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文法用語の扱い方について、再び

文法の授業で文法を教える場合、文法用語の扱いが問題になります。一般的な結論は漠としたものになりやすいので、ここは「私の場合」をお話ししようと思います。先日の記事とも関連するのでご参照ください。

私の場合、英文法の授業では、日本語の文構造と比較しながら英語の文構造を導入します。このときに使う用語が「動詞」と「名詞」です。この二つの品詞の概念は徐々に精緻なものにしていけばよいと考え、「動詞は動きを表すことば」「名詞はモノやコトを表すことば」としておきます。そのうちに、「動き」ではない「コト」を表す動詞の話をしたり、「コト」を動詞で表す場合と名詞で表す場合の違いについて触れたり、そして「モノ」には「物」と「者」があるという話につないでいったりします。

日本語と英語である程度まで共通に語れる文法用語のうち、基本的なものをまずは使っていくという感じです。「動詞」と「名詞」はその中の代表的なものです。同じ「品詞」の用語でも、「形容詞」と「副詞」は面倒です。面倒ですが、これらを含めた「基本4品詞」の概念は学習者が身につけていると、こちらも授業がやりやすいですし、学習者たちも自分で勉強するときに便利です。日本語で形容詞とは「~い」で言い切ることばと規定されることが多いですが、英語の形容詞と照らし合わせていくとそうもいかないことに気づきます。「~だ」という日本語の形容動詞に対応するのはまだいいです。「~ている」という動詞に対応するものもあります。「~の」に対応するものもあります。

  • a poor man(貧しい人)[英:形容詞→日:形容詞]

  • a happy man(幸せな人)[英:形容詞→日:形容動詞]

  • a fat man(太っている人)[英:形容詞→日:動詞-ている]

  • a local man(地元の人)[英:形容詞→日:名詞+の]

ここは「機能」の用語として日英共通で使いやすい「修飾」という概念を導入しながら、日英語の違いに迫っていきます。また、日本語では形容詞が述語になりますが、英語の形容詞はbeなどの動詞の力を借りなければ述語にはなりません。

  • その人は貧しい。[英:述語→形容詞]

  • The man is poor.[日:述語→be+形容詞]

副詞についても、英語の副詞の多くは日本語では形容詞か形容動詞の連用形です。日本語には名詞だか副詞だかよくわからない語もあります。こうしたことを一つ一つ確認しながら、「基本4品詞」を定着させていくのです。

文法機能の用語のうち、「主語」を「~は」「~が」と定義してしまうと、「は」の特性に学習者が気づくことができにくくなります。ここは「動作主」という用語を使うかどうかはともかく、「動作をする人」という典型的な意味役割を早い段階で示してしまうようにしています。「主語」が「動作をする人」で、「目的語」が「動作の対象」だというとりあえずの対応のなかで、これらをまず理解してもらおうと考えているわけです。「やり手ーやることーやられ手」といったパターンを「名詞+動詞+名詞」で表し、動詞の左側の名詞が主語で右側の名詞が目的語、そしてこの動詞が述語になるので述語動詞といった形で英文のプロトタイプを示すのです。これと日本語の「名詞が+名詞を+動詞」と並べて示し、さらに「名詞を+名詞が+動詞」も可能であることと絡めていくと、英語における語順の重要性にも気づけるというわけです。

ここまで一例を取り上げましたが、このように扱っていくと、自分が教師として使いたい文法用語と、必ずしも使わなくてもよいと感じる文法用語とが、自然に分別されるように思います。この問題はnoteで今後も取り上げていきたいと思います。

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