お笑い芸人多様化の波が私の首を真綿で絞める
誰かが何かを思いついて、その何かを実際に始めたとします。そうすると、その誰かのもとに「面白そうじゃん」と人が集まってくる。ひとりの思いつきがどんどん大きくなり、文化と言えるものにまで成長する。世の中は往々にしてそんな現象が起こります。発展とでも言いましょうか。
多くの人に受け入れたものが更に発展するとどうなるか。場合にもよるでしょうけれども、よく見られるものとして多様性があります。いろんなジャンルが生まれ、それが更に細分化されたりする。
例えば、お笑い芸人です。人類初のお笑い芸人が誰なのか、そのネタは何だったのかは分かりませんけれども、昭和から令和にかけてお笑い業界はかなり発展してきました。お笑い芸人に圧倒的な成功者が現れ、多くの人から憧れられる職業になってきましたし、お笑い以外の仕事で実績を残す人も出てきました。お笑い芸人を養成する学校がいくつも作られ、毎年のように多くの若手芸人を輩出しています。恐らく、国内におけるお笑い芸人の数は過去最大になっているのではないでしょうか。
お笑いは表現する仕事のひとつでございますから、他の表現型お仕事と同様に、あまり特徴がなかったり、どこかで見たようなことばかりしていてはなかなか仕事になりません。自分たちにしかできない何かがあれば、売れる可能性は上がる。得意技を武器に活路を拓いていくわけです。ただ、その「自分たちにしかできない何か」を見つけるのが大変でございます。お笑い芸人は基本的に皆さん、それを見つけようと奮闘し、見つかって売れる方もいれば見つからず辞めていく方もいるのだと思います。
みんなが人と違うことをやろうとすると、必然的にいろんな芸人が現れます。数が増えればその傾向は強まる。業界の発展が多様性に繋がる所以と言えましょう。
ところで、多様性が進むといろんなことが起きます。その中にこんなものがあると思っています。「分類が難しくなる」、これです。多様化が進むと、どういうわけか分類しづらいものが出てきがちなんです。
生き物なんかその代表格ですね。様々な問題により絶滅の危機に瀕している生き物が多いと言われつつも、地球上には膨大な種類の生き物がいる。そんなある日、専門家の方々が「生き物の定義」を考えたんです。「これに当てはまれば生き物だ」という条件を作ってみたんですね。これがだいたい3つくらいにまとまりまして、多くの専門家が「うん、これを満たせば確かに生き物だ」となったんですが、それからしばらくして、「生き物の定義」に当てはまらないのに、生き物みたいに振る舞うやつらが発見されたんです。皆さんご存じウイルスです。
結局、現在に至るまでウイルスが生き物かどうかは議論が続いているようで、「生き物に決まってんだろ」派と「生き物なわけねえだろ」派、それから、その中間に位置する派閥も存在しているようです。つまり、未だにどう分類したらいいか定まっていないと言える。
別にウイルスだって人から分類されること前提に進化してきたわけじゃありません。それはお笑い芸人もまた同様であり、だから「これは漫才じゃない」「いや漫才だろ」みたいな論争が出てくるのも自然な流れなのかもしれません。多様化が進んだがゆえに、分類が難しくなったわけですね。
さて、偉そうな話ではありますが、私もまたお笑い芸人を分類しています。現在、特に力を入れているのが「国公立大学芸人」でございます。
要は国公立大学に在籍経験のある芸人を勝手に「国公立大学芸人」と呼び、大学ごとに振り分けて一覧としているわけです。noteを始める前から作っていた一覧でございまして、最初は人数も限られ、寂しい一覧でございましたけれども、本腰を入れて調査したことに加え、お笑い芸人自体が増えたこともあり、見ごたえのある一覧になってきました。もともと学生数の多い東大はもちろん、学生数の少ない地方大学や単科大学でもお笑い芸人がチラホラ出てきていますし、医学部医学科卒の芸人もポツリポツリ現れるようになりました。
そもそも国公立大学芸人の一覧は、高学歴芸人の一覧を作ろうとして挫折したことに端を発しています。高学歴の定義が人によってバラバラのため、一覧にできないと思ったんです。代わりに考えたのが、国公立大学芸人でした。人によって認識に違いはあれど、国公立大学に出てると世間一般的には高学歴と見なされがちですし、何より定義がハッキリしている。高学歴芸人に比べて分類が楽だと思いましたし、実際に楽でした。
しかし、お笑い芸人は多様化が進んでいます。いろんな人がお笑い芸人になっている。国公立大学芸人の一覧制作でも、徐々にそれを思い知らされてゆきます。
まず、海外の国公立大学に在学経験のあるお笑い芸人が現れました。海外の大学事情に疎い私には、海外の国公立大学がどのような位置づけにあるのか分かりません。日本と同じように概ね高学歴と見なされているのか、別にそんなことはないのか。きっと国や地域によって異なるでしょう。今のところ、人数自体が少ないため、掲載は見送っています。今後はどうなるか分かりませんが。
では、国内に限定していれば問題ないかと申しますと、そんなことはありませんでした。私も存在自体は知っていましたが、実際にそこ出身の芸人が見つかった時は「いよいよ来たか」と思わずにはいられませんでした。それが「大学校」です。
ウィキペディアによりますと大学校は「教育訓練施設などが用いる名称」であり、特に法令で決められていないため、いろんな組織がいろんな大学校を設置・運営しているそうです。
これだけでもややこしそうな雰囲気が致しますけれども実際そうで、同じ大学校でも卒業すると大卒と同じように学位を取得できるところがあるかと思えば、卒業生は短大卒と同じ扱いになるところもある。そうかと思えば公務員などの研修施設としての大学校も存在しており、一言で大学校と言っても内容がバラバラです。何年通えば卒業できるのかも違えば、入学対象者も異なっている。
分類で楽しようと思ったらこれです。大学校という伏兵が一発かましてきたんです。とりあえず、国公立の大学校で、卒業すると学位が取得できるものを国公立大学芸人に組み込むことにしました。国公立大と同じ形式の大学校だけを選んだ形ですね。ちなみに、今回判明した大学校卒芸人は学位の取れるところではなかったため、一覧には入りませんでした。ただし、今後は大学校卒の芸人がチラホラ出てくるでしょうから、今のうちに備えておくのがいいだろうと思い、一覧に組み込んだ次第です。
とりあえず、これで大学校問題は片がつきました。しかし、お笑い業界は今後も発展していく可能性が充分に考えられます。お笑い芸人の数は更に増えるかもしれませんし、増えれば多様化が更に進む。そうなると、また不思議な学歴を持ったお笑い芸人が出てくるかもしれないわけです。
お笑い芸人の多様性が私の首を真綿で絞めてくるかのようです。こうご期待。
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