魔弾の射手 Last Automata(オリジナルSF小説 動画付き)
1、逃げる人形
見下ろすと、かつては栄華を誇った都市は今では見る影もない。
理不尽な暴力により都市は廃墟と化していた。
僅かな月明かりが照らされる中、ティルトローター機が朽ち果てたビルの谷間をすり抜けていく。
パイロットはモニターの画面を見ながら逃亡する目標を追っていた。
格納部では完全装備の兵士たちが静かに出番を待つ。
「找到目标【目標を発見した】」
追跡装置が目的のものを見つけ、ティルトローター機が高度を下げていく。
パイロットの言葉に、李少尉は部下たちに指示を出す。
「我找到目标了! 好的! 准备战斗!【目標発見! よし、攻撃準備だ!】」
廃墟の隙間を低く飛ぶティルトローター機は、地面にサーチライトを照らす。
ライトに照らし出されたのは、プラスチックと金属で構成され、人の姿を模した機械だった。
そいつはまるで糸の切れたマリオネットのように無様に瓦礫の中を這いずり回る。
ライトに気づくと身を隠そうとより瓦礫が重なる場所に向かって移動を始める。
ティルトローター機はホバーリングした。機体の下部から30ミリ機関砲がせり出すと目標に射撃を始めた。
無数の薬莢が地表に落ちていった。
無様なマリオネットは、身体の一部を吹き飛ばされながらも、瓦礫の隙間に逃げ込んでいった。
「你跑了! 下降!【逃げたぞ! 降下する!】」
側面のスライドドアが開かれると、地上にロープが垂らされ、兵士たちが次々とラペリングを開始した。
着地した兵士たちは手慣れた動作でアサルトライフルを構えると、マリオネットが逃げ込んだ瓦礫の中を追っていく。
追跡装置を抱える兵士の一人が、マリオネットの位置を特定する。
目の前には大きな崩れかけの壁があった。装置は、相手はその後ろに隠れていることを示していた。
兵士たちはゆっくりとその周囲を囲むように進んでいった。
少尉の合図で壁の背後にまわるとそこには、オイルまみれの発信装置が転がっているだけだった。
追っていた相手の姿はどこにもない。
少尉は、悔しげにそれを拾い上げると、部下たちに周囲を捜索するように命令した。
だが結局、追っていた相手は、痕跡も見つからなかった。
少尉は。ため息をついて通信機を手に取る。
「我看不见机械师了 我再说一遍 我看不见机器人了【アンドロイドを見失った 繰り返す、アンドロイドを見失った】」