農業土木の歴史を改めて感じた

長谷川周一,古典を読む 粘土質水田の排水と暗渠に関する先駆的な 2 つの論文(2018),土壌の物理性 No.140,pp.29-34

早速,更新が2日空いてしまった.反省.

土壌物理学において,重粘土の透水係数は10^(-5) cm/sくらいのオーダーに収まるとされているが,実用上これを0と捉え,田面の地表残水の排水はもっぱら亀裂などの水みちによるものと仮定している.この視点は既往研究で基礎となっているそうで,把握に値するだろう.


かねてよりこの学問分野では,例えば中干しなど亀裂を作ることを目的としていても,その亀裂がどこにできるかわからない,のようなある種のランダム性が問題をより複雑にしていると言われているそうだ.少し話が逸れるが,例えば田面の湛水深の管理など農家の経験に基づく勘を頼っているようなものが殊にこの分野では多いことが,この分野の発展を妨げているという論調を頻繁に見かける.
これは,自然科学的な見地では確かに特筆すべきデメリットに当たるのだろう.しかしこれは,弥生時代以降人間生活と切っても切り離せない稲作に関わる学問とだけあり,歴史の裏返しとも言えよう.この分野を専攻できることは,このような歴史のいちページを紡ぐことができることと同義であるということをこのコラムを読むことで再認識し,モチベーションの向上につながったことを,ここに記録しておきたい.

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