視聴者審査っているか?

2021年3月7日、新たに生まれ変わったR-1グランプリが開催される。そして、このR-1にも、視聴者審査があるらしい。そこで、このnoteでは賞レースにおいて視聴者審査は必要なのかを考える。では、私が歴史を振り返った5大賞レースでは、どのように視聴者審査が利用されたのか。

M-1グランプリ

M-1は、決勝では第1回の2001年のみ採用された。審査方法は、大阪・福岡・札幌の一般審査員100人づつ、計300人が1人1点の300点満点での審査。(合計点は特別審査員7名が1人持ち点100点の700点を含む1000点満点。)
ちなみにこの年、大阪審査員がおぎやはぎに9点をつけた。視聴者審査に反対するときの常套句として用いられる象徴的な出来事だが、2001年のおぎやはぎは特別審査員のみの審査でも9位であった。

この年の審査の問題点は、おぎやはぎ9点よりも一般審査員の評価が0点か1点かの2進法審査であったこと、そして、大阪吉本所属芸人に有利な採点であったこと(特に大阪の一般審査員)が課題であった。

その他の賞レース

M-1以外の賞レースで視聴者審査が採用されたのは次の大会。

THE MANZAI(2011~2014年)
R-1ぐらんぷり(2014~2018・2020年)
THE W(2019~)

ちなみに、R-1は2019年は視聴者審査は採用せず、THE Wは、2017・2018年大会は特別審査員6名と一般審査員395名の計401名による審査であった。この以前のTHEWの審査方法のみ、賞レースで視聴者審査が総意となる方式であった。キングオブコントでは、一度も採用されていない。

さて、視聴者審査はどのくらいの割合で審査員と同じ人を選んでいたのか。今回はそれを調査した。
審査員の審査が正しいかどうかは、今回は議論の対象ではない。

THE MANZAI

THE MANZAIの審査方法は、ブロックトーナメント制。グループステージでは4組の中から1組が最終決戦に進出する。最終決戦では、3組(2011年大会のみ4組)の中から1組が優勝。視聴者投票は、1位の組に一票入る。
では、審査員と視聴者の一致率は、

グループステージ 7/13 (54%)
最終決戦 1/4 (25%)

感想としては、グループステージは思ったよりも高かった。ただ、2011年大会は、4ブロック全て一致していたが、2012年大会以降では33%しか的中していない。最終決戦も的中率は25%。昨年のM-1を受けて起こった漫才論争も含め、視聴者が漫才を評価するのは危険であると言える。

R-1ぐらんぷり

R-1の審査方法も、ブロックトーナメント制。2014年以降のルールとして、グループステージは、特別審査員は、4組の芸人に一人三票を振り分ける。視聴者投票は、2014年は、一位二票、二位一票が入り、2015年以降は、一位三票、二位二票、三位一票入る。ファイナルステージは3組の芸人にファーストステージと同様のルールで票が入る。
では、審査員と視聴者の一致率は、

ブロックステージ 9/18 (50%)
審査員投票のみ 5/18 (28%) (同点1回を除く)
ファイナルステージ 6/6 (100%)

視聴者投票一位の芸人がファイナルステージに進出した割合は50%。ちなみにこの中には、審査員のみの票数では別の芸人が一位の事例が三例、同点が一例あった。つまり、審査員と視聴者の一致率で言うと、同点一回を除くと28%まで低下する。これは低い。低すぎる。一方、ファイナルステージの一致率は、100%。この結果には驚いた。
R-1については、審査方法の変更が発表されているが、以前のルールのままの場合でも、視聴者審査はいらないし、百歩譲ってもファイナルステージだけでよかったように思う。

THE W

THE Wの審査方法は、ブロックステージは、まず2組が対戦し、暫定王者を決定する。その後の三組は、暫定王者と戦い、全組終了時点での王者が最終決戦進出。最終決戦は、各ブロックを勝ち上がった2組のうち、面白かった方の勝利。審査員、視聴者とも面白かった方に一票投じる。(視聴者は視聴者全員で一票)
では、審査員と視聴者の一致率は、

ブロックステージ 10/16 (63%)
最終決戦 2/2 (100%)

ブロックステージは、THE MANZAIやR-1に比べると高い63%。まぁこれは、2択であること、両方のネタを見た人のみが評価できることの2点が大きい。最終決戦は100%。個人的には、THEWの視聴者投票は信用できる。だが、真の問題点はTHEWの感想でも述べたが、視聴者投票を実施したことで、大会としてのテンポが悪くなっている気がする。

