静かに密かにゆんゆんを待つ人々
「待つ」という行為は一見何もしてないようにも見え、ただ過ぎ去る時間を呆然と眺めているかのようでもあるためか、ネガティブなイメージもそれなりにございます。特に「何もせずに待つ」となると耐え難い人もいらっしゃるようで、つい動いてしまったりする。
しかし、自分ではどうにもならないことに対しては待つより他なかったりします。待つのが唯一の手段であり、最善の選択になるわけですね。だから、今日もどこかで誰かが何かを待っているんです。
例えば、清陵情報高等学校という県立高校があります。この学校の特徴はいろいろございますが、私が見た限り最も注目されているのは校歌です。
「電波ゆんゆん」という、通常ならば校歌に使われることなどない、いや日常生活でもまず現れない文字列がさも当然であるかのように入っているんです。
ゆんゆんは校歌なんですから当然歌われるわけです。生徒や教職員は歌詞が脳内にセットされてるはず。校歌は普段、学校関係者の間でのみ使われるものです。ネットで検索すれば大概の学校は校歌を一般公開していますけれども、縁もゆかりもない学校の校歌を知ろうだなんて、生粋の校歌マニアでもない限りまずならない。だから、校歌は基本、学校の中でグルグルしている。
ただし、たまに校歌が校外へ出てくることがございます。それが高校野球です。甲子園で勝利すればテレビなどを通して全国に校歌が流れますし、近年では全国大会に出場さえすれば校歌が紹介される。
世の中には長い校歌や短い校歌が時折ネタにされていますし、済美高校が初めて甲子園に出場した時は、その独特な歌詞が注目されました。
日本一長いとされる諏訪清陵高等学校校歌
一番が最も長いとされる藤枝明誠校歌
日本一短いとされる上宮太子高等学校校歌
話題になった済美学園歌
済美学園歌の歌詞を見た一部の人は、きっとこう思ったでしょう。「確かに校歌としては珍しい表現だ。だが、ゆんゆんのほうがゆんゆんだろう」と。
割と誰でも動画の投稿および視聴ができるようになった昨今、YouTubeでゆんゆん校歌が簡単に見られるようになりました。軽く検索をかければ、高校野球の地方大会で校歌が歌われた動画なんかがすぐに出てきます。
ただし、動画が話題になってるかというと、そうでもないようです。やはり、甲子園のような圧倒的注目を浴びる場面でゆんゆんしないと校歌の知名度は上がらないようです。せっかく高校の公式サイトに「ゆんゆんニュース」まであるのに。
上に載せた動画のコメントを見ていると、清陵情報高校野球部は全国大会への出場経験があるようですが、当時の規定により、甲子園で校歌を歌った経験は未だないようです。
そんなコメントをしてる時点で、甲子園でゆんゆん歌われる日を待っていると言ってるようなものです。気持ちはよく分かります。勝つとか負けるとか、知名度がどうなるとか、そんなことに関係なく、甲子園でゆんゆんと歌われる事実だけで最高じゃないですか。
清陵情報高校のある福島県には、他の都道府県と同様に野球強豪校が存在し、全国への切符はそう簡単には手に入りません。でも、いつの日か、甲子園でゆんゆん歌われる日を密かに待っている人がいるのはどうやら事実のようです。