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日本副会長協会規則
世の中には短期的思考が得意な人と長期的思考が得意な人がいらっしゃいます。
短期的思考の人は即断即決が得意で、次々と決断したり、パッパとアイデアを思いついたりします。個人的には行動的な人が多い印象で、早く動くのに適しています。しかし、長期的に何かをするのは苦手で、最初は良かったのに途中で行き詰ったり、もしくは飽きて別のことをしていたりする傾向があります。
一方、長期的思考の人は長いスパンで戦略を立てるのが得意で、実績をコツコツと積み重ねて大きなことをやり遂げたりします。個人的には物静かでマイペースな人が多い印象で、何かを追求するのに適しています。しかり、短い時間で決断するのは苦手で、急かされると失敗しやすくなる傾向があります。
職場の同僚に短期的思考の権化みたいな人がいます。仮にここでは西岡さんとしておきますけれども、西岡さんは即断即決が得意で短時間にいくつものアイデアを出せる反面、すぐに飽きてしまう人でもあります。
ある日の昼休み、私は西岡さんと雑談をしておりました。
「日本にはない協会はないと言うほどたくさんの協会があるんだよ」
確かに、道を歩けば協会にぶつかるレベルで様々な協会が存在しています。しかし、そう言われると存在しない協会を探したくなってしまうのが人というものです。私は言いました。
「じゃあ、日本副会長協会もあるのかよ」
グーグルで検索してみましたところ、少なくとも現段階では存在していないようです。この日本のありとあらゆる協会の副会長を集めた「日本副会長協会」を西岡さんは気に入ったようで、いらなくなった書類の裏側に何か書き始めました。
「日本副会長協会規則」
私は「何書いてんだよ」と言おうとしましたが、西岡さんは何か思いつくとこうやって書類の裏なんかにアイデアを出せるだけ出していく人だと思い出しました。そうやって仕事の企画から場を湧かせる漫談まで作り上げてきたんです。
西岡さんはあっという間に6つの規則を書きあげました。
日本副会長協会規則
1.会長に昇格する若しくは副会長の座から脱落したら退会とする
2.副会長としての苦労を皆で分かち合うべし
3.副会長としての処世術を皆で話し合うべし
4.フルート、サックス、口笛、廊下、窓など「吹く会長」または「拭く会長」の存在は認めないとする
5.常時会長は不在とする
6.公式マスコットは便所でお尻を拭く会長こと三遊亭小遊三とする
ここまで書いたところで昼休みが終わってしまったので、私たちは業務へと戻りました。以降、西岡さんと様々な雑談を交わしてきましたが、日本副会長協会について話したことは一度たりともありません。西岡さんに至っては、二度とするつもりはないでしょう。規則を書き終えた時点で恐らく「日本副会長協会」に飽きてしまっているでしょうから。
ただ、私はこの「日本副会長協会規則」のあまりの馬鹿馬鹿しさに、思わずスマホで撮影していたんです。その画像を数年ぶりに発見したため、こうやって書いているわけなんですけれども、ひとつ気になる点があるんです。規則の第6条にあたる、公式マスコットについてです。
一方的にマスコットに任命した三遊亭小遊三さんは笑点でもお馴染みの落語家でございまして、所属する落語芸術協会の副会長に就任してからというもの、あちらこちらで「便所でお尻を拭く会長」というギャグを披露しておりました。しかし、ウィキペディアによりますと小遊三さんが副会長だったのは2005年1月から2019年6月まででございまして、今現在は副会長ではございません。規則を作った時は副会長だったのに、時の流れとは残酷なものです。
小遊三さんは本当に副会長だったから「便所でお尻を拭く会長」でも認められていたのに、これでは第1条の「副会長の座から脱落したら退会とする」や第4条の「『拭く会長』の存在は認めないとする」に抵触してしまいます。これでは小遊三さんを公式マスコットから外さざるを得ない。
いや、あくまで会員資格がないだけであり、マスコットならば問題ないという考え方もできます。一種の広告塔とでも申しましょうか。それならば、今後も小遊三さんをマスコットとしてご参加いただける。
日本副会長協会を作りたいと本気で思った方、宜しければこの協会規則をたたき台としてご利用くださいませ。