お笑いの斜め後ろ

お笑いタレントになりたい! そんな気持ちを行動に起こしたばっかりに…。 後悔?いやいやまだまだ夢の途中? 「職業芸人です」と声を小にして言う夢追い人のお話し。

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コミュニティFMに手を振って 第15話(最終話)

 それから……FMビートは、あっという間に閉局が決まる。ちょうどその頃、帯満亭が倒産し帯城電力は外資系会社に買収され上司は総替わりに。ほかの株主は、もうこれ以上の再起は見込めないと判断し、持ち株を全て放棄した。FMビートの年内閉局が12月1日に発表。閉局することは決まったものの、局は12月25日まで放送を続けることが認められた。12月25日。この日はFMビートの開局20周年。20周年の記念放送を最後に、FMビートはその役割を終えることとなる。  最後の一ヶ月は、とても楽しく

    • コミュニティFMに手を振って 第14話

      そして『帯城ナイト 帯城のラジオ放送を盛り上げるためのトークショー』当日。 会場は大勢の観客で埋まっている。客層がまた独特。宮崎の仕事関係者やクライアント、キラーソフトエージェンシーのファン。おそらくこれで6割近く占められている。そしてFMビート関係者や古くからのクライアント、それとFMビートのファンが4割。正直完全アウエーも覚悟していたので、ファンや関係者が4割近く観客席にいることがとても心強い。 本番前のリハーサルは私と会場スタッフのみで行った。宮崎が会場にやって来たのは

      • コミュニティFMに手を振って 第13話

        そんなある日。ヤツが動いた。北海道の業界紙・財界ねっと北海道で単独インタビューを受けたのだ。財界ねっと北海道は、その名の通り北海道の財界情報誌。ものすごい部数が発行されているわけではないが、その注目度は高い。そこにヤツのインタビューが掲載された。 「時代の寵児・キラーソフトエージェンシー宮崎社長が帯城市の弱小FM局を救う!」  記事は8ページにもわたるロングインタビュー。宮崎の生い立ちや東京進出。キラーソフトエージェンシーの立ち上げや成功。そして支社を増やし、満を持して生まれ

        • コミュニティFMに手を振って 第12話

          その男は局長と共にやって来た。宮崎広重。47歳。株式会社キラーソフトエージェンシーCEO。帯城市出身で高校卒業後東京へ。IT会社に勤務後独立。10年前にキラーソフトエージェンシーを創立した。WEB制作や動画コンテンツ、イベントの企画制作などを運営している会社のようで、6年前に大阪、3年前に名古屋と福岡に支社を作り、今年の秋、帯広に北海道支社を作ったばかり。資本金や取引先の企業名を見るだけでも、その規模の大きさはわかる。そんなすごい人がなぜFMビートに? 「かっちゃんとは幼馴染

          コミュニティFMに手を振って 第11話

          帯城夏祭りが終わり、FMビートは秋の番組改編へ向けて動き出した。通常ラジオ放送の番組改編は4月と10月。ここ2.3年は辞めたボランティアの穴埋めやスポンサーのためだけのマイナーチェンジしかしていなかったが、今回はいつもと違うらしい。私が入社して5か月。少なくてもその時と今では局内の活発化は雲泥の差だ。 秋の番組改編。目玉の一つがモーニングシャウト。これまで那波を中心に参加できる人が放送するというざっくりすぎる番組だったが、メインMCが変更になる。その話を持ち掛けてきたのは那波

          コミュニティFMに手を振って 第11話

          コミュニティFMに手を振って 第10話

          次の日、出社すると、すでに局長と長内はお掃除ロボットと化していた。 昨日の夜のことは長内も言われていない。そんな雰囲気だ。コソコソと玄関に移動すると那波がやって来た。 「安原さんおはよう。昨日聞いたわよ」 聞いた、の前に謝罪はないのか? 「面白かったわ、なかなかやるわねぇ」 褒める、の前に謝罪はないのか。 「あれがラジオよねぇ」  ラジオ。この発言、長内、野本に続いて3人目だ。この人、ラジオ知っているんだぁ。 「朝9時になりました。今日もモーニングシャウト正午まで生放送でお送

          コミュニティFMに手を振って 第10話

          コミュニティFMに手を振って 第9話

          次の月曜日。掃除ロボの長内が私に言う。 「安原さん9時からよろしく」 「よろしくって何ですか?」 「那波さん達今日休みだって。代わりに3時間喋って」 「…えっ?」 モーニングシャウトは那波ら9人が日替わりで務める。メインは那波だが、毎回3-4名が集まり、皆の都合が合わず那波一人の放送の時も。その時は、いつものギャハハ感がなく、帯城の芸術とか文化とかをまじめに話す。いつもと違う那波のトーンに最初は意外性を感じたが、会話がちっとも膨らまず同じような話の繰り返し。本人も途中で気づい

          コミュニティFMに手を振って 第9話

          コミュニティFMに手を振って 第8話

           次の週の月曜日。番組の準備をしていると、楽器店店長の椎村がやって来た。 「安原さん、今日6時からのインフォメーション担当?」 「はい」 「じゃあさ、これ紹介してもらえないかな」  椎村から一枚のチラシを受け取る。NTT主催の帯城アマチュアバンドコンテストのチラシ。 「来月開催なんだ。僕の番組でも紹介するけど、ほかのところでも話して欲しくてね」  帯城アマチュアバンドコンテストで優勝すると全道大会、さらには全国大会へと繋がる。 「全国大会はテレビで放送されるんだ。今年で23回

