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寝耳に入るものが変わるかもしれない未来
言葉の中には意味が変化する場合がございます。例えば、「悩ましい」という言葉がそれです。本来はエロい方面から誘惑される意味でございまして、辞書には「官能が刺激されて、心が平静でいられない」なんて書かれています。しかし、最近では「悩」の字に引っ張られてか、「悩み事がある」みたいな意味で使われることが非常に多くなりました。辞書でも場合によっては「悩み事」が1番目に記述されています。
軽く検索したら、2010年には国語辞典編集者が意味の変化に注目していたようで、こんな記事も出てきました。
現在は更に「悩み事」的な意味で「悩ましい」が使われるようになってきたのかもしれません。
そう言えば、最近になって、立て続けに不思議な日本語に遭遇しました。「大目玉商品」です。おわら
もともと、売りになる商品が「目玉商品」と言われ続けてきました。
それに「大」をつけて「大目玉商品」とすることで、「これはもっといい商品ですよ」と強調したかったのだと思います。しかし、「大目玉」という単語がそれを邪魔しています。大目玉は「酷く叱られる」ことを意味する慣用句「大目玉を食らう」として用いられており、「大目玉」単独でも酷く叱ることを意味する言葉になります。そのため、「大目玉商品」としますと、人によっては違和感を抱く表現になりますし、場合によっては「ものすごいクレームを入れられた商品なのかな」なんてとらえ方をされかねない。
それでも「大目玉商品」なんて言ってしまう背景には、叱る意味合いで「大目玉」という表現が世間で使われなくなってきたという事情がございます。だから、「目玉商品」を強調する目的で「大」を躊躇なくつけられるのだと考えられます。そして、恐らくは「大目玉商品」という文字を見聞きしても違和感を抱く人が少なくなってきている。つまり、「大目玉」という言葉の意味が変化しつつあるのかもしれません。
ひょっとすると、意味が変化しつつある言葉は探せばもっと出てくるのでしょう。場合によっては、今は変化していないけれども、これから変化する要素がたくさんある言葉もあるに違いない。
例えば、「寝耳に水」という言葉がございます。「思いがけない出来事」を指す言葉ですけれども、この言葉自体も変化してきた歴史があるようです。本来は、眠っているうちに大水が出て、そのものすごい音を耳にした時のようだ、という意味だったそうなんです。しかし、いつの間にか、実際に耳の中に水が入った時のようだ、となってしまったとのこと。
既に1回変化を遂げてきた「寝耳に水」ですが、ひょっとするとまた変化するかもしれない。そんな要素を私、見つけてしまったんです。
「寝耳に水」は慣用句の中でも比較的、ダジャレの材料に使われやすい言葉でもあります。「寝耳にミミズ」ですね。「寝耳にミミズク」なんて亜種もございます。そこで気づいたんです。ミミズやミミズクの方が水より驚くだろうと。水なら冷たいだけで済みますが、ミミズはうねって気持ち悪いですし、ミミズクに至っては鋭い爪が耳に食い込んで大騒ぎです。下手したら「寝耳に水」本来の例えである、大水の音よりも驚くかもしれない。
最初はただのダジャレだと思われていたミミズやミミズクですが、日本語話者の間で「ミミズクの方が『思いがけない出来事』っぽくないか?」と気づき始めた時が変化の兆しです。「寝耳に水」は徐々に「寝耳にミミズ」へ、それから「寝耳にミミズク」へと2段階変化を遂げる道が開かれたと言ってもいい。
「なんか違うんだよな」と私が思っているので大丈夫です。何が大丈夫なのかよく分かりませんが。