変化なんてみんなしてる
「赤の女王仮説」という考え方があります。主に生き物の進化で言われている仮説でございまして、「ある種類の生き物が生き残っていくためには常に進化していかなければいけない」というものでございます。「赤の女王」は「鏡の国のアリス」に登場するキャラクターでございまして、「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」というセリフが生き物の進化でも言えるんじゃないか、ということから用いられています。
生き残るために変化する。どちらかと言うと、肯定的にとらえられがちな考え方です。事実、生き物の進化を引き合いに出して、「変化し続けているから俺たちはうまくいってんだぜ」と主張する方をたまに見かけます。私も「そうだよなあ」と思う。
しかし、こういう考え方もできると思います。「みんないつも変化してるじゃん」と。何なら、そのままでいつづける方が難しいんじゃないかと。
「成功するには変化が大切」とか「今の自分にあぐらをかかず変化していかねば」とか、その手の主張は「自発的にやっていかないと変化しない」という前提があると思うんです。でも、そんな主張をする人だって、生まれた時から現在に至るまで全く同じ姿ではありません。生きた化石として有名なシーラカンスはその姿が長い間、ほとんど進化していないと言われていますが、「ほとんど進化していない」ということは、ちょっとは進化していることでもあります。進化は変化ですから、シーラカンスですら変化しているというか、変化しちゃってると言える。
そもそも変化すればいいとは限りません。「現状を打破するために不思議な踊りの練習を始めた」と言われたら、やっぱり友人として止めざるを得ないでしょう。「そんな踊りで何を打破できるのか」と、深夜のファミレスに呼び出して、朝まで問い詰めてしまいそうです。
変化自体はみんなしている。意志と関係なく勝手に変化している場合もある。肝心なのは「どの変化がいいか」という点でございますけれども、時と場合によって違ってくるでしょう。「こう変化すればいい」と教えるのは、実は大変なんだと思います。
とりあえず、今日も明日もみんなちょっとずつ変化していくと思います。変化仲間としてこれからもよろしくお願いいたします。