          コミュニティFMに手を振って 第8話

          コミュニティFMに手を振って 第7話

           翌週の月曜日。ミーティングの途中で荒々しくドアを叩き、男が入ってくる。カフェペンギンランドの藤川だ。 「藤川さん、どうしたんですかぁ?」  などと暢気に聞ける雰囲気じゃないのは、藤川の顔を見ればすぐわかる。私以外の三人は、藤川と面識がない。 「先週金曜日、番組で紹介したカフェペンギンランドの藤川店長です」  私が説明し、局長が挨拶しようと立ち上がったが、それを無視し藤川は私に近づく。 「安原さん、いったいどういうことですか?」  先週金曜の放送日。電話ゲストで出演した藤川は

          コミュニティFMに手を振って 第7話

          コミュニティFMに手を振って 第6話

          土曜と日曜は何もしなかった。正確には良く寝たし、ご飯も食べたし、テレビも見たし、京平と電話でも話したが、外出することもなく家にいた。疲れたという程働いた意識はない。むしろこれで給料もらっていいのかなと思うくらいだ。 そして月曜の朝。8時少し過ぎにFMビートに到着。お掃除ロボに挨拶し局の入り口へ。玄関と外をほうきで掃き、看板を拭く。毎日拭いたから前のように雑巾が真っ黒にはならなかったが、土日分の汚れをゴシゴシと拭く。『これじゃ私もお掃除ロボットじゃない?』と思うとなんだかバカバ

          コミュニティFMに手を振って 第6話

          コミュニティFMに手を振って 第5話

          どのラジオ局にもあるが、FMビートの番組にもキューシートがある。キューシートとは、番組の進行表のこと。「キュー」とは、ディレクターがパーソナリティに指示する合図のことでそれが語源らしい。FMビートのキューシートは毎日朝の9時から夜7時まで全部で10枚ある。キューシートの中で重要なのがCMを流すタイミング。 「帯城デパートが十時をお知らせします」のCMは9時58分から10時のタイミングで流さなくてはいけない。9時45分からは「帯城市より」という広報CMを流さなくてはいけない。ラ

          コミュニティFMに手を振って 第5話

          コミュニティFMに手を振って 第4話

          局から安原家までは、車だと10分ほどで着く。 だけど、車を持っていない私は ・交通機関 ・自転車 ・徒歩 ・誰かに乗せてもらう が帰宅までの選択肢となる。 5時過ぎに母から「イオンに寄るから迎えに行こうかい」とメールがあったが、何時に帰れるかわからなかったし、母親が局へ挨拶に来るのも嫌だったので断った。局を出て道路を一本渡るとバス停がある。時刻表を見ると、次のバスは7時45分。これを逃すと8時50分でこれが最終だ。東京に住んでいた時は0時過ぎても地下鉄やら山手線やらが動いてい

          コミュニティFMに手を振って 第4話

          コミュニティFMに手を振って 第3話

           会社には9時までに出社するように。私への連絡はこれだけ。スーツを身に纏い、社会人生活第一歩が始まる。不本意な就職先ではあるが、そうはいってもラジオ局。それにここで頑張ればもしかしたら…。私は諦めの悪い女。次のステップのためにFMビートを踏み台にしてやる。  気合満々というわけではないが、30分も前に会社へ到着してしまう。早く着いて怒られることはないだろうと私は局に足を踏み入れる。去年の11月、両親に無理やり連れられた面接試験から4か月。 局に入ると、ものすごい形相で掃除をす

          コミュニティFMに手を振って 第3話

          コミュニティFMに手を振って 第2話

          その後の就職活動も連戦連敗。夏が終わると、求人情報を見つけるのさえ困難になる。10月上旬、アナ研に静岡シーテレビからアナウンサー募集の案内が届く。静岡シーテレビには、数年前にOGが採用されている。 「時期を考えるとこれがラストチャンスかもしれないな」  京平に言われたが、そんなこと私が一番わかっている。最近の京平は、内定を貰った名古屋のテレビ局の自慢話ばかり。そして同い年にも関わらず上から目線のアドバイスも腹ただしかった。 「時期を考えるとこれがラストチャンスかもしれないな」

          コミュニティFMに手を振って 第2話

          コミュニティFMに手を振って 第1話

          あらすじ 安原みちるは、子供のころからテレビのアナウンサーになりたかった。 大学のアナ研で活躍し、卒業後はテレビ局に就職…のはずが就職試験は全戦全敗。 親のコネで北海道のラジオ局に就職する。 そこはコミュティFM局。 テレビのアナウンサーになることしか考えていなかったみちるにとって、全く未知数の世界。 やる気のない上司と我が物顔のボランティア、何人聞いているかわからない小さなラジオ局。 明日にでも退職願を出したかったみちるだが、日々格闘する中で少しずつコミュニティFMの魅力も

          コミュニティFMに手を振って 第1話

          芸人小説 イシライサヤカ(8)

          こんなに饒舌だっけ?と思うほど、坂本はずっと喋っていた。 話してる内容は他愛のないことばかり。 この店のソーセージは旨いとか 隣の駅の立ち飲み屋で呑んだ生ビールが洗剤の味がしたとか 酔っぱらって山手線乗ったら寝てしまい3周まわったとか ひな壇のエピソードトークとしても正直弱すぎる話を坂本は 会話を脱線したり戻ったり、まぁ酔っ払いトーク。 こっちも酔っぱらってるんで、笑ったり頷いたりしてるが 会話の8割は覚えていない。 覚えていることと言えば、坂本が必死に俺の目を見て話している

          芸人小説 イシライサヤカ(8)