漫才師のコントよりコント師の漫才が面白い理由
漫才とコントの両方で争う新しい賞レースが始まるそうです。
その話題に関連してふと思ったのが、漫才師のコントよりもコント師の漫才のほうが面白いと話題になることが多いんじゃないかな、ということです。もちろん個別に見ればどっちも面白いものはたくさんあるので、あくまでも全体的な傾向の話です。
さらに大ざっぱに言うと、舞台と客席の間には線が引かれている、というような考え方があって。この線を引いて舞台と客席を別々の世界だと考えるのがコントであり、この線を踏み越えて舞台と客席が一体化しているのが漫才、というふうに言える。漫才では演じ手が客席に向かって話しかけることもあるし、演じ手が本人としてお客さんの前で話しているという前提がある。
その考え方で言うと、コント師が漫才をやる場合には、舞台と客席の間に引いた線を自分で取り払えばいい、ということになる。だから、比較的やりやすい。コントは「演じるもの」だとすれば、漫才をやるときには「漫才師を演じる」という形で、コントのやり方で漫才をやることが(一応)できる。
でも、漫才師がコントをやるときには、もともとなかった線を引いて、そこからはみ出ないようにする、という新しいことをやらなければいけない。もともとあった線を消すことと、もともとなかった線を引くことは、難しさが全然違う。
「生粋の漫才師」みたいな人がコントをやるときには、ちゃんと線を引けていないな、と感じることがある。漫才師としてお客さんを意識するモードが残ったままで、役柄を演じているふりだけをするので、いわゆるちゃんとしたコントという感じがしない。だから面白くないというわけではなく、それにはそれなりの面白さもあると思うけど。
個人的には「コント師の漫才」が好きだ。ジャルジャル、かもめんたる、男性ブランコ、ロングコートダディ、ニッポンの社長、ななまがり。こういうコント志向の強い芸人の漫才は、独特の色があってたまらなく面白い。
ここで大ざっぱに結論めいたことを言ってしまうと、「ダブルインパクト」はコント師の漫才を楽しむための大会になるんじゃないかな、と思います。