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お笑い芸人の成功に学歴は必要か

 毎年4月になると、国公立大学芸人を更新しています。今年も更新いたしました。

 なぜ4月かと申しますと、多くの場合、4月に新しい大学が教育機関としての活動を本格的に開始するからです。ただし、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して出来上がる東京科学大学は今年の10月誕生の予定になっていますので、その頃にまた更新する必要がございます。

 大学によっていろいろ違いはありますが、国公立大学の試験に合格して入学できた人は概ね「勉強ができる」と見なされるかと思われます。「高学歴」と見る方もいらっしゃるでしょう。

 最近は大学でお笑い活動をする人が増え、プロになってから結果を残す人も増えて参りました。そのためか、国公立大学の出身者が芸人になることも増えてきたように思います。中には全国的な知名度を手にした方もいる。それが国公立大学芸人の一覧を作っている人間としての体感です。

 そんな一覧を作っているからなのでしょうか。こんな疑問が湧いてきました。「芸人の能力は学歴と関係あるのか」。こんな壮大な疑問を個人で調査するのはどう考えても限界がありますが、気になってしまったのだから仕方がありません。少なくとも、自分自身がある程度は納得できるところまで考えてみたいと思います。主観や偏見が混ざっているでしょうけれども、「なんか変なこと言ってるな」くらいの目線でお楽しみいただければ幸いです。

 早速、本題に入ります。さて、そもそも高学歴の人がお笑いをするのに有利な点はあるのでしょうか。

 高学歴な人は難しい試験をパスしているわけで、それだけでも何らかの能力があるとは考えられます。ただ、肝心なのはそれがお笑い芸人をするにあたって有利に働くかどうかです。

 高学歴の人が持っているものとしてまず思い浮かぶのが知識です。語彙力はそのままトーク力に繋がりそうですし、多くのものを知っていればどんなテーマでも対応でき、うまい例えをすることに繋がるかもしれない。特にツッコミとしてプラスになりそうです。

 ただ、高学歴の人がほぼ確実に持っている知識は、試験に出てくるような、いわゆる学術的な知識です。お笑いに必要ないとは思いませんが、必須ではありません。「知識がある」という点で見るならば、受験勉強はしていなくてもスポーツやギャンブルばかりして、そっち方面の知識が頭に入っている人と、お笑い的には特に大差がないように思います。どちらも「何か得意ジャンルがある芸人」になるわけです。

 知識の豊富さですと、最近は高学歴の芸人がクイズ番組で活躍する光景も珍しくはなくなりました。このように、知識を必要とするような仕事には呼ばれやすくなるのは有利とは言えるでしょう。ただ、正解を求められるようなクイズ番組への出演は、芸人としての仕事と言うよりはタレントとしての仕事という側面が強いと考えられます。ネタをするわけでもなければ、バラエティ番組のような笑えるやり取りをすることもほとんどない。特に、真剣に正答を求めるタイプの番組ですと、一解答者として真摯な姿勢が求められます。ふざけた解答で笑いを誘う芸人的な行動はかえって嫌がられる。

 他にも、語彙の豊富さはお笑いに影響がありそうだとは考えたんです。でも、考えれば考えるほど特に有利な感じがしなくなってくるんです。

 確かに、豊富な語彙を操れるようになると、物事を正確に伝えられるようにはなると思います。会話で役に立つ場合もあるでしょう。でも、寸分たがわぬ正確さなんて、意外と求めていなかったりします。別に「急勾配の斜面から落下した花崗岩が臀部に強打して転倒、その衝撃で大腿骨を不完全骨折した」と言ってもいいですが、「崖の上から岩が転がってきてケツにヒットしたら転んで足にヒビが入った」と言っても全然通じますし、そちらのほうが分かりやすかったりもします。

 では、他に何か高学歴で有利になる点はあるでしょうか。あるとすれば、「目標に向かってコツコツ努力を積み重ねる力」だと思ったんです。試験勉強なんてまさにコツコツ努力の典型みたいな面があります。コツコツ努力する姿勢は、お笑い芸人として成功するためにはプラスに働きそうです。

 しかし、それは高学歴に限った話ではないと思うんです。勉強方面にコツコツした人が結果的に高学歴となったわけで、運動方面にコツコツすればスポーツ選手、芸術方面にコツコツすればアーティストになる場合がある。高学歴だけに見られる有利な点とは言いづらい。

 このように、高学歴の特徴はそうでない人に比べて、お笑い芸人として活躍するのに有利に働くとは必ずしも限らないようなんです。では、実際の高学歴芸人はどんな感じなのでしょうか。大活躍しているのか、大苦戦しているのか。

