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気にしないどころか積極誘致
なくてはならないと知りつつも、家の近所にはあってほしくない施設というものがあります。代表格はお墓でございます。あの世を連想させる場所は人によっては嫌な気分になりますし、外に洗濯物を干せばお線香のにおいがつきがちです。管理が甘い場所ですと、虫やら猫やらカラスやらが集まってきますし、お盆には人がいっぱいくる。ダメな人にとってはとことんダメな場所でございます。
とは言え、何事にも短所があれば長所があるものです。嫌がる人がいるということは、費用が安く抑えられるかもしれないということでもあります。墓地周辺は土地や家賃が周りに比べて安い傾向にある。また、日当たりや風通しがいい環境でもあります。いくら金持ちでも高さ7メートルの墓なんて建てる人はまずいません。いきなり更地になったかと思ったらデーンとマンションが建つようなことも少ないでしょう。全然平気な人にとってみれば、日当たりのいい自宅を手ごろな価格でゲットできるわけで、墓地は悪条件とも限らないわけです。だから、墓地の近くにだって家は建ちますし、実際に生活している方もいらっしゃるわけです。何の不思議もない。
それでも、3方向が墓地と面している戸建て住宅を見かけた時はさすがにビビりました。道路以外は全方向墓地。家が墓地に突き出しているようにも見えます。当然ながら、隣に家はありません。日当たりも見晴らしも抜群です。お住いの方だってそれを気に入ってお選びになったのでしょう。
ただ、こんなに極端だとこんな物件が成立した過程が気になります。墓地の内側へポコンとへこむような土地がどうやってできあがったんでしょう。もともと何か別のものがあり、そこに家が建ったと考えるのが常識的な考えでしょう。墓地の管理事務所があったのかもしれませんし、墓地の管理に使うものを入れる倉庫が建っていたのかもしれない。とにかく、それを引き払い、家が建てられ、人が住んだのかもしれない。
しかし、三方を墓地に囲まれた家を見慣れないせいか、地価を下げるために墓地を誘致したんじゃないかという妄想が湧き出るんです。気にしない人ならば日当たり良好な土地を安価で買える。だったら、大型ショッピング施設を呼び寄せるように墓地を呼び寄せる選択をしても不思議ではない。
もう本当に気にしない。何ならいつも墓地を眺めていたい。そんな方が墓地のど真ん中に、飛び地のように家を建てる日もそう遠くないのかもしれません。一旦、墓地を通って帰宅するマイホーム。思い立てばいつでも夜に墓場で運動会ができる好立地。極端に気にしない方は是非ご検討ください。