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特殊な室内干し

 人間はしばしば錯覚を起こします。別段、心身に異常がないにもかかわらず、実際には見えないはずのものが見えてしまったり、逆に実際にあるものが見えなかったりする。

 勘違いも錯覚に近いものがあります。場合によっては錯覚と同じものになっているとさえ思っています。ちなみに、私はよく勘違いします。勘違いの名手と言ってもいい。つまり、錯覚の名手でもあるんです。

 そんな私、気になっている家があるんです。何てことのない普通の2階建て民家なんですけれども、角の部屋でいつも洗濯物を干しているんです。晴れでも雨でも窓は締め切っていて、タオルやシャツなんかが干してある。完全な室内干しでございます。

 自宅の2階で室内干ししている程度だったら、私も気にならなかったと思うんです。しかし、洗濯物がはためいているなら話は別です。しかも結構激しめなんです。無風の日も強風の日も、同じようにバタバタとはためいている。洗濯ばさみをちぎって飛んでいくんじゃないかと思えるほどなんです。

 何らかの装置で風を当て、ちょっとでも乾燥を早めているのだと思います。いつも同じくらいバタバタしているので、扇風機なのか送風機なのか、とにかく機械を使って全自動に風を当てている。

 別に自分の洗濯物を自宅でどう乾燥させようが自由なわけです。他人ひと様に迷惑をかけているわけじゃなし、誰かにどうこう言われる筋合いはない。でも、無風の日にバタバタと激しくはためく洗濯物を見ると、訳が分からなくなる自分がいるわけです。風がない穏やかな日のはずなのに、物凄く風が吹いている気がしてしまう。そして、帽子を手で押さえて歩き始め、しばらく経ってから無風だと気づく。明らかに錯覚を起こしています。

 もちろん、あの洗濯物は室内で風に当てられているんだと頭では分かっているんです。そう心を強く持っても、無風の中ではためく洗濯物を見ていると、なんか混乱するんです。頭の中がもぞもぞする。どうにかしなければと思えば思うほど、気になってしまう。

 そもそもです。どんな晴れた日でも室内で窓を閉め切り、風をバンバン当てる乾燥させる方法は、よく使われる手段なのでしょうか。何十年と生きてきた私が初めて見るんですから、王道の乾燥方法ではなさそうです。特殊だとしたら、どれくらい特殊なのでしょうか。そういうところも私を一層の混乱に陥れます。

 というわけで、ちょっと特殊な干し方をしてるよという方がいらっしゃいましたら、私がいつでも混乱しに参ります。

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