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暴風雨をかいくぐって水族館へ

 最近はどこもそんなことをしなくなりましたが、一時期は感染症のリスクを防ぐためか動物園、水族館、美術館、博物館などの施設では事前予約制となっていました。このような施設が割と好きな私は、パソコンやスマートフォンからモリモリ予約をしていました。

 直前でなければ大体は希望の日時に予約ができていたんですけれども、ごくまれに予約開始と同時に枠が埋まってしまうという、プラチナチケット並みの日がございます。特定の施設での入場料が無料となる都民の日がその典型です。

 ある年、私は都民の日に上野動物園の予約を狙っていたんですが、もう一瞬で予約枠が埋まってしまいました。そこで、第2希望と言っては失礼な話ですが、すぐに私、葛西臨海水族園に切り替えまして、こちらの方はどうにか朝一の時間帯に予約することができました。動物園も水族館も好きな私としては、ひとまず安堵した次第です。

 しかし、当日の昼には関東に台風が最も接近するとの予報が。外を歩き回るのがメインの上野動物園とは異なり、葛西臨海水族園は室内メインです。つまり、上野動物園だったらずぶ濡れ確定で何なら怪我のひとつやふたつゲットする状況ですが、葛西臨海水族園ならば少なくとも現地まで辿り着ければ何とかなりそうな台風スケジュールだったんです。閉園時刻まで粘れば台風が通り過ぎているかもしれませんし。

 ですから私、台風が来ているにもかかわらず葛西臨海水族園に行くべきか迷ってしまいました。でもまあ、せっかく予約したし、休みも取ったし、という貧乏性的な理由で行くことにしました。

 台風で電車が止まっていれば途中で諦めていたでしょうけれども、JRを始めとする各鉄道会社はバリバリ輸送活動をしておりましたので、結局朝一に葛西臨海水族園まで辿り着いてしまいました。台風が近づいているから臨時休業を覚悟していたんですが、強くなりつつある暴風雨をかいくぐって入口まで辿り着くと、レインコートを着た職員の方々が笑顔で迎えてくださいました。恐らく、互いに「こんな状況で何してんだ」と思ったことでしょう。いや本当に、自分でも訳の分からないことをしているなあと思いました。

 さすがに暴風雨がヤバすぎるということで、ペンギンを始めとする外の展示には行けませんでしたが、一旦室内に入ってしまえば建物はデカい上に頑丈ですから、もう本当にいつもの葛西臨海水族園と全然変わりありませんでした。魚はのんびり泳いでいましたし、クラゲはもっとのんびりと水中を浮遊しています。さすがに都民の日の割には空いていましたけれども、私以外にも無駄に命知らずな客がそれなりにいましたし、何なら小さなお子さんを連れたご家族も普通にいらっしゃいました。

 特に何事もなく閉館時間まで様々な生物を満喫した私にとって最後の難関は葛西臨海水族園から駅までの歩いて数分の道のりです。台風が通り過ぎたとは言え、まだまだ空は曇っていますし暴風雨は強めです。傘が一瞬だけひっくり返りはしましたが、無事に駅へ辿り着きまして、自宅に帰った頃にはスッカリ天候は落ち着いていました。

 いま振り返っても、タダで生物を見るのに何をそんな必死になっていたのかよく分かりません。多分、もうそんな危ない橋は渡らないと思います。

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