文字化けから世界の秘密が
「文字化け」という現象があります。パソコンやスマホなど、コンピュータで文字が正しく表示されない状態を指しまして、これが起きてしまうと暗号のような文字列がただ続くだけになってしまい、本来の文章が読めなくなってしまうため、何らかの対応を迫られるわけです。
文字化けは起きないに越したことはない現象でございますけれども、何十億も人間がいれば文字化けに興味を持つ方が現れるわけです。私がインターネットで遊ぶようになった頃、様々なサイトから文字化けを収集し、それに感想を書いていく文字化けソムリエのサイトがありました。サイトの名前もお気に入りの文字化けをそのまま使うという徹底ぶりです。
文字化けは当時ネットをしているとそこそこ遭遇する現象で、出会うたびに面食らっておりましたけれども、最近はコンピュータ周りの性能が向上したせいか、文字化けに出会うこともあまりなくなってしまい、文字化けについて語る人はただでさえレアだったのに、もっと減ってしまった印象です。文字化けについて考える時間なんてほぼゼロの状態が長らく続いておりました。
ただ、今でもたまに文字化けと出会います。
私、10年以上前にブックマークしているサイトがあるんです。そのサイトはもう長らく更新が途絶えているんですけれども、世間的に見れば非常に特殊な情報を事細かに書いてございまして、その特殊性の高さから現在に至るまで似たようなサイトがなく、それゆえにずっとブックマークしつづけているんです。
しかし、数年ぶりにそのサイトを見に行ったら、全ページ余すところなく文字化けしているんです。検索して文字化けを解消するための方法を片っ端から試したんですが、どうやってもダメで、今では解読不可能なデジタル古文書みたいな状態になっています。いつか画期的な解読法を誰か発見してくれることを祈って、今もそのサイトをブックマークしてあります。
とは言え、やっぱり文字化けと遭遇する機会は本当に減りました。だから、いざ出会うと「おっ」と思います。読みたい文章がグチャグチャになった状態なんですから、本来は舌打ちのひとつやふたつしたくなるはずなんですが、こちらはもともと文字化けソムリエのサイトへ足しげく通うような人間でございますから、むしろ旧友と再会したような気分になるんです。
久々に会った旧友は、当時の面影も充分残していつつも、外見がガラッと変わっていることも珍しくありません。それは文字化けという旧友も同様なんです。
先日の話です。私はアマゾンで本を探していたんです。アマゾンをご利用の方はお分かりの通り、アマゾンは各商品にカスタマーレビューがついています。利用した方がそれぞれ評価を決めたり、感想を書いたり、誰かの書いた感想を更に評価したりできるようになってるんです。
そうです。久々の旧友はカスタマーレビューだったんです。とある方のレビューがタイトルから本文まで全部文字化けしている。他のレビューが正常な点から考えて、そのとある方のコンピュータに文字化けの原因がありそうです。
とりあえず、久々の文字化けでございますから、そのグチャグチャ文字列を一通り鑑賞したんですけれども、その下に文字化けしていない文章でこう書かれていました。
常識的に考えるならば、文字化け前の文章を読んだ人がこのレビューの「役に立った」ボタンを押した、となるはずなんです。もしくは、文字化けしているのは私のコンピュータに原因があり、他の人は普通のレビューが読めているのかもしれない。
ただし、こうも考えられるんです。レビューの文字化けは、実は見る人によっては非常に役立つ情報が詰まっているのではないかと。一見すると適当な文字の羅列にしか見えませんけれども、特定の措置を施すと、選ばれし人類しか手にできない世界の秘密を手にできるのかもしれない。そして、これまでにそれを達成できたのは地球上で5人しかいない。
文字化けの今は大変なことになっています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?