幽霊をどう怖がるか
島田秀平さんはもともと幼馴染と一緒にお笑いコンビ「号泣」を結成、言葉をパズルのように扱うネタで人気を博しましたが、諸事情により解散をしてしまいます。しかし、そこから手相占いでブレイクしたのをきっかけに、怪談やパワースポットなどスピリチュアルで超自然的な方面でご活躍されています。最近では号泣の再結成でお笑い方面でもちょっと話題になりました。
今回はそんな島田さんがABEMAの「2分59秒」という番組に出演した動画からご紹介します。この番組はゲストの方が2分59秒で何らかの主張をするという内容でございまして、一部がYouTubeでも見られるようになっております。島田さんはご自身の得意ジャンルである怪談で2分59秒に挑みました。その動画が以下の通りです。
話を要約しますと「幽霊ってみんな気づいてないだけで、実は生きてる人間と同じくらいハッキリ見えてるんじゃない?」という主張です。この話が事実かどうかとか、信じるか信じないかとかはともかく、「悪魔の証明」的にはよくできた理屈だと思いました。悪魔の証明、すなわち「存在しないことの証明が不可能か困難である」ということですね。
幽霊は悪魔の証明の代表格と言ってもいいでしょう。幽霊が存在しないことを示すには、全宇宙を探し回ってでも幽霊が見つからないという事実を見つけ出す必要がありますが、それをできる人はいないでしょう。幽霊が存在しないと言い切るのが困難だから、未だに幽霊はいる派といない派に分かれる。
幽霊の存在を示すには実物を持ってくればいいのですが、これもまた難しい。何しろ、人類は幽霊は見える人と見えない人に二分されているため、見えない人の前に幽霊をたくさん連れてきて「こちらが幽霊の皆さんです」と紹介したところで「は?」の一言で片づけられてしまうんです。
島田さんがうまいのはここに新しい考えを入れ込んだ点なんです。「実はみんな幽霊が見えてたんですよ」と言ってしまう。みんな生活していれば、多かれ少なかれ知らない人を視界にとらえるでしょう。しかし、視界に入った全ての人を幽霊かどうか確認することは非常に困難です。幽霊の「悪魔の証明」的な要素を残しながら、「俺、幽霊見えない人類だし」という方にも「いや、見えてますよ?」揺さぶりをかけることができるんです。「今日見た人の中に幽霊がいたのか?」とちょっとでも思ってくれる可能性がある。
何だったら、私が以前に見かけた、ガード下で叫びながら殴り合う男女も実は幽霊だったのかもしれないんです。見た限りバトル内容は完全に互角で、時々がっぷり四つに組んで投げたり投げられたりしていました。叫び声はガード下で反響しまくっていましたし、ふたりを遠巻きにおっかなびっくり見ている人が結構いましたけれども、本当の幽霊は我々の目に姿がハッキリ見えるだけでなく、我々が聞き取れる声で話している可能性がある。つまり、あのふたりも幽霊だったかもしれないわけです。
私は気が小さいので幽霊はもちろん怖いですし、ガード下で喧嘩するタイプの人間も当然ながら怖いです。ただ、このふたつが組み合わさってしまうと困ってしまうんです。「どう怖がればいいんだ」と。
確かに幽霊は怖いですけれども、それは身体が透けていたり、恨みがましい表情だったり、とりついて呪ってきたりするところが怖いんです。ガード下で「うんわかぬらばら!」と叫びながら相手幽霊の顔面に右ストレートを入れる幽霊はイメージと違うというか、想定外すぎて怖さより驚きが勝ってしまうんです。
逆にガード下で喧嘩を繰り広げる人間の怖さは、場合によってはこちらにとばっちりが来るかもしれないという点だったり、喧嘩してるどちらかが深刻な怪我を負ってしまうかもしれないという点だったり、とにかく現実的なものでございますが、幽霊となりますと仮に殴りかかって来られてもこの世の者じゃございませんから腕がこちらに当たらないと思うんですよね。喧嘩してるふたりの怪我に関しても同様です。幽霊になってる時点で肉体はないはずですから、打撲とかスリ傷とかとかどうでもいい次元に達しており、現実的な怖さがなくなってしまってるんです。
「幽霊、実は見えてる説」の思わぬ弱点を見つけた気がしましたが、まあ気のせいです。
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