ヤノマミ族のカゴとキノコの糸
アマゾンの森には私たちが聞いたことも見たこともないような植物や生物の宝庫ですが、ブラジルの先住民族ヤノマミたちの間でPERISI(ペリシ)と呼ばれているジャングルの地面に広がる根状菌糸束があります。ペリシの意味は「キノコの糸」。黒い光沢があるこのキノコの科学名は、マラスミウス・ヤノマミ(Marasumius yanomami)。ヤノマミが発見したことにより、このように命名されました。
このキノコの糸を使って、ヤノマミの女性はカゴ作りをします。伝統的に彼らのカゴには、伝承に基づいた模様が編み込まれているのですが、1970年代からこの黒いキノコの糸で模様を入れているのだそうです。
素材となるペリシの採取は、女性たちの仕事です。ただし、採る時に朽ちた木々や葉の影に隠れている蛇やサソリ、蜘蛛などに刺される恐れがあるので、十分注意しなければなりません。そのため、男性たちも同行します。森には守護神が宿っており、ペリシは、その精霊の体毛に当たると信じられています。ですから、優しく丁寧に扱い、採った素材は腐らせることなく最大限に利用します。また、シャーマンが守護神の気を引き、痛みを感じさせないようにするのだそうです。
ヤノマミの人々が作るカゴには2種類あり、一つはWii aと呼ばれる深さのある縦長のカゴで、薪やマンジョッカ(キャツサバ)など森で採取したものを運ぶのに使い、もう一つはXoteheという浅めのカゴ。こちらは食糧収納用として家庭内で使用されるものです。どちらもチチカの蔓(ヤマイモ科のつる植物)とキノコの糸、ペリシで編まれています。