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【第23回】リロイ・カー/ブルース・ビフォア・サンライズ
私はCBSのブルース・シリーズが好きだ。何が良いって曲名や歌詞の訳詞が掲載されているところ。歌詞カードが入っているLPはたくさんあるけれど、ブルースのLPで訳詞まで掲載してるのって結構少ないんだよね。そしてその歌詞カードには実に怪しいイラストも載っていて、それを鑑賞するのもまた楽しい。この謎のイラスト、いったいどういう意図で入れたものなのだろう。そんな訳で私はこのシリーズを聴くときは訳詞も堪能しながら楽しんでいる。
この「リロイ・カー/ブルース・ビフォア・サンライズ」もCBSから発売されたLPである。リロイさんはピアノとボーカルで、「スクラッパー・ブラックウェル」という人がギターを弾いている。たまに「ジョッシュ・ホワイト」という人のギターも加わっているらしい。1930年代の録音なのでかなり時代を遡る。
このLP、まず名前がカッコいい。早速訳詞を見てみると「日の出前のブルース」とある。「夜明け前のブルース」のほうがオシャレだと思うんだけどな。「日の出前」じゃ一気に田舎感出ちゃうじゃん。
そしてジャケットもリロイ・カーが微笑む古い写真で、壁に飾りたくなるくらい渋くてカッコいい。ただ右上の棺桶を車に乗せてるイラストはいったいどういう意味なんだろう。よく分かんないけどなんか不吉なイラストだ。
聴いた印象としてはロバジョンと雰囲気がよく似ているなぁという感じ。ピアノとギターのロバジョンみたいな感じなんだけど、調べてみたらロバジョンのほうが少し後なんだね。そして訳詞を見てみると、そのほとんどが(全部か?)女絡みの歌。好きな女が振り向いてくれないとか、好きな女が出ていったとか、好きな女を忘れるために旅に出るとか、女々しい歌ばかり。曲の雰囲気的にのどかな感じなので、しんみりと聴くという感じではないけれど。
そして私はこのLPの曲名の翻訳が好きだ。「真夜中のブルース」「とうもろこし焼酎ブルース」「木陰の小道のブルース」「南部行きブルース」など。この何でもブルースにしてしまう感じがとても良いなと思う。当時の黒人の日常には、どんな些細なことにもブルースが宿っていて、歌にしていたのかなぁなんて想像しながら聴いている。
今の私ならリモコンの電池についてブルースにしたいと思う。
〜リモコンの電池ブルース〜
切れたと思っても、クルクル回せばまだイケる
切れたと思っても、クルクル回せばまだイケる
教えておくれよ、リモコンの電池はいつ取り替えたらいいんだい?
我ながらなかなかいいブルースになったと思う。
日常に
住み着くブルース
歌おうかぁ(カー)
季語はブルース。