お墓が全自動呪いビーム発射装置になるところだった
怪談番組でやっていたと記憶していますが、裏側の文字を読むと呪われてしまうお墓を取り上げていたのです。正確には、いわくつきのお墓をレポーターが取材していたら裏側にも文字が書かれているのを発見、しっかり音読したあとで近くにいた人へ取材をすると「裏側の文字を読むと呪われるという噂があって」なとど余計な話をしてきたためレポーターは顔面蒼白、という流れでした。怪談にありがちな、後味の悪い終わり方と言えましょう。
当時はどんなものにでも大体はビビれる少年だった私、この番組にもビビり倒していましたが、大人になっていろいろと余裕ができてきますと、当時とは違った見方で考えられるようになってきました。
いわくつきのお墓、その背後には生け垣がありました。向こう側には一般道が通っている。生け垣があるからこそ、一般道の歩く人はお墓の裏側を見ずに済んでいました。しかし、生け垣だって枯れたり倒れたり、暴走トラックが突っ込んでなぎ倒されたりする可能性がある。何らかのアクシデントで墓地の生け垣がなくなり、裏側の文字が道行く人の目にさらされたらどうなるか。
当然、何人かにひとりは裏側の文字を何気なく読んでしまうでしょう。そして呪いゲット。呪われるとどうなるのか、番組では語られていませんでしたが、ただでは済まない雰囲気ではありました。生け垣がなくなっただけで、なんてはた迷惑な。自分から全裸で外を歩いているくせして「見たなこの変態」と怒鳴り出すようなものです。
生け垣があったからこそ、いわくつきのお墓は全自動呪いビーム発射装置にならなくて済みました。別に生け垣の作者もそんなつもりで作ったわけじゃないでしょうが、結果的にいい仕事をしましたね、と肩でも揉んで差し上げたい気分です。