだ。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性という時代の特性を理解し、適応することが、これからのキャリアを成功させる鍵となる。
就職活動中に意識すべきこと
自己分析と市場調査
就活生はまず自己分析を行い、自分の強みや価値観を明確にすることが重要だ。また、業界研究や企業研究を通じて、自分に適した職場を見つけることが必要だ。VUCA時代においては、変動する市場や企業の動向に敏感になり、迅速に対応する力が求められる。
具体的に言うと、これから日本や世界はどのように変化をしていくのか?情報には敏感になって想像力を働かせて世界の未来を予測する必要がある。
例えば世界のロボティクス産業が、どのような状況か情報をキャッチしている就活生が、どの程度いるだろうか?
下記のYouTube動画はアメリカのBoston Dynamicsが2024年春に投稿した動画である。
近い将来、ヒューマノイドロボットが一部の仕事を担うことになる気がするのは私だけだろうか?
業界や企業の一次情報に意識して接する
OB・OG訪問やインターンシップを通じて、業界の現状や企業文化を感じることも就職活動中にしか出来ないことかもしれない。
ちなみに息子に大学に入学した直後に伝えたのが「自分が得意なことを磨くことを意識すること」と「自分が好きなことが仕事になるか体験すること」だった。
息子は、自分の強みを「コミュニケーション能力」と考えていて、いろいろな会社で営業のインターンシップを体験していた。
ある会社では、インターン生としては異例の成績を上げて「リーダーを任され自分の営業チームを持って新人教育までしている」と言っていた。
逆にファッションに興味が強く、古着屋さんを巡って自分の好きな服を見つけるのが好きなようだ。こちらも大学1年生から大学3年生の今まで某アパレルショップでアルバイトをしている。
こちらも某百貨店内に入る直営店で販売スタッフをしていて、自分でも社割を利用して、かなり高額な商品を購入したり、彼女への誕生日プレゼントを贈ったりしているようだ。
しかもバイト中に、ある紳士が来店して「どこかで見たことあるな…」と思っていたら、企業研究で見ていた某商社の社長さんだったそうだ。
とても紳士的な方だったようで、「某商社への印象が良くなった」と言っていた。
また、その某アパレルショップでは社員の方たちとも仲良くさせてもらって業界のこと、企業のことなど生の声を聞けているようだ。
一次情報とは
一次情報とは、簡単に言えば、自分が実体験で得た情報のことだ。自分が経験したことや、実際に訪れた場所、または実際に当事者から話を聞いた情報のことだ。
逆に二次情報とは、本や文献、インターネットから得られる情報のことだ。例えば就活サイトの情報や、各企業の採用サイトに掲載されている情報が二次情報だ。
例えば無人コンビニなどが話題になったら、実際に足を運んで体験してみる。その経験はインタネットや新聞などで情報を知っているだけの人と比べると差を付けられる。
VUCA時代は各業界で、いろいろな変化が発生する。その変化の現場に意識して足を運んでおくことで未来を見る眼を鍛えることが出来るのではないだろうか。
クリティカルシンキング
VUCA時代では、情報の真偽を見極め、正確な判断を下す能力が重要だ。
私は、20代の時にグロービスMBAシリーズの「クリティカル・シンキング」と言う書籍でクリティカルシンキングを学んだ。
クリティカル(Critical)とは直訳すると「懐疑的な」「批判的な」という意味の単語であり、ビジネスにおけるクリティカル・シンキングの意味は「健全な批判精神を持った客観的な思考」という意味合いで使われることが多い。
言葉の意味からもわかるようにクリティカル・シンキングとは「事実や結論にたどり着くまでに、仮定を設定し、検証していく」考え方のこと。過程の中で「本当にそうなのか?」を繰り返すため「懐疑的」「批判的」な意味を持つクリティカル・シンキングと呼ばれている。
今から25年くらい前に、はじめて「クリティカル・シンキング」を読んだ時の衝撃は、今でも少し覚えている。それぐらい衝撃的だった。
グローバルな視点を意識する
VUCA時代は物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な状態だと説明したが、この先10年程度は確実に起こるであろう変化もいくつかある。
その1つがグローバル化の進展だ。
特に日本は、一部の輸出関連企業を除くと日本国内でビジネスを展開してきた。しかし日本の人口減少による国内市場の縮小は確実なので、これから企業も、個人もグローバルな視点を持つことが求められる。
海外の市場や文化を理解し、国際的なビジネススキルを身につけることは、競争力を高めるために非常に重要だ。
就職活動中には、企業分析などで「その企業がグローバル視点でどのようにビジネス展開を考えているのか」を意識して分析してみると良いと思う。現時点での売上の海外比率なども見てみると良いと思う。
例えば
ファミレス最大手で「ガスト」「バーミヤン」「夢庵」などを運営する株式会社すかいらーくホールディングスの売上ポートフォリオを見ると
【連結事業】レストラン97%、他3%(2023.12)
となっている。
対して、同じ外食業界でも回転ずし「スシロー」を展開し、傘下で「京樽」「海鮮三崎港」「杉玉」なども運営する株式会社FOOD & LIFE COMPANIESは台湾、香港、タイ等に海外展開もおこなっており売上ポートフォリオを見ると
【連結事業】国内スシロー68(2)、海外スシロー22(8)、京樽8(-3)、他2(-7)(2023.9)
と海外での「スシロー」の展開が2割を超え、成長率でも海外事業が最も大きい。
※企業分析は別の記事で詳しく解説します。
ちなみに息子は、高校時代にニュージーランドに2年間留学した。コロナウイルスの蔓延で帰国させたが高校生で異国で2年間過ごしたことは、彼のこれからの人生に活きてくることを期待している。
ちなみに息子には就職活動が終わったら、大学在学中に海外に数ヶ月行くことをすすめている(高校時代の留学のようにエージェントのサポートを受けてのホームステイではなく、自分でバックパッカー向けの宿などを探して生の世界を見てくることをすすめている)
挑戦を楽しむマインドセット
VUCA時代は物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な状態なので、今までと同じことをやるだけでは、成功の確率は下がってしまう。
失敗を恐れず、変化や挑戦をポジティブに捉えるマインドセットが重要で成功するまで挑戦し続ける人が成功するのではないかと思う。
前の記事「第1章-2 人生における仕事の位置づけ」でも紹介したが
電球や蓄音機を発明したことで知られる発明王トーマス・エジソンは
I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.
(私は失敗したことがない。ただ1万通りの、うまく行かない方法を発見しただけだ)
と言っている。
このマインドはVUCA時代には、今まで以上に重要になってくる。
就職活動中にも、挑戦を楽しむマインドは大切にして欲しい。
まとめ
VUCA時代とは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が特徴の時代である。この時代を生き抜くためには、柔軟な思考、迅速な対応力、問題解決能力などのスキルが求められる。
息子や同世代の就活生には、これらのスキルを身につけ、変化を恐れず挑戦する姿勢を持って欲しい。