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いわゆる「自由英作文」について再び

大学入試には「自由英作文」と言われる出題形式があります。それほど自由でもないのですが、旧来の「和文英訳」と比べて書く内容が相対的に自由なのでこう呼ばれています。

この「自由英作文」の出題のうち、約半数が「論説文」とか「意見文」と呼ばれる、書き手の意見を述べる文章を要求する設問になっています。書き手の意見ということででは、大学入試では小論文がよく知られています。このため論説型自由英作文は小論文と比べられることもよくあります。これに対して、自由英作文はあくまでも和文英訳の延長であって、小論文ではないという声も聞かれます。

ひとことで言えば、論説型自由英作文は「極小論文」です。100語程度の英文というのは、日本文では250字程度で原稿用紙1枚にも満たないものです。この中で自分の意見を述べていくわけです。よく、「書きたいことを書くのではなく、書けることを書くのだ」と言われます。しかしそれば、大学入試の場合、たとえば国公立大入試であれば、2月下旬にそうすればよいのであって、ふだんの受験勉強の段階には当てはまりません。むしろ書くべき内容に見合った英語力を身につけるように努力すべきです

一方で、英文を書くプロセスのすべてを英語で行う場合を除き、日本語母語話者の場合はライティング・プロセスのあるところまでを日本語で行い、最終的に英文で清書する形になります。ここでもし、文章の概要であるアウトラインを、文の形で箇条書きで表した場合、そこから先の手順は和文英訳と同等になります。その点では自由英作文は和文英訳の延長であるとも言えます。

もっとも、この「自由英作文」という問題形式の普及に伴い、文章のひな形に適当な英文をはめ込むといった「解法」も流布し始めています。これだと極小論文でも何でもなくなるわけですが、それでできた英文は芳しい採点結果にはならないはずです。「自由英作文」は英語で論文を書くような人たちの出題によるものであることを、受験生も指導に当たる私たちも認識すべきです。

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