【後編】「都内のマンション価格は上がってるから、最悪でもマイナスはない」のか?
ただいま、「都内のマンション価格は上がってるから、最悪でもマイナスはない」のか?というお題のもと、都内のワンルーム投資についての、全3回(前編・中編・後編)にわたる<連載記事>を書いています。
今回の記事はその【後編】、つまり【最終章】です。
まだ前編・中編を読んでいない方は、ぜひそちらから読んでみてください。
それでは、【後編】スタートです!
■【中編】の振り返り
中編の内容は、ざっくりこんな内容でした。
前編で紹介した、典型的な都内の投資用ワンルームマンションを例にあげ、ざっくり計算。
(都内のマンション価格は上がっているので)仮に6年後に、買ったときよりも高く売れたとしても、15%アップくらいでは全然マイナス。
実際には、いろいろな費用がかかる。
ただ、いろんな費用がかかったとしても、「それでも儲けはでそうだけれどもマイナスになるの?・・・」というところまでご案内しました。
なぜなら、例題だと、仮に6年後に買ったときより15%アップで売れれば、
超単純計算で出した利益が、218万円
それまでにいろいろかかる費用が、68.15万
218万円-68.15万で、差し引き、約150万円残る
という計算が出たからです。
甘めの計算で150万円残るのであれば、厳しめに計算しても100万円くらいは残りそうですもんね。
ということで、この後編では・・・・
それでもなぜマイナスになるのかをキッパリと説明していきます!
■減価償却されてるので、税金が増える
結論としては、これが理由です!
減価償却はざっくりいえば、「時が経てば経つほど、固定資産の価値は減っていくものなので、その固定資産の価値が減った分を(一定の条件で)費用計上しましょう」という会計処理です。
ちなみに、ここで言う「固定資産」は、「建物」をさします(土地は含まれません)。
区分マンションであれば、建物をみんなで分けてるので案分になるんですが、いずれにしろ区分を所有した人は、建物の一部を所有したことになると思ってください。
減価償却は費用なので、家賃収入と相殺できるメリットもあります。
やり方によっては、家賃収入があっても、税務上の利益は少なかったりマイナスになったりするので、一定期間は良いものですが・・・売却時は、逆に厄介なものです。
減価償却された費用分、建物の価値(原価)が減ったことになるので、いつか売ったときには、
原価が減ってる
↓↓
売却時の利益が増える
↓↓
税金が増える!
ということになるからです。
そうです。
税金の支払いまで考えれば、手残りはマイナスなんです!
■いくら減価償却されてるの?
これが気になるところですよね。
減価償却を計算するためには、その資産(建物)を買ったときの価値を調べることから始まるんですが、今から、
「買ったときの建物の価値を調べて、それをベースに、いくら減価償却されたかを計算する」
という流れで説明していきます。
●買ったときの建物の価値は?
例題の区分マンションの値段は、2820万円でした。
この値段には、「土地」と「建物」が含まれています。このうちいくらが「建物」の分なのかというと・・・
結論としては、
広く見て、1692万円~2256万円の間
です。
理由は簡単で、都内の区分マンションの場合、建物の価値はほとんどは7割前後と言われているからです。
2820万円の6割が1692万円、8割が2256万円です。
かなりのバッファがあるので、さすがにこの中には納まっていると考えてください。
●それを何年で減価償却するの?
つぎに、この資産が何年かけて0円の価値になるのか、つまり減価償却期間を出します。
結論から言うと、15.8年です。
例題の建物はRC構造なわけですが、RC物件の(税務上の)法定耐用年数は47年という決まりがあります。
そして、法定耐用年数(47年)が経っていない中古のRC物件の場合、減価償却の期間はこの式で決まります。
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
こちらを今回の物件にあてはめると、築39年なので、このようになります。
(47年-39年)+39年×20%=15.8年
※この式は別に覚えなくていいので、せめて不動産投資をする際はその都度、減価償却期間をしらべましょう。
15.8年で、建物の価値が(税務上は)0円になるっていうことです。
逆に言えば・・・・
建物の金額をこの年数で割れば、1年あたりいくら減価償却されるのかわかるということです!
●まる5年でいくら減価償却されるの?
今回の例題では、まる5年が結果して6年目になったタイミングで売ったと仮定して収支を計算しましたね。
なので、過去まる5年でいくら減価償却されたのか、見ていきましょう。
建物の価値が、1692万円だったら・・・
1年あたりの減価償却は、1692万円÷15.8年≒107万円なので、
107万円×5年=535万円です。
建物の価値が、2256万円だったら・・・
1年あたりの減価償却は、2256万円÷15.8年≒143万円なので、
143万円×5年=715万円です。
つまり、いくら減価償却されたのかというと
・
・
・
535万円~715万円の間ということです!
■そうすると、税金はいくら?
税金を知るために、まずは利益を調べましょう。
「利益」=「売上」-「原価」ですよね。
なので、いまから「売上」と「原価」からそれぞれ確認する流れで説明します。
●「売上(売却金額)」について
「売上」つまり売却金額は、前編・中編で述べています。
今回の記事では、6年目に物件価格が15%アップで売れたと仮定しましたので、その金額は、2820万円×1.15=3243万円。
コチラです!
