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40年目の反省リスト(24)2009~10年

今回も前2回と同様、2年分まとめてお送りする。
というのも、2009年はマンガ家としての特記事項が丸1年まったく何も無かった。何をしていたのかというと、2010年1月に刊行する「落語まんが寄席」(新星出版社)の描き下ろし作業を、ほぼ1年かけてしていた。

監修は鈴々舎わか馬さん(現・柳家小せん師匠)、
帯コメントは春風亭昇太師匠でした

2007~08年頃、いろんな出版社に落語4コマの持ち込みと、落語に特化したコミック雑誌の企画の持ち込みをして回っていた。その延長で、あちこちに顔の広い業界人のTさんの紹介で、御徒町の新星出版社に初めて足を運んだのが、たしか2008年の梅雨頃。
特に手応えを感じないまま半年ほど経った年の暮れ近くに、同社の書籍担当の方から連絡があって、突然「出版しましょう」となった。

書籍の1冊丸々書き下ろしは以前にも「完全『名古屋人』マニュアル」「ばんざい!ドラゴンズ」と経験はあるが、コミックスの体裁での描き下ろしは経験が無い。「どれくらい時間がかかるかな…」と躊躇はしたが、ぜひやりたい企画でもあったし、この声かけのチャンスを逸らしたら次があるか分からなかったこともあって、腹をくくって1年を執筆に費やす決心を固めた。仕事探しができないので、この時期は貯金を食い潰した。

本編は全20編の落語4コマ(各8ページ)。各編のトビラとラストに2分の1ページの大ゴマを取り、残りは全て4コマで進行。それぞれに解説文を付けた他、前文的な位置には「落語のきほん」と題した基礎知識コラムページを設けた。他、インターミッション的な小咄4コマも数本。

『崇徳院』のトビラページ
『崇徳院』ラストの大ゴマ

別に落語評論家ではないので専門知識を披瀝したいわけではなかったが、個人誌だから難しいコラムも自分で書かなきゃ仕方ない。文章の方はなんとか専門書籍を読み漁ってギリギリ体裁を整えた。

『ちりとてちん』ラストの大ゴマ
『たぬき』ラストの大ゴマ

スケジュール進行的には、始めに本編17本分(3本は持ち込み用原稿を流用)のラフを担当さんにまとめて送付。3月頃だったかな。そこから半年、1編10日ペースで10月まで、ただただ描き続ける生活。続けて11月は解説文とコラムのテキスト、あと挿絵の執筆。気がついたら12月だった。
確認するために2009年のカレンダーを引っ張り出して見ると、この作業を始めた矢先、「月刊ドラゴンズ」が連載終了し、少ないレギュラーがさらに減っていた。それと2月に入ってすぐ、初めて憩室出血で入院してた。こちらは以降7回の入院を重ねる持病となる。
2007年からのドタバタな流れがまだ終わってなかったのかもしれない。

そんなこんなで、2010年1月25日、「落語まんが寄席」無事刊行。
本編として掲載した演題は、以下の20本。(掲載順)
『ちりとてちん』『たぬき』『寿限無』『ろくろっ首』『時そば』『四人癖』『長屋の花見』『代り目』『道具屋』『崇徳院』『まんじゅうこわい』『初天神』『宿屋の富』『蛇含草』『皿屋敷』『目黒のさんま』『動物園』『出来心』『堀の内』『火焔太鼓』
当初はもう少し描くつもりでいて、原稿化してない『花筏』『月宮殿』『盃の殿様』の3本が今もラフのまま残っている。

内容的には得心したので、あとは対外的なアプローチ。
監修者に、小説の監修など紙媒体のお仕事も手がけておられた鈴々舎わか馬さん(二ツ目時代。2010年秋に五代目柳家小せんを襲名して真打昇進)にお願いし、編集部にわざわざ足を運んで頂いたりした。
さらに帯コメントで、以前「新作落語大賞」受賞落語会にて拙作を口演してくださった春風亭昇太師匠にお頼みし、有難いコメントを頂戴した。
プロのお二方の強力なお力添えを賜り、おかげで貧相な誌面に箔がついた。
感謝してもしきれない。

僭越ながら、描き下ろし作業中は「この本を私のマンガ家生活の集大成にしたい!」と強く思っていた。
過去の自分のマンガに使ったお気に入りのキャラクターたちを、まんべんなく配役に盛り込んだのは、その願いからである。
執筆期間やその他もろもろを考えれば、この本の印税ではからっきし元が取れない売り上げではあったが、まぁ70%くらいは納得する出来にはなったと思う。
ただ、あまりにも「マンガ家生活の集大成に」と強く願いすぎたせいなのか、この「落語まんが寄席」がホントにマンガ家として私の最後の単行本になってしまった。(今のところ…と言いたいけど、まぁ無いだろなー)

他には、2010年の初頭に「落語まんが寄席」が出たあと、同年秋、同じ新星出版社からは「アタマひらめき!なぞかけQ」という本を出させてもらっている。

コメントは六代目三遊亭円楽師匠

以前から知り合いだった三遊亭楽市さん(当時二ツ目、2012年に真打昇進)に声をかけ、楽市さんの兄弟子の三遊亭楽生師匠と同期の三遊亭大楽師匠、プラス私(尾張家はじめ名義)の4人で、なぞかけを1000題作ったという、なかなかの労作。この本の中でイラストや4コマを担当した。

暮れにはもう1冊、中日新聞社から出た「日本誤百科」という本の表紙およびヒトコママンガの仕事も。著者は大学教授の町田健先生。

マンガは自由に描かせてもらえて楽しかったです

2010年の1年間は、ずっと「落語まんが寄席」の余韻の中で過ごしていた気がする。それくらい力を入れた本だったが、残念ながら毎度申し上げる「二次展開」が全く無かった。そして暮れにはまた近所に引っ越している。
で、2011年に入るわけだ。
(第24回・了)

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