 仮に高学歴が有利に働くならば、入試難易度の高い大学ほど成功する芸人が多いことになります。国公立大学限定ではありますが、私が作った一覧で確認しますと、少なくとも芸人を10名以上輩出している大学は2024年4月1日現在で以下の通りとなります。

東京大学 19名
琉球大学 15名
千葉大学 14名
京都大学 10名
大阪大学 10名
大阪公立大学 10名

 有名どころが多く入っていますが、必ずしも入試難易度通りではないのがうかがえるかと存じます。そもそも、東大・京大・阪大は伝統的に学生の人数が多く、学生数が少ない地方国立大学や公立大学、単科大学の学生のほうが存在としてはレアです。

 もちろん、そのような大学を出る人が芸人を目指すこと自体は、お笑い芸人という職業の地位向上を実感いたしますけれども、これらの大学出身芸人が多いのは学生人数の差も影響しており、お笑いに強い大学かどうかという判別にはあまり使えなさそうです。学歴との関連に関しては言うまでもありません。

 国公立大学芸人の中でも難関大学出身者が多い理由として「目立つ」というのも無視できない点だと考えられます。東大・京大・阪大の出身芸人が30名を超えているとは言え、「東大出身なのに芸人やってる」みたいな特徴はまだまだ名刺代わりになっています。本人が黙っていても周囲が言ってしまう場合も往々にしてあり、親兄弟にも学歴を隠して生きているとかでもなければ、国公立大芸人の中でも見つけるのが簡単なんです。だから、どうしても数が増えやすい。

 また、芸人能力と学歴の関連性が見られない理由のひとつとして、出身芸人が多くても、芸人を引退している人や知名度の低い芸人に甘んじている人が圧倒的に多いという現実がございます。学歴があろうがなかろうが、皆さん芸人として成功するのに苦労されている。

 例えば、私が作った一覧を確認しますと、今のところ出身芸人10名以上の国公立大の中で、芸人を引退している、または芸人活動が確認できない方の数は以下の通りです。

東京大学 19名中6名
琉球大学 15名中4名
千葉大学 14名中6名
京都大学 10名中2名
大阪大学 10名中2名
大阪公立大学 10名中1名

 やはり出身人数の多いほうが、芸人活動を取りやめた方の数も多いようです。まだ芸人をされている方も、知名度の低い、いわゆる「売れてない」芸人が大半となっています。

 では、ブレイクするなどして一定以上の知名度がある芸人の分布はどんな感じでしょうか。私の偏見で知名度の高い国公立芸人を、現役芸人に限り選んでみました。

光浦靖子(オアシズ)  東京外国語大学
神田伸一郎(ハマカーン)  東京農工大学
浜谷健司(ハマカーン)  東京農工大学
林田洋平(ザ・マミィ)  筑波大学
大久保佳代子(オアシズ)  千葉大学
永見大吾(カベポスター)  三重大学
平井まさあき(男性ブランコ)  滋賀大学
宇治原史規(ロザン)  京都大学
南條庄祐(すゑひろがりず)  大阪大学(旧・大阪外国語大学)
新山士彦(さや香)  大阪教育大学
山内健司(かまいたち)  奈良教育大学
田中卓志(アンガールズ)  広島大学
山田ルイ53世(髭男爵)  愛媛大学
サンシャイン池崎  大分大学
内間政成(スリムクラブ)  琉球大学
真栄田賢(スリムクラブ)  琉球大学
浦井のりひろ(男性ブランコ)  滋賀県立大学
竹内知咲(天才ピアニスト)  京都府立大学
浜田順平(カベポスター)  大阪公立大学(旧・大阪市立大学)
吉住  熊本県立大学

 結構バラバラなのが見て取れると思います。比較的人数の少ない公立大学にもチラホラおり、特に法則性のようなものが見られません。学歴というか、出身大学が成功の要因というよりは、芸人の能力に恵まれた人がたまたまその大学にいたのではないかと考えられます。もちろん、学歴の高さが芸人の成功に関与している可能性は考えられますけれども、その影響はそこまで大きくないというのが今のところの結論です。

 国公立大学の中では出身芸人が多い東京大学ですが、今のところ知名度が高い芸人がいらっしゃいません。ただ、それはたまたまそうなっているだけだと考えられます。少なくとも、個人的にはそれがしっくりきます。当然ながら、今後は東京大学出身の芸人で有名な方が誕生する可能性は他の大学と同様にございます。ただ、仮に著名な東大芸人が誕生したとしても、それは学歴とはまた別のところに大きな要因があると考えられます。

 つまり今のところ結論としては、高学歴は芸人として売れるのに、いい影響も悪い影響も特に見られず、仮にあったとしても学歴以外の影響の方が大きい、といった感じに落ち着いています。

 今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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