トガった格好を思い留まる
髪を切るペースが年3回なんです。4か月に1回。結構な長さからバッサリいく。これを繰り返しています。短い時は短い時で、長い時は長い時で楽しみたいと思っているうち、こんなペースになりました。
人は好きな格好をする権利があるとは思うんです。ただ、物事には限度がある。「俺は自由だ」と叫びながら全裸で街中を歩けばすぐに逮捕されてしまいます。そこまで極端な事例は滅多にありませんが、ちょっとトガった格好をする方はたまに見ます。一般的な格好から外れた方はどうしたって出てくる。
ところで、トガった格好の方は、人に話しかけられにくい傾向があるようです。珍しい外見が警戒心を抱かせるのかもしれない。例えば、髪の長さです。現代日本では、男性の髪は短い人が圧倒的です。肩につくレベルだってそんなにいない。だからなのか、長い髪の男性は、どれだけ優しい心の持ち主だったとしても、その外見に警戒心を抱かせる。
私はどちらかと申しますと知らない人に道を聞かれますし、写真を撮ってくれと頼まれます。理由は分かりませんが、トガった格好をしていないからかもしれません。日本語をしゃべれない方にも聞かれますので、ワールドワイドに丸い格好なんだと思います。お陰で職務質問をされたことはありません。ただ、長年にわたって道を聞かれ、写真を撮ってきますと、だんだん分かってくるんです。「髪の短い時の方が話しかけられやすいな」と。
私だって多少は人の役に立てればと思っていますから、道を聞かれたら答えますし、写真だって撮ります。ただ、写真はともかく、道を聞かれるのはちょっとした重圧もあります。正しく教えられるかどうか不安なのはもちろんなんですが、初めて訪れた場所でも平気で道を聞かれるのが困るんです。土地勘ゼロのため、全然お役に立てない。
最近はスマートフォンで調べられるので少しはマシになりましたけれども、初めてのコースをジョギングしている時に地元のローカル情報を尋ねられた時は参りました。「僕、遠くから走って来てるんでこの辺のこと分かんないんすよ」とかよく分からない言い訳で凌ぎましたけれども、申し訳ない気持ちになりました。
そんな事態になるのが、いつも髪を切ったばかりの時だったんです。髪が長い時はあまり聞かれない。多分、格好がちょっとトガってきたんだと思います。いつからか「これをうまく使えないか」と思うようになりました。初めての場所で道を聞かれ、「分かりません」と答えてへこむ事態を防げるのではないかと。
どうにかする必要があるのは、もちろん短髪時代です。やはりカツラの出番でしょう。となると、問題は髪の長さをどれくらいにするかです。ほぼ聞かれないとは言え、髪を4ヶ月伸ばした状態でもまれに聞かれる。聞かれない率を100%に近づけるためには、もっと長髪にする必要があるでしょう。腰のあたりまで伸ばしたカツラをかぶって外出するわけです。
まあ、そこまでトガった格好をしていると、そろそろ職務質問の影が迫ってくる思います。その目的にその手段はないだろう。ということになりまして、今日もカツラをかぶらず、たまに道案内をする生活を甘んじて受け入れています。