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よく分からない主張を委託される

 こうやって書いているものをネットに載せ、それを友人知人に見られている方は結構いらっしゃると思うんです。そのうちの何パーセントが該当するのかは分かりませんが、「こういうことも書いてよ」と友人知人に言われる方もいらっしゃるでしょう。知ってる人に文章を読まれるのが恥ずかしくてあまり友人知人に公表していない私でも言われるんですから、noteユーザーの方でも絶対にいらっしゃるはずです。

 私のように訳の分からないことばかり書いていると、「こんなことがあったからネタにどう?」と言ってくる方が多いんです。それ自体は大変ありがたいんですが、残念ながらネタにならないことが大半です。

 理由としては「ツボが違う」が大きいと思います。面白がれるものが私と友人とで違うため、せっかく友人が提供した情報を私が活用できないんです。もちろん、世間一般的に見てつまらないとされるエピソードである場合もございます。「テレビでタレントがリンゴを食べているところを見ながら母親がミカンを食べていた」では、私の腕ではどう調理しても他人様に見せられるクオリティにできる自信がありません。そんな何てことない場面で面白がれるのは一種の才能と言っていい。

 ネタとしては面白くても、世間に公表できないものも当然ながらあります。私のnoteは上品からかけ離れておりますが、それにしたって下品を極めすぎたエピソードはやっぱり皆さんにご紹介できない。泥酔した男同士の飲み会でないと言えないような下ネタではいろいろときついです。

 書けない理由は下品だけではございません。ブラックすぎて書けないこともありますし、どうぼやかしても個人情報が出てしまうものはもちろん、その他の外部に漏らしてはいけない情報が入ってしまう場合もNGにしています。

 そんな私のルールを知ってか知らずか、友人知人の中には、たまにもう少し踏み込んだ要望をする方もいます。「こういう主張をしてほしい」みたいなやつです。大体は世の中を正す目的で言っているようで、いわゆる正義感からきているのだと思います。その場合は、良くも悪くも世の中に言いたいことがない私がやってもうまくいかないでしょうから、「そういうのは自分でやったほうがいいよ」と勧めています。

 ただ、その「主張してほしい」系の方で唯一、何だかよく分からないお願いをしてきた方がいます。その方が主張してほしいものは「湯煎ゆせん」でした。

 湯煎とは材料を直接火に当てず、沸かしたお湯で温める方法を指します。チョコレートを融かすのに使われる他、レトルト食品でもしばしば用いられる手法です。湯煎の利点は材料を焦がす心配がないところでございます。だから、チョコレートでよく使われるわけですね。

 しかし、湯煎の主張を依頼した方の言うところによると、この湯煎を誤解している人が多いそうなんです。湯煎とは沸かしたお湯で温めることなのに、ゴポゴポ沸騰し続けている鍋にレトルトを突っ込んだまま放置している人が多いのだと。

 まるで活火山の噴火口のように沸騰しまくっているお湯につけっぱなしではガス代がかさみますし、あまり熱しすぎるとレトルトの袋が破損する場合もあります。だからレトルトをグツグツやりすぎている同僚を見かけるたび注意しているのに、同僚はまた噴火口にレトルトを突っ込んでいる。だからネットに「正しい湯煎とは」を書いてくれと知人が言ってたんです。

 そんなことを私が書いたところで一体何になるのか。「主張してほしい」系の方で最もよく分からない要望だったので、こうやって書いてみました。これを読んで湯煎の定義を改めてくださる方がひとりでもいらっしゃれば、私の知人が喜ぶとは思うんです。世の中としては大した得も損もないとは思いますが。

 それこそ自分でやったほうがいいと思うんです。ブログでもSNSでも立ち上げて、湯煎の正しい意味を啓蒙し続けるんです。どの道、どれだけ努力しようが、大した得も損もないでしょうけど。

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