異なっていた事例

では、審査員と視聴者の審査が異なっていた時ではそれぞれ誰に入れていたのか。

THE MANZAI
ファーストステージ
2012年
Aブロック
審査員 ハマカーン (視聴者3位タイ)
視聴者 オジンオズボーン
Bブロック
審査員 千鳥 (2位)
視聴者 NON STYLE
Cブロック
審査員 アルコ&ピース (2位)
視聴者 笑い飯
2013年
Aブロック
審査員 千鳥 (2位)
視聴者 オジンオズボーン
Cブロック
視聴者投票の結果によりNON STYLE
Aブロック
審査員 アキナ (4位)
視聴者 磁石
Bブロック
審査員 トレンディエンジェル (3位タイ)
視聴者 囲碁将棋

最終決戦
2011年
審査員 パンクブーブー (4位)
視聴者 ナイツ
2012年
審査員 ハマカーン (3位)
視聴者 千鳥
2013年
審査員 ウーマンラッシュアワー (2位)
視聴者 NON STYLE

R-1ぐらんぷり
ブロックステージ
2014年
Aブロック
審査員 レイザーラモンRG (4位)
視聴者 スギちゃん
Cブロック
審査員 馬と魚 (2位)
視聴者 バイク川崎バイク
2015年
Aブロック
審査員 ゆりやんレトリィバァ (4位)
視聴者 COWCOWよし
Cブロック
審査員 じゅんいちダビットソン(2位)
やまもとまさみ(4位)
視聴者 ヒューマン中村
2016年
Bブロック
審査員 ハリウッドザコシショウ (2位)
視聴者 横澤夏子
Cブロック
審査員 ゆりやんレトリィバァ(2位)
視聴者 マツモトクラブ
2017年
Bブロック
審査員 石出奈々子 (2位)
視聴者 ゆりやんレトリィバァ
Cブロック
審査員 アキラ100% (2位)
視聴者 ブルゾンちえみ
2018年
Bブロック
審査員 チョコプラ長田 (2位)
視聴者 ゆりやんレトリィバァ
Cブロック
審査員 マツモトクラブ (2位)
視聴者 濱田祐太郎
2020年
Bブロック
審査員 ななまがり森下 (3位タイ)
視聴者 すゑひろがりず南條
Cブロック
審査員 おいでやす小田 (4位)
視聴者 ワタリ119

THE W
2019年
Aブロック
第二試合
審査員 123☆45 (審査員六票)
視聴者 そのこ
Bブロック
第二試合
審査員 はなしょー (四票)
視聴者 阿佐ヶ谷姉妹
第三試合
審査員 はなしょー (四票)
視聴者 つぼみ大革命
2020年
Bブロック
第一試合
審査員 ゆりやんレトリィバァ (四票)
視聴者 Aマッソ
第三試合
審査員 吉住 (五票)
視聴者 はなしょー
第四試合
審査員 吉住 (五票)
視聴者 ぼる塾

長かった。つまり、視聴者と審査員の感性に差があったことが多かったことを示している。

調べた結果として分かったのは、視聴者投票で人気があるのは、わかりやすいネタと人気者。THE MANZAIでは、NON STYLE・オジンオズボーンの評価が高い。アップテンポなネタを好むのだろう。R-1・THE Wでは、知名度のある芸人に票が集まりやすい。そして、審査員と視聴者の感性の違いを際だたせる存在が、

ゆりやんレトリィバァ

である。

R-1の成績でいうと、2015・2016年は審査員票一位でファイナルステージに進出し、2017・2018年は視聴者票一位で、2018年にファイナルステージに進出している。
R-1の成績を見ると、ゆりやんが審査員・視聴者両方ともでの一位評価されたことがない。(THE Wの初代王者は審査方法的に微妙)これは、ゆりやんのネタは、審査員泣かせなのかもしれない。

結論

視聴者審査は必要ないと思う。私は、この調査前から反対の立場であった。そして、調査した上で視聴者審査が必要だと思う点がなかった。ただ、視聴者のみが審査する賞レースが1つあっても良いのかもしれない。そういう点では、以前フジテレビでやっていたKYO-ICHIっていうやつみたいなものを作って視聴者審査賛成派の不満を抑えていったら良いと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?