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宅配業者察知能力
あんまりビックリしたくないんです。そんな私にとってはインターホンも大敵です。室内にそこそこデカい音でピンポンと鳴らせるボタンを知らない人が何の前触れもなく押す。恐怖でしかありません。チキンの中のチキンを自負する私には、それだけでビックリしてしまいます。
じゃあ、来る時間帯が分かっていれば大丈夫かというと、それはそれでハラハラするんです。例えば、宅配業者だと往々にして時間指定というものがあります。便利なシステムではあるんですが、「午後2時から午後4時までの間に配達予定」ですと、その時間帯のどこかでいきなりピンポンされるわけで、午後2時を過ぎた辺りから何だか落ち着かなくなってくる。そして、ピンポンをすればちゃんとビックリする。どうすればいいんですか、このチキン野郎。混乱のあまり、私は自分に罵倒してしまいそうになります。
ビックリしたくない私は、自然と対策を練るようになりました。宅配業者がやってくる時間帯になると私は音楽を聴くのをやめ、エアコンも換気扇も止めて静寂の中で過ごします。その状況だと、宅配業者のトラックの停車する音が聞こえることに気づいたんです。当然、荷台のドアをバンッと閉める音も聞こえる。慣れると宅配業者の足音も判別できるようになりました。荷物を持って歩いているからか、ちょっと音が独特なんです。
音で宅配業者を察知する試みが最初からうまくいったわけではございません。ただ、宅配業者からインターホンでビックリさせられる日々を繰り返した結果、彼らがインターホンを鳴らす5秒前にはドアの覗き穴から外の様子をうかがえるようになりました。インターホンのボタンを押す宅配業者の姿が見えれば、ビックリすることもありません。あとはピンポンという音を聞いたのち、あたかも今気づいたと言わんばかりの返事をすればいいだけです。
個人的にはちょっと離れたところから相手を察知するところが忍者っぽくてなんかいいなと思ってたんです。しかし、それをウッカリ友人に言ったら、ちゃんと鼻で笑われました。そりゃあそうです。とてもじゃないが大人の言動ではない。小6でギリ許されるレベルです。
ですが、どういうわけか私は食い下がってしまいました。
「でも、室内から外の様子が分かるのってすごい気がするじゃん」
「それ、壁が薄いだけだろ」
ぐうの音も出ない的確な反論です。事実なだけに強烈な一撃でございました。
次に引っ越す時は私の忍者能力が退化するような家を選びたいと思います。