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記憶に気後れは無用

受験英語に限らず、ことばを使うことを目的に学ぶときには記憶は重要です。記憶していない知識は絶対に使えません。知識の記憶を意識的に促すための取り組みが「暗記」であり、暗記の中でも知識を何も考えずに行うものが「丸暗記」です。

「丸暗記不要」や「丸暗記厳禁」と聞いて「覚えなくてよい」と受け止めているようであれば、日本語の理解力に問題があります。これらは記憶に至る方略の一つを否定し、別の方略を提案しているに過ぎません。

多読のような学習は、暗記によらない記憶の促し方の一つと言えます。ことばに多く触れているうちに語彙や文法の知識が記憶に定着していくことを狙っているわけです。文法を分析的に捉えるのは文やフレーズというかたまりを分割して覚えるための方略です。

分析的理解には、このときに構造を分析するやり方と、意味を分析するやり方があり、後者を「感覚的」と呼ぶこともありますが、感覚をことばで説明した時点でそれも「理屈」になります。どちらも方法的には大差ありません。むしろ、意味の方が目に見えないものを扱うという点で説明が抽象的になることすらあります。

丸暗記は大変そうだと思って分析的な理解を試みたものの、その理屈が自分には難しすぎて丸暗記に戻る人もいます。丸暗記の過程でしくみに気づいて放棄していた分析に戻って確認することだってあります。個々の学習者のなかでも丸暗記したり、構造分析をしたり、意味分析をしたりしながら試行錯誤の中で知識を記憶に送り込んでいくのです。

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