特技を作らされました
お笑い芸人を抱えた事務所のホームページに行き、それぞれの芸人のプロフィールを見ているとほぼ必ずある項目として、趣味や特技があります。中にはウケ狙いなのか何なのか、そんなものを公表してどうするんだという疑問を禁じ得ないものも見かけます。
私、恥ずかしながら最近になってようやくその意味が少し分かって参りました。何らかの仕事に繋がるかもしれない。そのための趣味や特技なのではないかと。
特にお笑い芸人の仕事は今や多岐にわたっています。役者としてドラマに出たり、映画を撮ったり、本を出したりはもちろん、深夜のバラエティでおこなわれる、その場限りの奇妙なゲームに参加させられる場合だってある。その時に、マイナー芸人のよく分からない特技と奇跡的にマッチする可能性があるわけです。例えば、特技に「雪玉を作ること」なんて、何の役に立つのかよく分からないことを書いたとしても、バラエティで「雪玉作りゲーム」なんて訳の分からない企画がなぜか開催された場合、雪玉芸人は名だたるメジャー芸人を押しのけてその企画に参加できるかもしれない。芸能の世界に捨てるとこなし。まさにあんこうのような業界です。
そんな話を、私の知り合いで唯一のお笑い好きである澤田さんにしてみました。すると、澤田さんは私にこう言いました。
「星野さんも特技を作ればいいんですよ。言われた五十音から始まる名前の芸人を言うなんてどうですか」
「パッと思い浮かんだのがマイナーな芸人だったらどうするんですか。場が湧きづらいでしょ」
「だったら、あらかじめ何を言うか決めておけばいいんですよ。はい、『あ』」
「『アインシュタイン』かな」
「じゃあ、『い』」
「『EXIT』?」
「次、『う』」
「『うるとらブギーズ』、いや『ウッチャンナンチャン』か」
どうして私が事務所に所属する体で話が進んだのかは分かりませんが、とにかく五十音全て埋めました。何なら「濁音と半濁音も別に用意しといたほうがいい」と提言したのは他ならぬ私自身です。関係者の皆様、よろしくお願いいたします。
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