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言葉がやがて運命になるならこれはどうなんでしょうか

 言葉遣いに気をつけたほうがいいとされています。それによって話す人の印象が違ってきますし、場合によっては話す人自身にも影響を与えるのが主な理由としてあげられることが多い。

 言葉は話す人に影響を与える。そんな考え方の例としてマザー・テレサさんの有名な名言がございます。

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

 思考がやがて運命に繋がる。その途中の割と序盤に言葉は登場します。つまり、言葉もまた結果的に運命へ繋がる。少なくともそういう考え方があるのは事実です。

 仮にそうだとすると、気になる事象がございます。スーパーなんかに行きますと、親子連れは珍しくありません。お子さんが小さい場合も往々にしてございます。そんな親子連れで気になるのが、お子さんに語りかけるご両親の口調です。たまにビックリするくらい幼い口調になってるんです。

 もちろん、少なくとも日本の家庭において、幼い子に口調を合わせる場合があるのは重々承知しています。だから、ご両親がお子さんにものすごく幼い口調で話しかけていても、誰も気にしません。振り返りもしない。みんなそんなもんだと思っています。

 でも、考えれば考えるほど気になってくるんです。子が幼い時期はあっという間に過ぎるとは言え、年単位の期間があるんです。それだけの期間、幼い口調をしまくっていたら、癖として定着しちゃうんじゃないんでしょうか。公共の場で堂々と「おいちいですか。おいちいの、よかったね」と言える世界から戻って来れるのか、私は心配になって参りました。心配すぎて、幼い甥っ子にも大人と同様の喋りしかできなくなったくらいです。

 とは言え、です。子が幼い時期は何だかんだ数年です。お子さんが大きくなれば、ご両親の口調も自然と元に戻りますし、余程のことがなければご両親の口調が幼くなる時は訪れない。

 犬や猫のようなペットとなるとそうはいきません。世の中にはペット相手になると幼い口調になる方がいらっしゃいます。下手すると幼いお子さんよりも口調が幼くなる方がいらっしゃいまして、私の祖母もそのひとりです。ペットの犬に話しかける言葉を敢えて文字起こしすると「あらー、みゃんみゃんみょんみょんみゃんみょん」でございまして、もはや言語の体を成しているかも怪しい状態です。

 犬や猫は生後1年半くらいでいわゆる「大人」となるわけなんですが、ペットに幼い口調で話しかける方にはその概念がありません。理由は恐らく、見た目が可愛いままであり続けるからだと思うんです。犬や猫は10年から20年くらい生きますから、かなり長い時間、幼い口調が続きます。「おりこうさんですねー、むにゃむにゃもにょもにょ」も20年続けば、それこそ戻って来れないんじゃないか。そんな恐怖があるから、私は犬や猫に対しても大人の口調を心掛けてしまいます。

 いやいや、そんなわけない。皆さんそうおっしゃいます。ずっとお子さんやペットと話しているわけじゃない。戻るも何も、普通の会話を並行しておこなっているよ、と。確かに、もにょもにょの世界から戻って来れなかった人を私は見たことがありません。

 しかし、言葉は話す人に影響を与えるんです。回り回って「いつか運命になる」んです。一時的とは言え、幼い口調をしまくっていたら、運命に影響を与えるかもしれないんです。どう影響を与えるのか。そう考えると、気になって仕方がなくなるんです。

 無駄な不安を抱えて随分と生きづらく見えるかもしれませんが、それなりに平然と生きています。

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