薬剤師の仕事は薬をゴムで止めることか?
株式会社OX3代表の真田です。
参議院議員の猪瀬さんが、調剤業務の外部委託について提言を述べておりましたので、改めて薬剤師の仕事とは?今後どうしていけばいいのか?について、僕なりの考えをまとめました。
その前に一個だけ。このポストにあるように、「感情的な条件反射」があまりにも多すぎることが本当に残念でなりません。XのSNS性質上仕方ないのかも知れませんが、もう少しどうにかならんものかと思うばかりです。
とりあえずこのハイネケンの動画を見てください。なんとも思わない方は…残念です笑
薬剤師さんの仕事とは
医薬分業について
薬剤師の仕事を語る上では、「医薬分業」の話は切っても切り離せないことだと思います。とりあえずこれを読んでおきましょう。
この医薬分業制度が進んだ背景を考えると、今後の医療を考える上で下記の「前提条件(背景)」を理解した上での改革が重要になってくると思っております。
そうでないと、ポジショントークになってしまったり、正当な議論ができなくなってしまうからです。
僕はこの歴史を踏まえて、医療制度とは
ためにあると思っています。この大前提が無いとポジショントークになってしまうので、あえて強調して書いております。
現状の薬剤師さんのお仕事
薬剤師さんが今行っている業務は大きく分けると、
処方内容が最適かを確認すること(処方監査や疑義紹介)
処方箋に沿って薬剤を調剤すること
正しく服用できるようにサポートすること
その他、業を成すにあって必要な雑務
になるかなと思います。
これの後半部分、「最適な最小限の薬剤を、正しく服用する」ための業務フローが組まれているわけです。
薬剤師としては、医療制度の目的に従って業を成しているので、何ら問題はありません。
しかしこれは薬剤師(医療従事者)側の視点から見た話です。
視点を変えると歪みがわかる
今度は医療を“サービス”と捉え、患者視点からの体験としてみてみます。
※視認性:患者視点から提供している様子が見えるか
※価値享受:価値を享受していると患者視点で感じられるか
◾️処方監査について
処方監査は医薬分業の背景から考えて、薬剤師の非常に重要な業務です。しかし、こと患者視点のサービスと考えたときに残念ながら「視認性」「価値享受」共に、低くなっております。
※価値享受が低い=役割的な話ではなく、実際に事象が起こる回数が少ないこと
◾️調剤について
一番患者さんから「視える」し、価値享受(薬をもらえる)される業務になります。そのため、多くの人にとっては“薬剤師の仕事=調剤”、“薬局=薬をもらうところ”になるわけです。
これが患者視点で見た(サービスと捉えたときの)現実です。
※今は視点変えてますからね?医療的な背景は考えてないですからね(念押しし)
◾️サポートについて
個人的にはここが一番問題かなと思っています。そもそも正しく服用するようにサポートすることが薬剤師の大事な業務であることは前述した通りです。
では、何が問題か。
今回視認性を△、価値享受を○ or ×としました。まず視認性について。△にした理由は、在宅等一部高齢者に対してのサポートや吸入剤や注射などの服薬が難しいものについての指導に関しては、多くの患者からも見て取れるからです。
一方で視認性△にした理由であり、価値享受に×をつけたのは、「継続的に服薬に関するサポートを受けている人」は一部だからです。これはきっと多くの方もお分かりのことかと思います。
そのため患者へのサポートができていないことを危惧して、「対物業務から対人業務へ」や「調剤業務の機械化」が騒がれているのだと。
そんなことから、よく対物業務から対人業務へという話題が上がりますが、おそらくここの役割について言っているのではないか?と認識しています。
しかしそうなると、多くの人がこの「対人業務」について大きな勘違いをしているのではないでしょうか?
対人業務の勘違い
まず大前提、これが大事なので再度引用します。
よく“対人業務”を、
「患者と直接話すこと」
だと思っている人がいます。
典型的な手段と目的の入れ替わりだと思っていて、非常に危惧しています。
目的は、「患者が“正しく服用”できること」で、
手段はどうでもいいわけです。対人業務の業務定義は、“患者と直接話すこと”ではありません。
では、対人業務をどう業務として定義すればいいのか?