●「原価」について
このマンションの価格は、2820万円でした。
仮定の通りに売れば、このマンションに5年間の減価償却がかかるので、売る時の「原価」は、
2820万円-(5年間の減価償却費)
ということになりますよね。
5年間の減価償却費は535万円~715万円と先ほど出しましたので、、、売る時の「原価」は、
・最小で、2820万円-715万円=2105万円
・最大で、2820万円-535万円=2285万円
ということになります。
●「利益」はいくら?
上で述べた「売上」と「原価」を元にすると、単純計算で、税務上の「利益」はこんな感じです。(あくまで税金を計算する上での利益なので、ほんとに儲かってるかどうかは別の問題ですよ。)
最小の利益・・・
3243万円(売上)-2285万円(原価)=958万円
最大の利益・・・
3243万円(売上)-2105万円(原価)=1138万円
これを基に税金を計算をしたいわけですが・・・・
買う時も売る時も仲介手数料がかかってますので、こちらは費用としてみてあげましょう。
両方あわせて205万円前後ですので、実際の利益はこんな感じに修正されます。
最小の利益・・・
958万円-205万円=753万円
最大の利益・・・
1138万円-205万円=933万円
●それで、税金は・・・?
前編・中編で、「6年目以降に売れば、売却にかかる税金はだいたい20%です」というお話をさせていただきました。
つまり税金は・・・出ました!
こちら↓↓です。
最小で・・・
753万円×20%=150万円
最大で・・・
933万円×20%=186万円
■トータルでマイナスだよね
前編・中編・そして後編のここまでをじっくりと読んでもらえれば、どう転んでもマイナスになることがわかると思います。
超単純計算で出した利益が、218万円
それまでにいろいろかかる費用が、最低でも68.15万
つまり、めっちゃくちゃ楽観視して出した利益ですら、218万円-68.15万円で、約150万円だからです。
そこに150万円~186万円の税金がくれば、最後はマイナスになります。
確かに、私のシミュレーションもざっくりなものです。
また実際のところは、多少は何かしら良い条件が付いてきた可能性もなくはないでしょう。
でも、私のシミュレーションはそもそも、
「修繕などの余計な出費は無かった」
「めちゃくちゃすぐに入居者がついた」
「修繕積立金も5年間変わらなかった」
などが重なった、ラッキーな場合で計算しています。
修繕積立金なんて、建物を維持しようと思ったら、普通は上がる一方ですからね。
そして、「税金が一番安いパターンですら、最後はトントンの結果だった」ということも、ここで強調しておきましょう。
その物件に対して、なにか1つや2つ「実際はもうちょい良い条件だった」みたいな例外があったところで・・・・
これが良い投資案件に様変わりするコトなんて、あるんでしょうか?
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無いです笑!
■投資用ワンルームにどこまでリスク負うの・・・
さきほどのように、収支が最後はマイナスになる理由を言うと、
「てか、もっと値上がるから!」
という意見がちらほら出てきます。20%上がれば、プラスになりますからね。
確かに都内のマンション価格は上がっていて、20%アップくらいなら現実的と思う人もいるかもしれませんが、これは自分が住むためのマンションではありません。
あくまで投資用の狭いワンルームマンションのお話であることも忘れないでください。
仮にですが、都内の平均で20%値上がったところで、素人も同様に、投資用のワンルームを20%アップで売れるのかと言うと、そんな甘くはないということです。(保証してくれるならいいですけどね!)
加えてもう1点、お伝えしたいことが。
実質、値上がりに期待するしか儲けられない投資用ワンルームのために・・・
それなりの頭金も払って・・・
うん千万のローン(借金)をホントにしますか?
ということです。
今のご時世だと、始めて不動産投資をする場合、2~3割の頭金を求められます。
2000万の物件なら、400万~600万の頭金で、あとは借金です。
3000万の物件なら、600万~900万の頭金で、あとは借金です。
1000万~2000万以上の借金をして、何年もかけて、値上がりに期待して、いくらの儲けを狙ってるんでしょうか?
と思ってしまう投資家は、私だけではないはず。
これについても是非ぜひ、落ち着いて計算してほしいなと思います。
■それでも、引っかかってしまう
前編・中編・後編とお読みいただき、ありがとうございました!
投資初心者に話が回ってくるような都内の投資用ワンルーム案件は、ほぼほぼマイナスになるでしょう。(前にも書きましたが、これは私だけが言っていることではありません。)
なので、注意点がわかったり、そこまでリスクを負ってやるものなのか考えるきっかけになってくれれば良いなあと思っています。
しかし、
残念ですが・・・・
それでも多くの人が引っかかります。
頭の良い、エリートな人でも全然引っかかります。
不動産投資は本来、ミドルリスクでできて、天才でなくても儲けられる、素晴らしい投資なのです。
せっかく不動産投資に興味を持ったのであれば、投資をする前に色々と周りの意見を聞いたりして、冷静な判断をしてほしいなと願ってやみません。
■追伸:
『はじめての不動産投資をしたい!』という方に、少人数のオンラインセミナーを開いています。
前半はまさに今回の記事を画面で解説していて、なぜそれでも引っかかってしまうのか、記事で言えないことも含めて解説します。
不動産投資について動くきっかけが見つかれば良いなと思って実施しているセミナーでして、商品やサービスをご案内するものではないので、ご安心ください。
参加ご希望の方は、フォームから属性をお選びいただき、第1希望と第2希望の日時を選んでください。
※時間は、19時〜、もしくは20時〜の2択とさせていただいております。
※もともと少人数セミナーなので、ご参加1人でも実施します。