『ゆっくりとしっかり学ぶ英文法』で学ぶ「基礎」
まずは、こちらの文をご覧ください。
これが正しい文でないと気づく人は多いと思います。しかし、実際にこういう文を作る人は意外に多いのです。
これも正しくないのですが、私の経験ではこちらの文はあまり見かけません。
私は高校生以上の年齢の生徒さんを教えることが多いので、この2つの文はあまり見ませんが、中学生にはこういう文を作る人も多いようです。
1と2は明らかに文構造が違います。学習者が頭の中で英語と日本語の対応を無意識に作り上げようとする傾向があるとすると、1と2が英語で同じ語順になることに気づかない人がいても不思議ではありません。一方、2と3は文構造が似ています。「が」と「は」の違いを意識したことがない人であれば完全に同じ構造に見えてしまいます。
3の英訳です。3がこの日本語に対応することから「が/は=is」とか「とても=very」といった「対応仮説」を学習者は作っていきます。このときに「サッカーが好きだ」をI like soccer.と言うことを知っていればさすがにisは出てこないで、とりあえず冒頭の文にたどり着きます。それすら思い出せなければ、Soccerが文頭に来る文を生み出してしまうこともあるのです。
likeは「好む」という意味だと教えることがありますが、日常的な日本語ではありません。漢文訓読で使う語を欧文訓読に転用して現在に至る、といった感じの語です。このような語は中高生の一般的な言語感覚には馴染みません。(だからこそ、『羅生門』や『山月記』の文体的異質さに国語の授業で触れる必要があるのです。)それよりも心理的な形容詞・形容動詞が英語で「名詞+動詞+名詞」の語順となることが多いこと。その程度を表す表現が右側の名詞、すなわち目的語の後に置かれること。こうしたことに気づかせることの方が大切なのです。
気合いではどうにもならないことになります。躓く人は躓くのです。その躓きをことば基礎の学びにつなげていくことが、ことばの教師に求められているといえます。
『ゆっくりとしっかり学ぶ英文法』で学ぶ「基礎」には、このような知識もあります。
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