言語教師の知識の周辺
今回は言語教師の知識の周辺と、中等教育との関連についてお話しします。
私は高校時代、英語と日本史、地理はそこそこできたものの、その他の科目はあまりできませんでした。国語は中学時代に勉強をどうやってよいのかわからなくなってから低迷していましたし、数学も高2のころにはまったくついて行けなくなっていました。理科は小学校時代に毎月プラネタリウムに通ったり昆虫採集に明け暮れたりしていましたので、中学校の第2分野まではよかったのですが、高校に入って抽象度が上がるにつれて徐々に興味を失っていきました。道具としての数学が使いこなせなかったのも大きかったと思います。
幸い、2教科受験の私立大学に何校か合格し、そのうちの一つに入学しました。しかし、大学に入れば本を読まなければなりませんから、日本語も英語も読解力をフル回転させなければなりません。言語学を学ぶ上で論理学が理解できなければなりません。心理言語学を理解するには脳のしくみについての予備知識が求められます。いずれも高校時代にその基礎を学ぶはずのものですから当然苦労しました。受験科目が多くても少なくても、大学に入ってから求められる知識や学力は学部学科によって決まってくるわけで、手加減はしてくれません。
もちろん、必要なことは必要なときに学べばそれでよいのですが、あらかじめ学べる機会を有効に活用できればそれに超したことがありません。必要性を先取りして興味を持たせることを、教師が生徒に対してできればいいと思います。そこが中等教育でもっとも重要なところではないでしょうか。国語に関して私は高校時代に模試の偏差値で30台をたたき出してから20年掛けて古典教育で学会発表するまでに至りましたが、理科や数学に関してはまだまだ後手に回っています。理科や数学の知識のすべてが言語教師の仕事に必要というわけではありませんが、テクニカルライティングやテクニカルコミュニケーションと呼ばれる領域と一般言語教育が接点を持つこともこれからの時代を見据えれば必要なことだと思います。
私に限らず、さまざまな分野の教師が、自身の幅広い基礎学力の重要性を認識していると思います。その教師の認識が生徒の幅広い知的関心へと誘うことができればいいと思います。