言葉の壁があろうがなかろうがうひょー
いくつもの言語があると生じてくるのが、変な風に聞こえる外国語でございます。それは人の名前にも及びまして、有名どころですとフィンランドに多いアホさんやパンツさんでございます。かつてアイルランドではアハーンさんが同国首相になるなど、国際社会に打って出る方も当然ながらいらっしゃいます。
時には、言語を跨いだら放送禁止用語になってしまう場合もございまして、それゆえに国を跨いだ途端、名前の変更を余儀なくされる場合もあるようです。
もう使いまくっているため、何度言っても何とも思わない単語は人それぞれ大量にあると思いますけれども、そのどれかが別の言語、別の国では変な風に聞こえる可能性が充分にあるわけです。自分の名前がとある国では放送禁止レベルだった場合、やっぱりそれは大変ではございますけれども、でもそこまで深刻でない、笑う余地があるレベルのものもたくさんあるのは事実です。
その中には、じわじわと日本語に潜り込んでいるものもございます。例えば、海底の地形に海山という、文字通り海の中にある山のようなものがございます。中でも山頂に当たる部分が平らな地形を平頂海山とか卓上海山とか呼びますが、フランス語読みされることも結構ありまして、それですと「ギヨー」と呼びます。
「ギュヨー」とか「ギョー」とか呼ぶ場合もあるようですが、いずれにしろその手の本を読んでいる時にいきなり出てくると面食らう名前な点に違いはございません。海底の話で突然、出てくるギヨー。由来はスイス系アメリカ人のギヨーさんから来ているとのことで、「フランスどこ行った」との視点から見ても高ポイントです。
もっと日常に入り込んでいるものも当然ながらございます。代表的なものは「乳清」です。牛乳から脂肪分などを取り除いた液体でございますけれども、この乳清、しばしば英語風に「ホエー」と呼ばれます。ちなみに、英語圏では「ウェイ」などと発音するようですが、これまたいずれにしろ面食らう名前です。
ギヨーとかホエーとか、よく海を越えてわざわざ日本までやって来てくれたと思わざるを得ない、脱力感漂う名前です。国際化が進む昨今、言語はひとつにまとめた方がいいんじゃないかという主張をたまに聞きますけれども、こういう面白さが失われるかと思うと、言語統一はちょっと待ってほしいと思わざるを得ません。
とも思ったんですけれども、統一したとしてもです。同じ言語でも妙に聞こえる場合はございまして、例えば日本語ですと「雨氷」です。雨が地面や木に付着して凍る透明な氷を指すんですけれども、漢字で見るならともかく、耳で聞いたら「何をはしゃいでんだこいつ」と一瞬でも思ってしまいます。
同じ言語の中でもそんな魅力的な響きの単語と出会う可能性があると考えると、仮に物凄い暴君が地球上に現れて、全人類にひとつの言語だけ使うよう強いたとしても、妙な響きの言葉で半笑いできる幸せは失われないことになります。それなら安心です。
何でどんな安心をしているんだと言わざるを得ませんが。
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