キーゼルバッハ部位科ができる未来
人体にとって重要な部分だと知っていますし、だから専門の機関ができたのだと理解できます。でも、機能が機能だけに、子供から大人まで一様にどこか口元を緩ますような名前に見えてしまう。それが肛門科だと思うんです。
私が最初に肛門科の病院を見たのは小学生の頃で、やっぱり口元を緩ませたものですが、同時に肛門一本でやっていける事実に驚きもしました。外科や内科は知っていましたが、肛門とは。
よくよく考えれば世の中には眼科も耳鼻科もあるわけで、医学は細分化の道を突き進んでいるんだろうなといつからか思うようになりました。どんなジャンルでも発展が続けば細分化してゆくものです。医学もまた例外ではないのでしょう。
きっとこれからも細分化が進んで行くに違いない。肛門科があるなら胃科とか肝臓科とか十二指腸科とか、ひとつの臓器に特化した科が次々と出来上がっていくんでしょう。やがて臓器すら細分化され、「俺はボーマン嚢しかやらないぜ」と言ってボーマン嚢科を立ち上げる医師が現れるかもしれない。ひとり現れれば、後を追う医師だって出てくるでしょう。「ランゲルハンス島科」とか「キーゼルバッハ部位科」とか。
そこまで考えたところで思いました。今はどれくらい細分化されているのか。簡単ではありますが、調べてみました。とりあえず、東大病院の診療科・部門一覧から科を抜粋してみました。
「腎臓・内分泌内科」など複数が連なっているところは、腎臓専門の医師と内分泌専門の医師がいらっしゃるようです。つまり、事実上、複数の科が集まっている状態であり、上記一覧は見た目以上に多くの科に分かれていると言えます。
全体を総合的に診る科があれば、特定の部分を専門に診る科もある。「小児科」や「救急・集中治療科」のように、診る相手や状況に特化した科もございます。更に「呼吸器内科」「呼吸器外科」のように、同じ部分を診るけどアプローチが違う科も存在する。お陰で「内分泌外科」なんていう、一見すると内だか外だかよく分からないものも存在しています。「麻酔科・痛みセンター」に至っては一目で意味が分かりそうで、でもちょっとよく分からない。
病院の科は思ったよりも多方面に分かれていました。「現代医療を舐めてもらっちゃ困るよ星野君」という医学の神様の笑い声が聞こえるかのようです。しかし、東大病院と言えども「キーゼルバッハ部位科」のような細かさには達していないようです。今後に期待です。いや、私の期待なんて聞かなくていいですよ、医学の神様。