「実用」って、何っすか?
「実用英語」のような「実用」って、何ですかね。「実用英語」を日常英会話のことと思っている人もいますが、日本で暮らす日本語母語話者の多くにとって、日常英会話は実用的ではありません。英語話者と生活や行動をともにする機会がなければ日常英会話の場面に遭遇しないからです。
それよりも、ビジネスなどの特定の場面、改まった場面で英語を使うことが多い、あるいは多くなりそうだから英語を学ぶ人のほうが多いでしょう。これも「実用」の範疇に入ることになりますが、学び方は日常英会話とは異なってきます。タメ口ではないですし、文書作成が必要となる場面もあります。
一方で、ビジネスなどの特定の場面、改まった場面で用いる日本語はどうかと言うと、これは母語話者であっても自然に身につくものではありません。「国語」というの目的の一つはこれに対応することにあります。つまり、教わり、学ぶ知識・技能なのです。この点は英語話者も同様で、むしろ英語圏のほうが、古代ギリシア・ローマからの伝統もあり公共の場での言語技術についてしっかりと教わり、学んでいます。
こうしてみると、「実用英語」の「実用」というものは、それほどカジュアルなものではなさそうだということが見えてきます。修辞や論理、そしてそれを支える文法といったことが学習の射程に入ってきます。英文法の体系的な学習を「受験英語」という檻に閉じ込める傾向があり、それを排除した学習を「実用英語」の学習とみている人もいるようですが、実際は「実用英語」にも文法が必要なのです。このときに「受験英語」の特徴である媒介語として日本語の積極的な活用も、「実用英語」に取り入れていくべきです。もっともこのレベルで日本語が適切に使える母語話者ばかりではないですから、日本語の知識・技術も振り返りながら英語を学んでいくことも、日本の社会人の英語学習として大切だと思うのです。
このような学習の一部を社会人になる前に先取りできるのが「受験英語」だと考えると、「受験英語」も「実用英語」も決して相容れないものではないということになります。