僕は、
だと定義しました。
例えば、
初めてデバイスを使った服薬をするときに説明すること
副作用が出やすいタイミングで「副作用でていませんか?」と連絡すること
抗菌薬など、飲み切らないといけない薬を飲まなくなりそうなタイミングで「飲んでください」とアプローチすること
患者が困った時に相談しやすい体制を整えておくこと
処方薬が切れる1週間前に、再診と服薬状況を確認すること
在宅患者の経過確認をすること
などが例としてあるかなと思います。
まずはここをちゃんと定義しないことには、機械化による業務改善をしたり、DX化しても意味ないと思います。
薬剤師が果たすべきサポートの幅と手段の多様化と、適切なタイミングで適切なサポートをするためのDX化を行なっていかないといけないでしょう。
薬剤師の役割と患者視点を両立するには
「誰にとって」が抜けると議論が進まない
そもそもあらゆる診療科、あらゆる世代に対して同様の医療議論は無駄だと思います。抱えている症状、生きている環境は人それぞれ違うわけです。
そうなった時に、ポジショントークでの議論はなんの解決も生みません。
薬剤師の社会的役割と患者視点の価値提供を両立するためには、
「誰にとって、どのような付加価値を提供する薬局なのか?」
を明確にした“専門薬局化”が不可欠だと思っております。
「機械化しろ」は正論だが…
機械化しろというのは正論だと思います。機械は24時間疲れずに動いてくれますし、ミスもしません。
しかし機械化は、規模が大きくなればなるほど投資回収できるものです。
1日数件の一包化を機械化するくらいなら、人の手でやってしまったほうが楽なのは誰の目から見ても明らかです。
さらには、機械化にあたって下記のような意見もあります。
正論は、「論としては正しくても、論が成り立つ条件が整っているかは別問題」です。
とはいえ、機械化についての議論はさておき、薬剤師の働き方改革と、そのためのHOWとしてのDX化の推進は不可欠だと思っています。
DX化を進めるために
ではこの薬局業界をどうすればデジタルトランスフォーメーションできるか?
グレーに寛大になること
まずは「グレーに寛大になること」。これに尽きるかなと思います。
要は出る杭を叩くなということです。
ある程度批判を覚悟で言いますが、
「法は先んじるのではなく、後からついてくるべき」
と思っております。
というのも、今の時代は進化のスピードがあまりにも早いです。これまであった技術がすぐに新しい技術に取って代わり、また更なる技術進歩へと繋がります。
残念ながら「技術の進歩」に対して、「法改正」が追いつくことはまずないと思っています。AIに関する法整備が整うのを待っていたら、AIは進化しないわけです。
ではどうすればいいかというと、
・世の中にとってポジティブであればプラスに法整備がされる
・世の中にとってネガティブであればマイナスに法整備される
というスタンスのもと、ある程度グレーを受け入れるということです。
ポジティブなことであれば、世の中の人間はフォローして後押しすべきなんです。応援すべきなんです。
もちろん誰かにとってのポジティブは、誰かにとってのネガティブなのは間違いありません。それでも今この状況を変えるのならば、グレーの追及に関して過剰に叩くのではなく、暖かく見守るという選択をとってもいいのではないでしょうか?
イーロンマスクがテスラ車で10人の死亡事故が起きた際に一切謝罪をしなかった話があります。
多くの人がオートパイロット(運転支援システム)をやめろと言ったが、「事故が起こったことが問題なのではなく、人が運転するのと比較して安全かどうかが問題で、実際人力のみより事故の件数は少ない」
という真っ当な技術改革による結果を示したもの。
詳しくは下記の記事を見ていただきたいですが、これまでと比較してどう良くなったのか?どう変わったのか?が問題であり、その観点が抜けるとこう言った的外れな批判が増えてしまうわけです。
残念ながら日本ではまだまだ「新しいこと」「グレーなこと」について、叩く傾向が強いと思っています。
今回の零売規制の件に関してもそうでしょう。
最後に
薬剤師の仕事は薬をゴムで止めることか?
そんなわけはありません。
しかし今後本来の薬剤師としての役割、強いては患者様のより良い医療体験のために、目的達成の手段は多様化していかないといけないなと思っております。
株式会社OX3では、薬剤師さんの活躍の場と提供価値の拡大、強いては新しい働き方の実現に向けて、様々なチャレンジをしていきます。
「医療従事者」「患者」「社会」にとって、三方よしになることであれば、グレーであってもどんどん挑戦していきたいと思っております。
OX3では、引き続き「医療を開き(Open)」「新しい機会を生み出す(Opportunity)」「唯一無二の価値を提供できる会社(Only one)」
に挑戦する仲間を絶賛募集中です。少しでもご興味を持っていただけましたら、ぜひお話をしましょう!