あれから

ハンドルネームで呼ばれる毎日が
ストレスを緩和してくれていた。
そこにいる時だけは自分という存在を認められている気になれた。
1番初めに仲良くなった彼女はゲーム内で伴侶と言われる相手を持っていた。

『指定の人と伴侶になったらスキルやステータスが上がるんだよ』

『スキルやステータスがあがるのか、、』

そうやって伴侶を作ってみようと考えていると
『でも伴侶って要するに結婚か何かするって事だよね?』

何処か複雑な物がよぎったのだ。
『たかが、ゲームだよ?』
確かに。確かにそうだが、、、

ある日、その仲良くなった子のギルドに加入した。
ギルドとはキャラクターが集まるコミュニティの様なもので、属する事で他のギルドと対戦する事が出来る様になる。
仲間意識が深まると言ったところだ。
決まったいつものメンバーでモンスターを狩り
しょうもない話に花を咲かせた。
話題の生産工場たる彼らは私の親指を酷使させた。

いつの日かボイスチャットの機能を教わり使うことにした。
妻が酒を飲みながら談笑していることに驚いたからだ。
自分に見せない顔がそこにはあった。
ただ、機嫌が良くなる姿を見て肩の荷を下ろした。

私もそれに便乗した。
それは、昔オフ会をした時のゲームの感覚を呼び戻すものだった。
ゲームというツールを介してコミュニケーションを取ったのは妻ではなく、ゲーム内の友人になっていった。

ギルドのメンバーが日を追うごとに増えていく。
まだ出来て間もないこのゲームは初期に始めれば強くなれると人口は瞬発的に増えた。
ある日、伴侶を作る話題になった時
新メンバーの女の子に成り行きで提案した。
理由はお互いに既婚者である事。
ゲームの一線なんて超えられないから制約結婚をしようじゃないかと。

【そして私も彼女も気付かぬうちに再会した】